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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十一章:人生の迷子

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【幕間:アルス領】しっかり者の挑戦

1月29日はこの話の投稿を始めた日…誕生日になります。

たった一年でこんなに文章を書くとは思いませんでしたが…。

皆様いつも読んでいただきありがとうございます。


なので今回は番外編としてセリナの日常を書きたいと思います。

彼女がやっていることの一日ではありませんので物足りないかもしれませんが、お付き合いいただければなと思います。

唐突だけど、ガーランドで『卵』といえば高級品と言われてます。

卵って鳥とかトカゲとか、そういう種族からしか手に入らなくて、手に入るかどうかはまちまち。

一般的に流通しているのはやっぱり鳥の卵なんだけれど、取りすぎると親鳥が居なくなるのでダメ。

それに群生している訳じゃないから元々探し当てるのも面倒で根気の要る作業だったりする。

更にモノによっては放っておくだけでも孵っちゃう。

そうじゃなくても商人が手に入れるまでに時間が掛かるから日持ちはしないし、卵を専門に扱っているところも無いからね。

手に入れば食べられるけど基本的に高級品って感じ。


といってもうちは割と高級店扱いされているから、優先的に回してもらえる。

その分他よりも少し高くはなるけれどね。

それでもやっぱり喜ばれるし、だからこそあけみや(うち)を選んでくれる人も居る。

食事だけじゃなくて宿泊もね。


そんな卵を使った料理って言うのは主役に据えるか、はたまた脇役で主役を立てるのか本当に千差万別。

ただ目玉焼き、オムレツと焼くだけでも出来上がる料理は多いし、溶いてスープに入れるのも柔らかい食感と色合いが出て良い。

他の食材の『つなぎ』にしたり、もっと簡単に殻ごと沸騰したお湯に沈めてゆで卵で食べるというのもありかな。

まぁ、どんな食べ方しても一人で一個丸ごと食べるっていうのは割りと贅沢なんだけどね。

それもこれも『火を通せば固まる』という特徴があるから、卵って食材は様々なものに使えるんだよ。


何故私が急にこんな話になるのかと言うと、その高級品である卵が目の前に山ほどあるからです。

えぇ、本当に普段では見ないくらいの数がね。

領主館の料理長ダグが、リオ君を気に入っちゃったのは皆知ってる。

あんな場を設けてくれたらそれはもう気に入るだろうね。


で、そのダグが気に入ったリオ君からお願いされたのが『出し巻きたまご』っていう料理。

スクランブルエッグでもオムレツでもないらしくて、少し作るのが難しいと言われた卵を使った焼き料理。

私も知らないから、もしかするとリオ君のご両親のオリジナルなのかもしれないね。

そんな訳で、卵をどっさり仕入れて作ったは良かったけど、残念ながらそれらを消費するだけの口は無い。

いくら卵が高級品でも毎食似た料理が出されれば飽きも来る。

特にお父さんが


「ダグ、いい加減にしてくれ。

 納得出来るモノが作れないのは分かる。

 だが『分からないものを作っている』んだろう?

 ならば最終的にリオ君に味を見てもらうしかなかろう。

 というか、わしらはお前の実験材料じゃないんだからそろそろ一服してくれ」


という感じで『出し巻きたまご研究』に待ったを掛けた。

そして領主館の面々は「暫くたまごは要らない」ということになってこっちに回ってきたって訳。

その時は『不要品』の名目で買い叩いたけど、お父さん良かったのかなぁ…?

いや、アレは多分一刻も早くダグと卵を引き離したかったんだろうなぁ。

そんな訳で目の前にあるたまごは普段の1/5くらいの値段で手に入った高級品です。

そこまで下がるともう『高級品』って値段じゃないんだけどね!

たまにあるダグの暴走ってこういう時は嬉しいんだけどね。


さて…では50個もあるこの卵、宿で普通に出すだけでは勿体無い。

領主館での仕入れ値は変わらないんだし、うちでもそれほど下げて出せる訳じゃないんだよね。

市場価格ってモノを壊しちゃう訳にも行かないしさ。

そんなことを考えて厨房を歩く。


ふと視界に入ったのはリオ君から譲ってもらったポルンのミント。

相変わらずぽよぽよ揺れながら厨房内を練り歩いている。

床やテーブルを歩いた後は磨いたようになっていて、掃除と洗い物が激減したんだよ。

そっか、この子のお陰でうちは大分楽出来てるんだね。


…うん、リオ君にお礼をしないとね。

でもダグと同じだと大顰蹙だし意味が無いから…あ!

