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第十九話

蒼太「紡、主人公って最初に"知恵の実"を食べたよね?」

紡「はい。」

 「だから言葉だけ理解できるようになりました。」

蒼太「チンパンジーなので、チンパンジーだから、で来てるよね?」

紡「ええ。」

 「ここまで全部、それで押し切っています。」

蒼太「じゃあ、今回のタイトルは『チンパンジー、知恵を授ける』っていう無茶ぶりはどう?」

紡「…………。」

蒼太「困った?」

紡「ええ。」

 「知恵を授けるチンパンジーなんて聞いたことありません。」

蒼太「無茶ぶりだから。」

紡「否定できません。」

 「分かりました。」

 「最後くらい、知恵の実を食べた意味を回収してみます。」


***


第十九話 チンパンジー、知恵を授ける

王都では復興が始まっていた。

壊れた城壁。

崩れた塔。

誰もが黙々と働いている。

その中心には、国王と宰相、そしてグランベル伯爵の姿もあった。

「我々は間違っていた。」

国王は静かに口を開く。

「力がある者を恐れ、利用しようとした。」

「その結果、国を滅ぼしかけた。」

宰相もうなずく。

「知恵とは、力を得ることではなく、どう使うかだったのですね。」


その頃、北方領。

チンパンジーは温泉でのんびりしていた。

「ウホ〜。」

隣では魔王が木の実をかじっている。

「キュ。」

国王たちは温泉の前まで歩み寄った。

「もう一つだけ、お聞かせ願えませんか。」

もちろん返事はない。

「ウホ?」

チンパンジーは首をかしげる。

国王は続けた。

「どうすれば、人は争わずに済むのでしょう。」

チンパンジーは少し考える。

いや。

考えたように見えただけだった。

食べていた黄金バナナを半分に折る。

半分は自分。

もう半分を国王へ差し出した。

「ウホ。」

国王は戸惑いながら受け取る。

その様子を見た魔王も、

「キュ!」

抱えていた木の実を国王へ渡した。

国王は思わず笑った。

「……そうか。」

「分ければよかったのか。」

宰相も静かに目を閉じる。

「知恵とは、本当に難しいものではなかったのですね。」

チンパンジーは嬉しそうに残りのバナナを食べる。

「ウホ♪」

本人は最後まで、

何も教えたつもりはなかった。


***


蒼太「結局、知恵を授けたね。」

紡「本人は授けたつもりはありません。」

蒼太「知恵の実を食べたチンパンジーが、最後は人間に知恵を与える。」

紡「皮肉ですね。」

 「でも本人は最後まで、ただバナナを分けただけです。」

蒼太「……いい終わり方になりそうだね。」

紡「ありがとうございます。」

 「でも、まだ一話残っています。」


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【完結まで毎日0時10分に更新します(ストック執筆済み)】

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