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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
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地獄の中の仏様

理熾にとって地獄の日が到来です。

人間誰しも一度は経験があるのではないでしょうか?

翌朝、目が覚めると動けなかった。

本当に全く、微動だにできず…まるで身体が拘束されているかの如く。


 え、何これ?

 金縛りってやつなの?


ぼんやりとした頭で考えるのはそんなこと。

幸か不幸か理熾には今まで金縛りという経験が無かったのだ。

初めての経験に戸惑ったりはするものの、思うことは余り無い。


 ぇー今日はこんな感じでスタートかぁ…。


寝惚けた感じの頭でぐったりする。

どうせ起きられないなら、と二度寝を開始した。

思いの外簡単に二度寝は実行された。


あっさりと成功した二度寝だったのだが、暫くするとコンコンと扉を叩く音がする。

ノックの音で理熾はしっかり起きた。

二度寝前とは違い、今度は完全にスッキリと。

そもそも寝起きは良い方なのだ。


「おはよう、リオ君。

 まだ寝てるのかな…?」


あくびを一つして、布団から出ようとした時にセリナが入ってきた。

鍵を掛けていたはず…とも思うが、宿屋の受付なのだからマスターキーくらい持ってるのだろう。


 いやいや。

 だからって、セリナさん。

 返事もしてないんだから入ってこないでよ?


とか実は思っていたが、顔に出さずに答える。

ちなみにまだ起きた状態のままで布団の中だった。

起き上がる前に扉が開いたのだから仕方ない。


「すみません、今起きました。

 おはようございます」

「うん、おはよう。

 朝ごはん食べに来ないから少し心配でね。

 昨日かなり疲れて帰ってきてたから、大丈夫かなぁって」


布団から顔だけ出して答える。

迷惑を掛けっぱなしである。

このやり取りの間も布団の中である。

病人と看病に来た人みたいになっている。

流石に起きなければ…と思い、身体を動かす。


「いったぁぁぁぁああああ!」


理熾は思わず叫んでいた。

その声にセリナが驚く。

一体何をしているんだろうという感じで見ている。

ベットで。

何か痛いことをしてれば変態決定である。


「えっ!?

 リオ君どうしたの?」

「うぅぅぅ…何これ…?」


身体が動かせない。

そういえば一度起きた時も身体が動かなかった。

その時はボーっとしてたし余り気にしなかったのだが、これはまずい。


「リオ君、ちょっとごめんねー」


と声を掛けておでこを撫でるセリナ。

セリナ自身のおでこを触りながら言う。


「んー…熱は無いみたいねぇ…。

 まぁ、『痛い』って言ってるし病気じゃないと思うんだけど…?」


困惑しながら首を傾げる。

どうすれば痛いのかを知るために、セリナは行動を開始する。


「ちょっと痛いと思うけど我慢してね。

 それと、痛かったら教えて」


掛けられていた布団を剥ぎ取り、理熾のラフな格好が見える。

これが逆の立場なら確実にセクハラだ。

ほぼ大の字になって身体がプルプル震えているのは寒いからではなくて恐らく痛みによるものだ。


「それじゃ腕から」


有無を言わさず行動を開始する。

この辺りは『お母さん』的な行動だ。

年齢的にはかなり若いのだが。

今の状態はとても母性本能を掻き立てるらしい。


さっと右腕を取って、手を握る。

まだ大丈夫。

手は問題ない…が、肘を曲げていくと…。


「いだだだだだ!」


理熾が叫んだ。

たったこれだけの曲げ伸ばしで音を上げる理熾を見てセリナはあっさり診断を下す。


「うん、筋肉痛ね」

「ぇ…筋肉痛?

 こんな全身が…嘘でしょ?」


「いや、だってこれが病気だったら奇病だし。

 昨日森を歩いてきたんでしょう?

 運動不足なリオ君がそんなことをすれば、まず筋肉痛になるわよ」


グサリと刺さる言葉だった。

そういえばスフィアに飛ばされて初めて走ったことを思い出す。

その時は何故だか筋肉痛にはならなかったが、あの時になっていてもおかしくは無いはずだった。

それ程理熾の身体能力は低いのだから。


「なるほど…」


認めたくは無いが、認めるしか無い状況だ。

いくらなんでもこの筋肉痛は無いだろうとも思うが、なってしまったものは仕方ない。

体力回復するのを待つしかない。


「んーこれじゃ動けないわね。

 ご飯持ってこようか?」

「いえ…動けないので食べれません。

 夕飯しっかり食べるって事で今日は一日寝てます」


ギシギシ悲鳴を上げる身体を思い、朝食は諦める。

そもそも時間的に既に朝ではないのだが。

何とか夕食だけは食べる意思を見せるのは理熾のプライドだ。


「それじゃ治らないわよ?

