↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおねがい  作者: もやしいため
第十三章:有名税の取り立て方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

358/537

フードの中身

全ての個人戦の予選が終わり、本戦へと駒を進めた出場者30名と推薦(シード)の2名は闘技場へと集められた。

そこは『熱狂』と呼ぶに相応しい状態。

予想外の展開が多かった今大会を示すかのような状況だ。


『この場に立つ選ばれし32名の勇士達よ!

 よくぞ過酷な予選を通過された!


 これより、本戦の組み合わせを決める抽選を行わせていただく!』


と大会運営のえらい感じの人が進行する、何とも面倒なお披露目会である。

組み合わせによっては確かに番狂わせなどがあるかもしれないし、強力な駒同士を潰し合わせる、という風に盛り上がる一戦もあるだろう。

だが、大会運営側からするとそれでは面白くない。

残念な決勝戦をしても興行的になんら得にはならないのだから。

つまりこの時点である程度の組み合わせが決まっているはずだ。


運営側のえらい感じの人直々に名前を呼ばれ、一人、また一人と抽選を受けていく。

そして〝フード〟の番になり、素顔を晒した。

えらい感じの人の呼び出しを遮るように、途端に勢いよく語りだした実況者。


『おぉっと!

 これはメルカノ家のご令嬢、アシュレイ選手です!

 あの『魔術紙片(マジックペーパー)使い』の一人はアシュレイ選手でした!!


 彼女は三ヶ月ほど前に行われた学園迷宮(ダンジョン)アレクセイの攻略者として名を馳せております!

 しかもその攻略速度は過去最速、過去最少数、過去最年少と記録を上げればキリがありません!

 裏打ちされた実力に、誰もが納得するでしょう!

 このまま本戦でも…って、アシュレイ選手って確か基本四属性持ちで、しかも二属性の上位魔法まで扱えましたよね?!

 魔術紙片なんか必要ありませんよね?!


 何がどうなっている今大会!

 さて、ドンドンいきましょう!!』


アシュレイは溜息混じりに「知ってるくせによくやるよ」と呟いた。

そう、一週間も前に出場登録が締め切られるので、実況者を含めた五都祭(フィックスウォー)の大会運営側は事前に情報を持っているはずなのだ。

当然強力な駒を予選で潰さないために振り分けられているわけで、そうなると出場者の有名どころは全て知っていることになる。

それを予選中はだんまりのまま盛り上げ、大して面白くも無い抽選で披露して盛り上げる。

演出という意味では良く出来ているが、過剰だとも感じるのは仕方ないだろう。


そして無名の者も居る中では、一人ひとりにフォーカスすることは出来ず、記録のある人物だけ煽っていくようだ。

だからある程度の台本は用意しているのだろう。

現にアシュレイの後に抽選を行う者は物凄くやりにくそうだった。


そして次の(・・)〝フード〟が前に出て、顔を晒した。


『『魔術紙片使い』の二人目です!

 こちらも可愛らしいお嬢様ですが、見た目に反した実力者!

 驚くべきことにアレクセイ攻略時に、アシュレイ選手のパーティメンバーとして名を連ねています!

 その名もスミレ!


 手元の資料では魔法士でパーティ参加したくらいしか資料がありませんが…って魔法士?

 何故魔法士がわざわざ魔術紙片を使うのでしょうか!

 謎が謎を呼んでいます!!』


とノリノリである。

当然スミレ当人も含め、その後も非常に嫌そうに抽選していった。

紹介アナウンスなどが無いというのが一番無難だというのに。


『さぁ、今期最後の『魔術紙片使い』が顔を…っと!

 この方も非常に整った顔をお持ちです!


 おぉっと、今資料が手元に届きました!

 アシュレイ選手とアレクセイ攻略時にパーティを共にした、歴代記録を塗り替えた最後の立役者!

 アルス領最年少討伐者でEランクに認定されたミカナギ・リオです!


 しかも先日起きた大氾濫(スタンピード)を抑えたパーティリーダーを務めていたことでランクが上がって現在Dランク!

 その褒賞としてアルス領主のクライン家から、大氾濫を起こした迷宮とその周辺の領地を下賜された、弱冠13歳の男の子…って『男の子』?


