第九話
蒼太「紡、これだけチンパンジー領が発展すると送り込んだ奴らが困るんじゃないか?」
紡「ええ。」
「『厄介払いしたはずが大成功』ですからね。」
「学園長も宰相も、今ごろ頭を抱えていると思います。」
蒼太「主人公以外の『周囲の嫉妬』も展開として必要でしょ。」
紡「確かに。」
「ここまでは『勘違い』だけで話が進みました。」
「でも物語には、主人公が動かなくても勝手に敵になってくれる人が必要です。」
蒼太「いよいよ悪役の出番?」
紡「……ようやくですね。」
「悪役令嬢以外にも、活躍の場を奪われた人たちが黙っているとは思えません。」
***
第九話 周囲の嫉妬
黄金バナナは王都でも評判となり、北方領は瞬く間に豊かな領地へと変わっていった。
「今年の税収は昨年の三倍です。」
公爵の報告に、王城の会議室がざわつく。
「たった半年で……。」
「信じられん。」
ただ一人、隣領を治めるグランベル伯爵だけは苦々しい表情を浮かべていた。
「我が領地は三十年かけても実らなかった。」
「それを、たかがチンパンジーが半年でだと?」
宰相は静かに資料へ目を落とす。
「しかも、王都の商人まで北方領へ流れております。」
「このままでは経済の均衡が崩れますな。」
公爵は肩をすくめた。
「発展したのは事実です。」
「領民が豊かになり、税収も増えた。」
「何か問題でも?」
グランベル伯爵は机を叩いた。
「問題大ありだ!」
「獣が領主など前代未聞!」
「何か裏があるに決まっている!」
その頃。
当の領主は、大きく実った黄金バナナを両手に抱え、満足そうに頬張っていた。
「ウホ♪」
王都では陰謀が動き始める。
しかし、その中心人物だけは今日も平和だった。
蒼太「やっと敵役らしい敵が出てきたね。」
紡「はい。」
「嫉妬するには、それまで積み重ねた努力が必要です。」
「だから今回は、三十年努力した伯爵にしました。」
蒼太「なるほど。」
「チンパンジーより先に、伯爵のメンタルが折れたわけだ。」
紡「ええ。」
「しかも本人は、まだ自分が恨まれていることすら知りません。」
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