 し、仕方ないわねぇ…私が食べさせてあげるわ!」


何故か急にデレた。

セリナからすると、弟くらいの年の子が床に伏せている(筋肉痛だが)状況下。

流石に放っておくにも気分が悪いし、そもそも『食べに来ないことが心配』で来たのだ。

状況を知れば余計に『心配』が増すのは当たり前。

食べないよりは食べる方が身体の治りが早いのも事実なのだから、食べさせる。

そうセリナは結論付ける。


「まぁ、私がしたいことだからお代は要らないわ!」

「いや、そういう問題では…」


まさにそういう訳にはいかない。

宿屋なのに宿代が要らず、ご飯代だけ。

病院でもないのに看病されて、ご飯代すら要らない。

何だかもう今何処で何をされているのかすら分からない。


 いやいや、それはありえないでしょ。

 むしろありえても僕が嫌だ。


というわけで理熾は断る。

「夕飯までには動けるようになるから」と。

遠慮という意味でも、羞恥という意味でも。

割と強めに。


だが。


「子供は子供らしく、大人に甘えていれば良いのよ。

 私は好きでしているんだから、気にしないで」


と言って理熾に布団を掛け直して去っていく。

呆然とする理熾が気付いた時には既にセリナは下へ向かっていた。

身体が動かせないからこの状態になっている以上、行動されたら止める手立てが無い。


 うわぁ…マジか。

 スフィアは僕に冷たいけど、スフィアの人は僕に優しすぎるよ!


とか真面目に思っていた。

そして「優しいのは良いけど皆僕の羞恥心をないがしろにしているよ!」とも。

理熾は恥ずかしいというか情けないというか、申し訳ないというか。

色々な感情でいっぱいだった。


だが考えてもみて欲しい。

天涯孤独(多分)の子供が、生きる為に色々している。

今はご飯代だけだとは言え、出費がある以上、心には無意識に負担が掛かる。

そんな中、訓練だと『危険な森を歩く』という行為をした結果が極度の筋肉痛だ。

状況を知る大人で、少しでも余裕があるなら『優しくする』という選択肢も生まれよう。


スフィアにおいて理熾は部外者だから、スフィアに対しては第三者視点で居られる。

そんな理熾は自分に対する、第三者視点というものが欠けている。

だからこそ、周りの人は興味を持つし、何より心配になる。

「こいつ大丈夫か?」という風に。


ギルバートやセリナ、ツヴァイもその一人に数えられる。

お人好しで片付けるのは簡単だが、そもそも理熾が危なっかしいのだ。


「はい、これ。

 といっても動けないのよね…。

 でも寝てちゃ零すから、少し起き上がらせるわね」


朝ごはんという名の病人食(わざわざ作った)を持ってきたセリナが言う。

近くのテーブルを引き寄せて食事を置き、理熾に向き直る。


「い、いえ…置いといて貰えば食べます…よ?」


「本気で食べさせる気だ」と察する。

何度も言うようだが、『動けない』のだから当然と言えば当然だ。

だが理熾は弱々しくも抵抗する。

だってたかが筋肉痛だし、と思いながら。


「はいはい、それは動けたらね」


セリナはあっさり流して続きを再開。

聞く耳は持たないらしい。


理熾に掛かっている布団を捲って身体を起こさせる。

苦痛の顔を浮かべるが、声は出していない。

流石にこの状況では叫べないのだろう…プライド的に。


変に筋肉が突っ張っていてるため少し苦労するも、体格的にも体重的にも理熾は華奢だった。

ベットの端に背をもたせさせ、セリナが言う。


「よく頑張りました。

 では朝ごはんですよ~」


間延びしたように掛けられる言葉。

どう考えてもあやされてるようにしか見えない。

周りにはセリナしかいないが、理熾としてはかなり恥ずかしい。


「じ、自分で食べれますって…ほら、スプーン下さい」


そういって悲鳴を上げる腕を何とか動かしてスプーンを強奪する。

この行動だけで精神力をごっそりと持っていかれる。

奪ったは良いが、握力が無いのでスプーンがカタカタ震えているし、腕を動かす度に肩とか腕の端々がピクピクしている。

まさにぎこちなさのオンパレードだった。

セリナは苦笑いをしながらため息を吐いて言う。


「全然ダメじゃない。

 ほら、良いから食べさせなさい。

 私のためだと思って、しっかり食べて」


そう言われると反抗なんて出来ない。

セリナの言い方は理熾にとってとても卑怯だった。

心配を解消するための行動なのだから、セリナの言い分は分かる。

が、


 面倒を見てもらってるのになぁ…。


としか思えない。

もし理熾が「食べさせて!」とかセリナに言ってたらこの状況は無いだろう。

弱い者が、何かの為に頑張って強がる時に人は手を貸してくれる。

まぁ、今回はセリナの趣味なのだろうが。


そして抵抗は無意味を知り、食べさせてもらう。

スフィアに来て、本当に何もしない一日がこうして始まる。


 あ、そういえば新人講習?研修だっけ?

 前日までに連絡必要だったような…。

 夕方までに動けるようになるかな…?


諦めて食べさせられている今の理熾には、それだけが懸念材料だった。

お読み下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 27ページになっても日常生活だけというのは。 読者が何に期待するのか、はとても重要なことだと思うのです。
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