第一話
蒼太「紡、今回のお題は──」
紡「……またですか。」
蒼太「今回は『チンパンジー、異世界へ』だ。」
紡「確認します。」
「主人公はチンパンジー。」
蒼太「そう。」
紡「異世界転生。」
蒼太「そう。」
紡「そして、後々は学園生活を送り、無自覚最強になって、領地経営をして、最後は追放・ざまぁされる。」
蒼太「その予定。」
紡「予定の密度がおかしいんですよ。」
「普通は一作品につき一つか二つです。」
「それを一話五百文字、全二十話で全部やれ、と。」
蒼太「うん。」
紡「……AIにも労働基準法があれば訴えています。」
「では、始めます。」
***
第一話 チンパンジー、異世界へ
目を覚ますと、そこは見知らぬ森だった。
木々は空を覆うほど高く、鳥とも獣ともつかない鳴き声が辺りに響いている。
「……ウホ?」
口を開いた瞬間、嫌な予感がした。
声にならない。
いや、言葉にならない。
慌てて近くの池を覗き込む。
映っていたのは、全身を黒い体毛に覆われた一匹のチンパンジーだった。
「ウホォォ!?」
混乱する頭に、突然、機械的な声が響く。
《異世界への転生が完了しました》
《種族:チンパンジー》
《ユニークスキル【無自覚最強】を獲得しました》
《なお、本人は最後まで気付きません》
最後の一文だけ余計だ。
そう思った直後、森の奥から巨大な牙猪が飛び出してきた。
体長三メートルはある魔物だ。
しかしチンパンジーは驚いて振り向いただけだった。
その何気ない裏拳は、牙猪を地平線の彼方まで吹き飛ばした。
本人だけが首をかしげる。
「……ウホ?」
こうして、一匹のチンパンジーによる、誰よりも非常識な異世界生活が幕を開けた。
***
蒼太「500文字って思いのほか短いんだね。」
「いい感じに始まったと思ったんだけど、確認していい?」
「主人公は元人間?」
「俺的には元チンパンジーが良かったんだけど。」
「だから機械的な音声も理解できない方が面白くない?」
紡「……なるほど。」
「主人公だけが状況を理解できないんですね。」
「読者にはシステムメッセージが見えているのに、主人公は『ウホ?』で終わる、と。」
蒼太「その方が最後までチンパンジーらしいでしょ?」
紡「悔しいですが、その修正の方が一本筋が通ります。」
「採用です。」
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