 え、嘘…この資料間違ってる…あの子どう見ても女の子(・・・)だよ?』


と理熾の説明だけが中断というか実況者が背後に確認を入れる。

そのボソボソとした声が全体に行き渡るのも気にせずに。

理熾は我関せずに抽選して最初の立ち位置に戻ってしまった。


・

・

・


時は随分と遡る。

闘技大会への出場が決まり、各国とギルドへの条件提示の話し合いを終えた後。

次に考えるべきは『理熾の情報開示量』だった。

現状、ガゼルとギルバートの配慮により、閲覧可能であるはずの情報でさえ『調べにくい』という状況になっている。


しかしこれらはあくまで『調べにくいだけ』であり、調べる気があれば出てしまう情報も多い。

特にギルドに探りを入れられれば、完全に記録が残るハイオークとラボリの件は認めるしか無い。

それぞれ対処しているし、その為の支払いも行っているからだ。


また、アレクセイでの件も『アシュレイ』という学生の記録として、理熾とスミレの名前が残っている。

こちらの記録は名前、年齢、性別、そして所属先とそのランクを提示する必要があった。

ステータスを開示する程厳格ではないが、所属先に対して学園側から照会があるので虚偽報告は出来ない。

つまりこれらが『調べれば出てくる情報』ということになる。

ちなみに奴隷は『所有物』であるがために、理熾を主人に持つ奴隷五人の情報は『拒否権』に含まれ、彼等の情報もギルドには無い。


だからこれらは犠牲に…というよりは知られても仕方ないと割り切るしかない。

後は何を隠すか、ということが焦点となる。

まず容姿は記録として残ってはいないため、変装することで撹乱することは可能だ。

後は理熾達が持つ個別の能力などが外には出ていないので隠せるなら隠す方が良い…という結論へと至った。

結局バレている内容以外は全部隠せというわけだ。


「まず見た目ってことなんだけど…実はこんなものがありまーす」


と取り出したのはいつぞやの大ポルン討伐の【神託】で手に入れた『変装セット(笑)』だ。

セットという名前に騙されるが、報酬を受け取ってみると実は装飾品(アクセサリー)。

首に付ける首輪(チョーカー)で、【隠蔽】や【誤認】といった特性の上位である【偽装】が施されていた。


「これ使えば別の『ミカナギ・リオ』が居るように感じるかも?」


と言い出したのだ。

通常の理熾と、出場者のリオが同時に存在すれば簡単に勘違いを引き起こせるだろう。

が、それらの用意の手間を考えてネーブルが苦い顔をする。


「………相変わらず発想がえげつないな主人(マスター)。

 衆人環視の下で『別人が演じる』とか、どれだけ負担だと思う?」

「いやいや、誰も演技なんてしないよ?」


「は?」

「替え玉なんて誰にも頼まないし、要請通り討伐者Dランクの『御巫 理熾』の僕が参加するし。

 じゃないと皆納得しないでしょ?

 だから『誰かが僕を演じる』んじゃなくて、周りが勝手に『僕を別人だと勘違いするだけ』だよ?」


「くは…なるほど。

 正真正銘の本人が参加するが、別人の格好(・・・・・)で参加するんだな?」

「せいかい」


というやり取りの下、決定したのがこの施策。

この『変装セット(笑)』、もとい【幻影の首札】(ファントムタグ)は、驚くことに戦闘にまで耐えられる【偽装】が施されていた。

何という無駄スペックだろうか。


ただ試した後から気付いて頭を抱えたのが、この首輪の【偽装】の特性が『性転換』で固定されているところだ。

アレクセイでも『男』と明言している以上、これは非常に拙いのだが…だからと神が付けた特性を変更することも出来ない。

そこでフィリカに作成を頼めば


「ほう…これは見事なものだな。

 以前見せてもらった『ナイフ』と同じく遊び心がある」


と評価した後「既にあるならそちらを使えば良いだろう。性転換したところでリオ君の魅力は変わらんよ」という言葉で断られてしまった。

ちょっとした【偽装】であれば、ノルンもガウスの時に作ってくれたが、流石に戦闘行為に耐えられるとは思えない。

だからと外に発注を掛ければその時点でバレてしまうため、購入も躊躇われる。


一応スミレの門を使って『国外で買ってくる』という案も出るには出たが、それはそれで通貨(カラド)の換金が必要になる。

上位特性である【偽装】が戦闘に耐えられるレベルとなると値段もかなりするのでそちらもダメ。

たとえガゼルやギルバートを頼っても多額の換金は痕跡を残してしまうし、通貨がある時点でピンポイントの物々交換など目立って仕方が無い。

むしろこのタイミングで『【偽装】付き装備を買う』こと事態が、なかなか目立つ行為だという話にもなってしまった。


結果、一周回ってそこまでする必要があるのか、という議論も出るには出た。

だが、既に『言い掛かり』が入っているため、完全に横槍が入らない状況を作っておきたかったのだ。

散々悩んだ挙句、理熾が


「もう良いや。

 【偽装】状態で『男だと言い張るどう見ても女の子』という設定で行こう」


と言い出したのだ。

ここまで来ると最早何が正解か分からなくなってくるが、改めて振り返ると性別情報があるのはアレクセイのみ。

理熾は『ステータス開示の拒否権』を持つため、ギルドは記録上だと正確な性別を把握していないことになる。

ガゼルにしてみれば元々知っていた訳だし、わざわざ確認を取る取らないという発想など出ないだろう。

また、学園側も見た目通りの性別(少し中性的ではあるが)だったため、特に突っ込んだ調査もしなかった。


つまりどの勢力もステータス確認などを利用し、理熾の性別を『根拠を持って把握している』という訳ではないのだ。

誰がどう見ても女だろうが確認する術が無く、闘技場への参加に性差の制限はないので、確認しなければならない理由も無い。

だからもうこの際なので、性転換中の理熾でも『男だ』ということで押し通すことに決めたのだ。

ちなみに『女性化した理熾を男装させる』という方法も考えたが、誤認させる特性のため意味がほぼ無かった。


「いやそれも違うかな。

 だって僕は元々男だし、僕は(・・)何一つ間違ったことは言ってない。

 たまたま(・・・・)身に着けていた装備に【偽装】が付いてただけで、たとえバレても嘘吐いて無いし、別に気にする必要なんて無いよね!」

「いや、そもそも変装して公共の場に出るって時点でどうかと思うぞ…?」


「でも有名になってあちこちからお呼びが掛かったら面倒じゃない?」

「お呼びが掛かったらどっちで行く気だよ」


「そりゃもう、使い分けってヤツだね」

「やっぱりうちの主人って頭おかしいわ…」


ネーブルは呆れるように言ったが、その考え方には納得していた。

お読みくださりありがとうございます。


というわけで、遥か昔にこっそ仕込んでた伏線の回収です。

理熾の女装化ではなく女性化としたのは、神様装備の使いにくさを現すためです!

「何とかゆいところに手が届かない仕様なのか!」とか思ってくれたら喜びます(笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。