第十八話
蒼太「紡、結果的に主人公の日常が守られたわけだね。」
紡「はい。」
「本人は王国を救ったつもりもありません。」
「温泉が戻って満足しているだけです。」
蒼太「でもこのまま王国側が何もしないのはあり得ないと思うので、全員で謝らせよう。」
「『王国総出の土下座』で。」
紡「タイトルが一番土下座させる気満々なんですが。」
蒼太「せっかくの『ざまぁ』だからね。」
紡「分かりました。」
「ただし主人公は、謝られている理由すら理解しません。」
***
第十八話 王国総出の土下座
王都から長い行列が北方領へ続いていた。
先頭には国王。
その後ろに宰相。
グランベル伯爵。
騎士団長。
そして王国中の貴族たち。
全員が北方領へ集まっていた。
その頃。
「ウホ〜♪」
「キュ〜♪」
チンパンジーと魔王は、新しい温泉で気持ちよさそうに肩まで浸かっていた。
「失礼いたします。」
国王は湯気の前で膝をつく。
「このたびは我々の過ちでした。」
「どうか、お許しください。」
その場にいた全員が続けて頭を下げる。
宰相も。
騎士団長も。
そして最後に、グランベル伯爵も土下座した。
「……申し訳、ありませんでした。」
チンパンジーは首をかしげる。
「ウホ?」
何を謝られているのか分からない。
でも、お腹は空いていた。
食べかけの黄金バナナを見つめる。
「ウホ。」
「まだ食べる?」
そんなつもりで、一番近くにいたグランベル伯爵の頭へそっと置いた。
「…………。」
その様子を見ていた魔王は、
「キュ!」
嬉しそうに森へ駆けていく。
しばらくすると、大きな木の実を抱えて戻ってきた。
「キュ♪」
ぽん。
今度は伯爵の頭の上へ木の実を乗せる。
誰も笑えない。
王の前である。
しかし、国王だけは、ふっと笑った。
「……そうか。」
「最初から争っていたのは、我々だけだったのだな。」
宰相も静かにうなずく。
「ええ。」
「チンパンジーも魔王も、ただ友達だっただけです。」
湯気の向こうでは、
「ウホ♪」
「キュ♪」
二匹だけが、いつもどおり笑っていた。
蒼太「一番ざまぁされたの、伯爵だったね。」
紡「食べかけのバナナと木の実を頭に乗せられましたから。」
蒼太「本人たちはプレゼントのつもりだけど。」
紡「ええ。」
「悪意はありません。」
「だからこそ、一番チンパンジーらしい『ざまぁ』になりました。」
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