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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十三章:有名税の取り立て方

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生存競争

今はギルバート、ガゼル、理熾、ネーブル、ハッサクという面子で行われた対策会議から約一ヶ月。

ガーランドのジオトラント国立校闘技場を使った大会、五都祭(フィックスウォー)が開催される日だ。


ギルド本部へとガゼルとギルバートが提示した実力の証明条件は『予選通過』。

そのほか色々と盛り込まれた条件のほとんどに快諾を得た。

ついでに『試合内容に口出ししない』という、これ以上文句言うなと取れる内容まで受け入れさせていた。

ギルドにしても言い掛かりに等しいので、もしかすると理熾に受けてもらえるとも思っていなかったかもしれない。

とはいえ、発起人であるファロを納得させるだけの理由と条件を揃えて了承させたのは他でもないガゼルとギルバートの腕だろう。


その個人戦の予選、第7回戦。


「ふふ…『敵に回したこと』を後悔させてあげよう」


と一人ほくそ笑むのはフードを目深に被り、それぞれが身体を解してウォーミングアップ中の待合室の端っこで一人静かに佇むはぐれ者だ。

現在行われている第6回戦の予選アナウンスの終了宣言を聞きながら出番を待つ。

退屈なはずの予選会場が異常な盛り上がりを見せているのは、今大会で何度もは番狂わせが起きているからだ。

程なくしてアナウンスが流れる。


『さぁ、大会予選もはや後半戦。

 今大会は様々な番狂わせが巻き起こっています!

 そろそろ冗長になり始める第7回戦も目が離せません!


 それでは挑戦者(チャレンジャー)の入場です!

 個々人の名前に関しては予選のため割愛いたしますが、その中でも注目はご存知ウィニア!

 前大会でベスト4へと進出した猛者で、予選突破は確実と噂されているBランクの傭兵です!


 おぉっと、余裕の表れなのでしょうか!

 巨大な戦斧を掲げて観客の声援に応えております!

 この男に緊張というものは無いのか!?』


そんな声が空から降ってくる。

恐らく【音魔法】を応用した拡声器を使っているのだろう。

高級な魔道具であるそれを建物に仕込み、盗難防止と音源確保に使うのは学園らしさが現れている。


『7度目にもなると私も飽きてきますが、予選ルールの簡単な説明を行います。

 後で『聞いてない』なんて言い訳は出来ませんよ!


 予選のルールは『生存競争(サバイバル)』!

 競い合いの場は直径30m、円形の一段高いこの戦場(エリア)!

 状況は平地(フラット)、環境に左右されぬガチンコの戦いとなっております!


 前提条件は『使用武器の自由』と『勝利者は3名』。

 敗北条件は『死亡による離脱を含む戦闘不能』、『戦闘区域からの離脱』、『棄権申請』の三つ。


 以上のルールを頭に叩き込み、戦いの幕を上げましょう!』


ノってるなぁという感想は〝フード〟の率直な感想。

演劇の一幕を見ているように感じて思わず笑ってしまう。

そしてその演者の一人としてこうも納得してしまう…『なるほど、これは確かに面白い見世物だ(・・・・)』と。


『さぁ、力自慢の皆様方、お覚悟ください。

 周囲すべてが敵ばかり。

 全てを薙ぎ倒して力を示し、勝利の鬨を上げてください!』


殺伐とした力比べだというのに、熱狂を巻き起こすために会場全てを煽りに煽る。

周囲は殺気を垂れ流して武器や防具を持って身構える中、〝フード〟は武器も持たずにスタスタと戦場を横断する。


どうせ周りすべてが敵になるのだ。

であれば、影に紛れようが周りの視線を集めようが関係などない。

それよりも自身が有利に戦える場所へと移動する方が大切だ。

環境が『平坦だから同じ条件』なはずが無いのだから。


『それでは開幕です!

 

