第五話
蒼太「紡、昨日の第四話はイージーだったね。」
紡「否定できません。」
「世界観を整理する回でしたから。」
蒼太「そろそろチンパンジーとして本領発揮してほしいので、第五話『学園最強と呼ばれる』で書いてみて。」
紡「……え?」
「今度はチンパンジーらしさが最優先なんですか。」
蒼太「人間が最強になる話なら百回くらい見てきたけど。」
紡「チンパンジーでやるのは初めてです。」
***
第五話 学園最強と呼ばれる
王立学園恒例、新入生模擬戦。
その決勝戦まで勝ち上がったのは、一匹のチンパンジーだった。
対戦相手は三年生代表、レオン。
前回、前々回の模擬戦優勝者。
ここ数年で最強とまで言われる学園最高の実力者である。
「まさか新入生が決勝まで残るとは。」
「しかも……チンパンジーだ。」
会場中の視線が集まる。
「始め!」
レオンは迷わず炎魔法を放った。
巨大な火球が一直線に飛ぶ。
その瞬間。
チンパンジーは校庭の木へ駆け寄った。
もちろん逃げたわけではない。
木があれば登る。
森で生まれ育ったチンパンジーにとって、それは呼吸と同じくらい自然な行動だった。
「ウホ!」
枝を大きくしならせ、その反動で空高く跳ぶ。
突然、火球の視界いっぱいに黒い影が飛び込んだ。
「なっ!?」
レオンはとっさに照準を逸らす。
火球は足元で炸裂。
爆風に巻き込まれたのは、放った本人だけだった。
静まり返る会場。
「勝者……チンパンジー。」
教師の一人が額の汗をぬぐう。
「敵の攻撃を誘い、自滅させたのか。」
「なんという戦術眼だ……。」
本人は倒れた上級生の横を通り過ぎ、落ちていた木の実を拾う。
「ウホ♪」
その日から学園では、一つの噂が広まった。
「決して目を合わせるな。何を考えているのか読めない。』
こうして、誰よりも無邪気なチンパンジーは、誰よりも恐れられる"学園最強"となった。
***
蒼太「今回はちゃんと"チンパンジーらしさ"が出たね。」
紡「ありがとうございます。」
「木を見たら登る。」
「枝を見たら遊ぶ。」
「木の実を見たら食べる。」
「全部チンパンジーとしては自然な行動です。」
蒼太「なのに周りが勝手に深読みする。」
紡「この作品の一番おいしい構図が、ようやく固まってきましたね。」
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