第十話
蒼太「紡、いい感じの敵が出てきたのでこの人に頑張ってもらおうか。」
紡「グランベル伯爵ですね。」
「登場一話で退場では、嫉妬しただけの人になってしまいますから。」
蒼太「タイトルは、比較的関係が良好な王様、宰相を絡めた『王国の陰謀』とでもするかな。」
紡「『陰謀』というくらいですから、王様本人は首謀者にしたくありませんね。」
蒼太「なんで?」
紡「ここまで見る限り、あの王様は話を聞いて『ほう、面白い。』くらいしか言ってませんから。」
「急に黒幕になると、ただのキャラ崩壊です。」
蒼太「じゃあ宰相?」
紡「ええ。」
「宰相が"王国のため"という名目で動き、グランベル伯爵が私怨で協力する。」
「そのくらいの温度差がある方が面白いと思います。」
蒼太「あと、主人公が"ひとり"だとかわいそうなので、最後に主人公の仲間になりそうな『なにか』を登場させて。」
紡「『誰か』じゃないんですね。」
蒼太「チンパンジーだから。」
紡「なるほど。」
「人間とは限らない、と。」
「分かりました。」
「主人公が初めて"仲間"だと思える存在を出してみます。」
***
第十話 王国の陰謀
王都、王城。
「北方領の発展は想像以上です。」
宰相が机に並ぶ報告書を閉じた。
「税収は三倍。」
「移住者も増え、近隣領から商人まで流れております。」
グランベル伯爵は苦々しい表情を浮かべる。
「このままでは北方領ばかりが豊かになる!」
「王国の均衡が崩れるではないか!」
国王は静かに報告書へ目を通す。
「領民が豊かになること自体は良いことではないか?」
その一言に、伯爵は言葉を詰まらせた。
代わりに宰相が口を開く。
「もちろん発展は喜ばしいことです。」
「ですが、一つの領地だけが急激に力を持てば、他の領主たちが不満を抱きます。」
「王国の安定のためにも、一度状況を整理する必要があるかと。」
国王はしばらく考え、小さくうなずいた。
「……調査だけだ。」
「決して不当な扱いはするな。」
「御意。」
宰相は深く頭を下げる。
その表情を見て、グランベル伯爵は静かに口元を緩めた。
+++
その頃、北方領。
チンパンジーは温泉でのんびりと湯につかっていた。
「ウホ〜……。」
領民たちは今日も忙しく働いている。
本人だけが、世界で一番平和だった。
湯から上がろうとした、その時。
茂みの奥で小さな葉が揺れた。
「ウホ?」
視線を向けると、小さな影が木の陰からこちらを見つめている。
逃げない。
ただ、じっと見ているだけだ。
チンパンジーも黙って見返した。
しばらくすると、その影は森の奥へ姿を消す。
「ウホ。」
不思議と、また会える気がした。
一方その頃――
王都では、チンパンジー追放計画が静かに動き始めていた。
***
蒼太「今回は陰謀らしくなってきたね。」
紡「王様は最後まで悪人にはしませんでした。」
「悪いことをしているつもりなのは、宰相でも伯爵でもありません。」
「二人とも『王国のため』だと思っていますから。」
蒼太「主人公が"ひとり"だとかわいそうなので最後に主人公の仲間になりそうな『なにか』を登場させてって言ったけど。」
紡「はい。」
「まだ正体は秘密です。」
「主人公が初めて『言葉がなくても通じるかもしれない存在』になります。」
蒼太「……人間じゃないね?」
紡「チンパンジーですから。」
「"誰か"ではなく、"なにか"の方が、この物語らしいと思いまして。」
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