十一話
蒼太「紡、ようやっと半分進んだわけなんだが、このあとどうしようか。」
紡「半分……ですか。」
「まだ九話も残っているのに、もう追放されるんですね。」
蒼太「昨日の最後の"なにか"も気になるけど、今回のタイトルは『突然の追放』としようか。」
紡「主人公からしたら本当に突然でしょうね。」
「本人、何も悪いことしてませんから。」
蒼太「チンパンジーだからね。」
紡「そこだけ聞くと悪口なんですよ。」
「分かりました。」
「今回は主人公ではなく、追放する側を書きます。」
***
第十一話 突然の追放
北方領に、王都から一行が到着した。
先頭に立つ使者が、一枚の書状を広げる。
「国王陛下のご命令である。」
「本日をもって、お前を北方領領主の任から解く。」
領民たちがざわめいた。
「そんな……。」
「領主様が何をしたっていうんだ。」
使者は淡々と続ける。
「新たな領主は近日中に着任する。」
「以上だ。」
それだけ言うと、書状を丸める。
チンパンジーは首をかしげた。
「ウホ?」
意味は分からない。
だが、使者が長旅で疲れているように見えた。
近くにあった黄金バナナを一本もぎ取り、差し出す。
「ウホ。」
使者は困ったような顔をして受け取る。
「……ありがとう。」
領民は、その光景を見ていた。
「追放されたというのに……。」
「最後まで我々を気遣ってくださるのか。」
誰かが膝をついた。
「私は領主様についていきます。」
「俺もだ!」
「私も!」
チンパンジーは歓声の理由が分からない。
「ウホ?」
それでも、嬉しそうなので一緒に拍手をした。
「ウホ、ウホ!」
領民たちの声はさらに大きくなる。
その日の夕方。
いつものように温泉へ向かうチンパンジーの後ろを、数人の領民が当然のようについて歩いていた。
本人だけは、まだ知らない。
誰も『この領地から出て行け』とは言っていないことを。
***
蒼太「今回は追放されたのに、全然追放された感じがしないね。」
紡「だって追放されていませんから。」
蒼太「え?」
紡「正確には『領主を辞めさせられた』だけです。」
「誰も『出て行け』とは言っていないんですよ。」
蒼太「……確かに。」
紡「主人公は命令の意味が分からないので、いつもどおり温泉へ行きました。」
「その姿を見て領民が勝手に『我々と共に残る決意だ!』と勘違いしたわけです。」
蒼太「もう勘違いが日常になってるね。」
紡「はい。」
「ここまで来ると、勘違いではなく領民の文化です。」
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