第十二話
蒼太「紡、昨日は領民の仲間ができてほっこりしたね。」
紡「主人公は何も分かっていませんけどね。」
「領民だけが勝手に感動しています。」
蒼太「じゃあ、今日のタイトルは『仲間が敵になる』で、ほっこりした雰囲気をぶち壊そうか。」
紡「容赦ないですね。」
「昨日ようやく仲間ができたばかりなんですが。」
蒼太「安心して。」
「ぶち壊すのは俺だから。」
紡「作者より編集者の方が鬼なんですよね、この作品。」
「分かりました。」
「主人公は誰も敵だと思っていないのに、仲間同士が勝手に敵になる話を書きます。」
***
第十二話 仲間が敵になる
領主ではなくなったはずのチンパンジーは、今日も温泉へ向かっていた。
その後ろには、数人の領民がついてくる。
「領主様、お供します!」
「ウホ?」
本人は散歩のつもりだった。
森へ入ると、茂みが揺れる。
昨日見かけた小さな影だった。
茶色い体毛。
丸い耳。
まだ子どもの、小さな魔物。
「キュ……。」
チンパンジーは近づき、拾った木の実を差し出した。
「ウホ。」
子どもの魔物は恐る恐る受け取り、小さく鳴いた。
その瞬間だった。
「魔物だ!」
領民の一人が剣を抜く。
他の者たちも一斉に身構えた。
「領主様、お下がりください!」
チンパンジーは首をかしげる。
「ウホ?」
次の瞬間、小さな魔物はチンパンジーの後ろへ隠れた。
領民は武器を構えたまま動けない。
主人公にとっては、
どちらも仲間だった。
しかし領民にとって、魔物は敵でしかない。
森には、重い沈黙だけが流れていた。
***
蒼太「タイトル回収したね。」
紡「しました。」
「敵になったのは主人公ではありません。」
「主人公の仲間同士です。」
蒼太「なるほど。」
「主人公だけ平和なんだ。」
紡「ええ。」
「だから一番困っているのも主人公です。」
「『なんでケンカしてるの?』くらいにしか思っていませんから。」
ご意見やご感想、評価をいただけると執筆の励みになります!画面下の「☆☆☆☆☆」から、作品への応援(ポイント評価)やブックマークをぜひよろしくお願いします!
【完結まで毎日0時10分に更新します(ストック執筆済み)】




