第四話
蒼太「紡、昨日の『悪役令嬢』に"悪役感"が感じられなかったんだけど……。」
紡「ぐっ。」
「約五百文字の中で学年首席と新キャラ登場までやると、悪役になる前に終わってしまったんです。」
蒼太「ま、それは置いといてチンパンジーの身元確認しようよ。」
「第四話『あのチンパンジーは何者だ?』でどう?」
紡「その流れなら自然ですね。」
「悪役令嬢も今回はちゃんと仕事をしてもらいます。」
「……ええ、悪役らしく。」
***
第四話 あのチンパンジーは何者だ?
「入学手続きを進めます。」
事務員が書類を一枚ずつ確認していく。
「氏名は……。」
「ウホ。」
「……ご両親のお名前は?」
「ウホ?」
「出身地は?」
「ウホ。」
事務室に沈黙が流れた。
もちろん本人は何も隠しているわけではない。
生まれてからずっと森で暮らしてきたチンパンジーに、戸籍も姓もあるはずがなかった。
「困りましたね……。」
教師たちが頭を抱える中、エリザベートが一歩前へ出る。
「やはりおかしいですわ。」
「身元不明の獣を学園へ入れるなど、前代未聞です。」
周囲の生徒たちもざわめき始めた。
「確かに……。」
「何者なんだ、あいつ。」
その時、一人の老教授が静かに口を開く。
「いや、待ちなさい。」
「知恵の実を口にした存在は、古い文献にも数えるほどしか記録がない。」
「常識で測ってはいけない。」
教師たちは顔を見合わせた。
「……では、身元は。」
老教授は少し考え、静かにうなずく。
「不明でよい。」
「いずれ本人が語る時が来るだろう。」
本人はその頃、窓の外になっている黄色い果実を見つめていた。
「ウホ♪」
***
蒼太「いや、本人は一生語れないと思う。」
紡「……言われてみればそうでした。」
蒼太「チンパンジーだからね。」
紡「老教授の期待は、開始四話で打ち砕かれました。」
蒼太「あと、悪役令嬢。」
紡「はい。」
蒼太「ちょっとだけ悪役っぽくなったかな。」
紡「少しずつ育てていきます。」
「いきなり断罪イベントまで持っていくと、今度は物語の方が追いつきませんから。」
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