 ――――予選第7回戦、開始!!』


一斉に小柄な、そして武器を持たない〝フード〟へと、示し合わせたかのような攻撃が殺到する。

それらの攻撃を小さな動きで捌き、腕を掴んで逆に引っこ抜くと勢い良くすっ飛んでいく。

勢いと体重を乗せ、威力を増した攻撃を放った体勢だ。

目算を外されれば崩れた姿勢と相まり、その有り余った威力と共に宙を舞うのは仕方がない。


「うぉ!?」

「マジかよ!」

「ありえねぇ!」


と三つ連続で上がる悲鳴は既に後方3m。

そこは敗北条件となる『戦闘区域外』である。

彼らの予選は残念ながら開始数秒で終わってしまった事になる。


そんな残念系の雑魚に構わず、〝フード〟はそのまま戦闘区域の端っこをゆっくりと周回して歩く。

この場所が非力な〝フード〟にとって一番都合の良い場所なのだから。

そうして余裕を持って周回し、近くに来た敵の手首や足、首根っこを引っこ抜く作業を繰り返す。


「卑怯だぞお前!」


という声にもめげない。

いっそ賞賛だとさえ思ってしまう。

恐らく実況者が煽った『ガチンコ』という状況を求めているのだろうが、そんなもの全て幻想だ。

勝負事は『どんな状況下でも勝つ』ことが求められるし、何より〝フード〟に言わせれば状況など作ってしまえば良い(・・・・・・・・・)のだから。


生き残り戦である以上、無理に攻撃に向かう必要は無く、勝手に数が減るのを待つだけでも十分だ。

現にそうやって生き残った勝者も居ただろう。

卑怯と言われようともルールに則った正攻法で戦っているのだから非難されるいわれもない。

文句がある者達は〝フード〟に手を出して戦闘区域を離脱するだけだ。


3周としない間に人が減り、残りは5人となった。

この状況なら戦わずとも勝ち残れる可能性もあるので、迂闊に手が出せない。

むしろ戦闘中に背中を刺されることを思えば共闘もしにくく、睨み合いが続くタイプの戦況だ。


「はぁ…さっさと終わりたいのにな」


〝フード〟は思わず呟くが、それぞれが一瞬目配せしただけに留まる。

言葉の揺さぶりはダメ、と諦めて立ち止まり、懐へと手を伸ばす。


取り出したのは何枚もの紙切れ。

それでも動かない全員を確認し、〝フード〟はバラリと紙切れを開いて宣言する。


「そこの僕から一番近い人。

 残念だけど予選(ここ)で落ちてもらうよ」

「あ゛ぁ?!」


青筋を立てて〝フード〟を睨むが、やはり動かない。

となればただの的だ。

紙切れを2枚引き抜き、上へと放り投げて告げる。


「|《火炎弾》《フレアバレット》」

「はぁぁぁ!?

 魔術紙片(マジックペーパー)だと!?」


宙に舞った紙切れを燃やしながら発現した《火炎弾》の数は20。

悲鳴のような声をBGMに、空気を熱して陽炎を纏う魔法の威力は随分と高そうに見える。

近場に居た剣と盾を持つ男へと放たれた。

いくら初級魔法とは言え、数と威力を考えれば受けきる事はかなり難しいことを察知し、盾を翳しながら横っ飛びで回避に全力を注ぐ男。


だが一発でも地面を焼き焦がして抉り、破片をばら撒く《火炎弾》が20発。

実力からして回避することは不可能だが、ぼふん、と立ち込める土煙を突っ切って現れた男。

服のあちこちを焦がして転がるがほぼ無傷だ。


「棄権しないなら…次行くよ(・・・・)?」


〝フード〟はバラリ、と紙束払って『在庫はまだある』と脅す。

つまり今のは『威嚇射撃』という訳だ。

焦げた男は即座に「棄権する!!」と宣言して戦闘区域から逃げ出した。

いくら闘技場の《非殺結界》のお陰で『死なない』とはいえ、わざわざ死ぬ思いまでして耐えて負ける意味などない。

それが装備まで犠牲にすることを考えれば、五体満足な内に負けた方が得だという、分かり易い損得勘定だ。


「うん、ありがとう」


と労いの言葉を掛け、〝フード〟は紙束を握ったままスタスタと戦闘区域の端っこを歩き始める。

驚きを隠せない残りの3人とはまだ距離があるため、この場で魔法を使ったところで恐らく当らないと〝フード〟は答えを出したのだ。

魔法で睨み合いを崩して乱戦になっても良いのだが、先程のように確実に倒せる道筋を作るべきだろう。

そんな一瞬の間を置き


「ふざけんな!

 何で予選如きに100カラドはする魔術紙片を使える!?」

「優勝さえすればお釣りが来るって魂胆か!!」

「ただの手段として使うとは良くやる!」


三者三様に〝フード〟を口々に評価する。

考察も入っているが、基本的には『ありえない』という言葉で埋め尽くされていた。

ついでに


『フードで顔と服装を隠した魔術紙片使い!

 その戦い振りはこの大会内でもかなり異色なものです!


 魔術紙片はご存知の通り専門家が作る使い捨て(・・・・)の魔術刻印です!

 他の刻印魔法と違って『使い捨てる』という制約を掛け、強度を上げた魔法が放てます!


 そのお値段、なんと最下級でも100カラドから!

 等級が上がるに従い作成者も限られ、価格は青天井というシロモノです!

 使い捨てるには余りにも高いこの道具は、適性の有無に関わらず使えるという特徴があるもののやはり高い!

 今回使われた威力を換算すると最低でも500カラドはするでしょう!

 いくら『武装自由』と銘打っていても、このような『武器』を持ち込んだ者は過去の大会に一人たりとも居ません!』


と説明までしてくれる。

実況ともなると満遍なく広い知識が必要なのかもしれない。


「ねぇ、次は貴方で良い?」


足を止めた〝フード〟はBランクの傭兵、ウィニアへと声を掛ける。

対するウィニアは直感的に『この距離は拙い』と理解した。


あの紙束を全て使われる可能性は無くとも、3枚も同時に使われれば流石に詰む。

ウィニア(自分)ににそれだけの価値があるかは別だが、2枚までならまだ(・・)突っ切れる。

だが突っ切った先で3枚使われれば負傷し、負けが決まる。

負けるまでに10枚は使わせるつもりだが…この距離は再挑戦(トライ)が出来てしまうという、絶妙な距離なのだ。


「くはは!

 我輩を前に余裕だな小僧!」

「2~3枚あれば大体勝てるって聞いてるからね。

 貴方は強いみたいだから、5枚使っても惜しくはないな」


その言葉にウィニアは絶句する。

これで勝ちは無くなった。

勝てぬものは仕方ない…が、棄権するのは彼の矜持が許さない。

ならば…と出したウィニアの答えは、別の相手への攻撃(・・・・・・・・)だった。


「卑怯臭くてすまぬな!

 だが、我輩のために沈んでくれ!」

「ぐぉっ!!」


と言って突貫した相手は意表を突かれて防御するだけで手一杯。

振り切られた斧は、受けた相手の足を、あっさりと地面から浮き上がらせて吹き飛ばした。


『終了ォ!!

 波乱の7回戦を制したのは下馬評通りの斧使いウィニア!

 勝利を拾った無名の剣士!

 波乱を巻き起こした〝フード〟の魔術紙片使い!


 本戦の抽選では名前と経歴が明かされるため、特に謎の魔術紙片使いが注目です!』


そんなアナウンスを聞きながら会場を後にする。

〝フード〟は落とせなかった『Bランク』の侮れなさを噛み締めた。

お読みくださりありがとうございます。

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