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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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戻らない日々、残る私

戻らない日々、残る私

うっかり朝から再戦しようとするレオを引き離すと、少し拗ねた顔が見えた。

「そうだ。エティがお前に会いたがっている。それからエリシアもな。お前が話したければ話すといい。」

「エティは私の侍女ということで良いのでしょうか?」

「ああ。今日は休んで欲しいから私室で休むといい。グレータ」

入って来たのは懐かしい顔。

「グレータ様……」

「様はいけませんよ。王弟妃殿下。」

嫌味でもない、当然のように言われる指摘。

「でもグレータと呼ぶのはなんだか叱られてしまいそう。」

「グレータ様などと呼び敬語でも使えば叱らねばなりません。よいですか、セラ様。この屋敷のもの全てのものがセラ様が侍女であったことは忘れるようにとの教育を受けております。間違ってもそのように接してはいけませんよ。」

「……分かってるわ。」

アメリスと、エリシアとくだらない話をして。そんな日は、もう帰ってこない。

「お部屋に案内します。」

案内された部屋に入った。するとそこには3人の侍女、そして――――

「エティ!」

「セラ様!お会いしとうございました……!」

「エティ、泣きません。セラ様、エティは王弟妃付きの侍女としても恥ずかしくないよう教育し直しておりますが、なっていないところがあれば申し付けください。」

「大丈夫そうに見えるわ。エティ、顔つきがしっかりしたわね。」

「第2のアイルが増えましたね。」

「いいじゃない、賑やかで。」

「セラ様。お身体はいかがですか?」

「……少し、腰が痛いわ。」

「ああ……今日はお休みください。」

「その前に、エリシアという侍女を呼んで人払いしてもらえる?」

「?分かりました。」

 きっとこれは、私の自己満足。私がただ、変わった事を、受け入れられていないだけ。それを受け入れるためのけじめ。

「失礼します。」

「エリシア……」

「……こうなると、思っていました。セラ様はどう見ても平民ではありませんでした。」

「……今この部屋にいる間だけ、以前のように話してくれないかしら。」

「……それは命令ですか。」

「……そうね、命令よ。」

「……では。……セラ、びっくりしたよぉ〜」

エリシアの変わりようにセラは驚いたが嬉しくなった。

「私もよ。もうこんなことになるなんて思ってなかったの。」 

「セラはあまりにも平民らしくなかったから令嬢っていうのも結婚もびっくりしたけど納得もしたっていうか」

「きっと追いつけてないのは私だけなんだわ……」

「仕方ないんじゃない?セラ元々1人で生活してたんでしょ?それがいきなりこれじゃあ身体が落ち着かないよ。」

「洗濯したいよ〜薬草摘みたいよ〜」

「ちょっと、お化けにならないでよ。どうしてもキツくなったらこうやって呼んでよ。私は王弟妃命令には抗えないからさ。」

 ペロリと舌を出すエリシア。だから彼女は好きだったのだ。

「新しいお屋敷でまた迷子になるんでしょ。今度は大騒ぎになるよ。王弟妃殿下がいない!って。」

「もう笑って頂戴。こんな広いの無理に決まってるでしょ!」

「あーでも王族にこんな平民感覚を残した人が入るのっていい事なんじゃない?」

「そう?」

「うん。色々意見とかさ、改革とか平民視点で取り入れて貰えるから私的にはアリ。」

「ちょっとそのことも色々話しましょ。私も仕事を始めたらやりたいことが一杯あるのよ。この際だから持てる権限使ってやってやるわ!」

「その意気よ!じゃ、私そろそろ仕事戻らないと怒られるから。」

「うん、またね。」

「では失礼します。王弟妃殿下。」

そう。嘆いている場合じゃない。王弟妃になったからには、できる事を。だがとりあえず今日のところは痛む腰の療養に専念した方がいいだろう。息を吐き、軽くなった心は重い身体と相反していた。

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