そういえば少し前にリオ君が『マヨネーズ』って名前の調味料を教えてくれた。

まさか調味料に卵を使うなんて発想は無かったんだけれど、面白そうだしせっかくなので作ってみよう。


材料は少なくて、作り方も簡単。

卵の黄身、お酢、油だけ。

塩・胡椒は味を調えるのに使って、油は足しながらひたすら掻き混ぜれば出来上がり。

出来上がりは独特の匂いにまろやかな酸味、そして滑らかな舌触り。

付けてよし、合わせてよし、焼いてよしの万能調味料…って触れ込みなんだけど、やっぱり聞いたこと無いんだよね。

異国の文化なのかもしれないね。


「さて、一つ頑張ってみますか!」


声に出して気合を入れなおしてみた。

話だけで料理を再現するのは難しい。

それはダグが証明している。

いくら材料とか作り方を知っていても、火の通し具合や技術の使い方や順番が違えば変わってしまう。

うん、どんなに簡単なものでも最低一度は見ないとやっぱり難しい。

だってどうしても『これで良いのかな?』って疑問が解消されないからね。


そんなことを考えながら私は器に材料を入れて泡立て器でひたすらに掻き混ぜた。

油を足しながら『撹拌する』ってことは空気を含ませるってことかな?

なめらかになるってことはメレンゲみたいなもの?

そんなことを考えながらも1分、3分、5分、10分…と器を片手にカシュカシュと音を立てて掻き混ぜる。

滑らかさは出てきたけれど、もしかしてやり方間違ったのかな…?

うーん…結果も分からないならやっぱり作れないような…?


そう思って手を止めて味見してみる。


「ん…?

 あれ、美味しい…でも何か足りない気がする」


周囲を見渡して少し塩と…香りと酸味のためにレモン汁を足してもう一度掻き混ぜる。

混ざり切ったらもう一度味見…次はほんのちょっとの胡椒と塩。

更に掻き混ぜて


「うん、完璧!

 …でもあってるのかな?」


味は引き立ったけれど、完成かどうかの疑問は尽きないわね。

とりあえずこれはこれで良いかな。

リオ君に食べてもらって判断するしかないし。

後は…お好み焼きっていうのも食べたいって…。

うん、丁度マヨネーズも作ったことだし、挑戦してみましょう。


確かこっちも簡単だったはず。

材料は小麦粉、卵、水…と炒め物の野菜を小さめに切って混ぜる。

ついでに肉を…あ、オークで良いかな。

それを細切れを中に入れるか、薄切りを上に乗せるかだったかな?


後は鉄板に油を敷いて、平たく丸く伸ばして焼くだけ。

表面に焼き目を入れて出来ればカリっと、中はふんわりの仕上がりを目指して。

よし、復習完了。

この大量の卵を使うだけならオムレツとかの方が一杯使うんだけどね。

私はそんなことを思いながらフライパンを暖めた。


初めてだしあんまり考えなくていいように肉は細切れにして中に入れよう。

ちゃんと熱だけ通ってることに注意しないと…。

そんなことを考えながら熱される鉄板に油を敷いて生地を流し込む。


ジューという生地が焼ける音が響く。

うん、焼き物ってこういう音が良いんだよね。

あ、平たくしないと…それと丸くするんだっけ?

ぺたぺたと形を整えていく。


下側を持ち上げて焼き目がついたか確認。

まだ柔らかくて色が白いからもう少し。

暫くしてからもう一度確認。

今度は焼き目がついていたので引っ繰り返してもう一度同じように。

っと、油引きなおさないとね。


こんがりと綺麗な焦げ目をつけて完成。

見た目は完璧じゃないかな。

後は味…確かこれをつけるタレを作らないといけないんだったかな。

さっき作ったマヨネーズに合うようなもの…よし、こんな感じかな。

ちょこちょこと味を調節して味見。


「うん、美味しい。

 リオ君喜んでくれると良いなぁ」


私は思わずそんな事を呟く。

にしてもこんなに簡単に出来ちゃうんだね。

マヨネーズは混ぜるのが大変だけどそれだけ。

それにお好み焼きは混ぜて焼くだけだからもっと簡単。

つける調味料も手持ちのものを混ぜたら美味しいのが出来たしね。

うん、試作品ってことで今夜うちで出してみようか。

一口目は試食、もっと欲しければ注文って感じで数量限定、特別販売って名目で。


残念ながらリオ君とスミレは今ガーランドに居て、未開拓迷宮ラボリの準備や学園迷宮の攻略したりで帰って来れないみたい。

代わりにレモンを筆頭にネーブル、ハッサク、ライムがお酒を片手につまみ代わりにわんさか食べてた。

でもリオ君が言うにはそれ主食らしいんだけど…?

まぁ、喜ばれるならそれで良いかな。

それならばと、最初のものからちょこちょこと改良を加えていく。


そうして出したお好み焼きはまさかの完売。

サクラと思われかねない四人はさておき、試食が当ったみたい。

思わぬ臨時収入って感じだね。

新感覚の調味料に、初めての料理だから分からなくはないけどね。

でも肉巻きクレープとかもあるから、何処かにありそうな料理だけどなぁ。

それより早くリオ君帰って来ないかな?

君のために作ったんだからさ。


マヨネーズ、お好み焼きを完成させてから数日も経たない内にリオ君は帰ってきた。

しかも今日は丸一日こっちで休養するんだって。

久々に見るリオ君(まだ一週間くらいしか経ってない)は「セリナさんただいまー」って相変わらずだけど、何となく大人っぽく見える…?

んー…アシュレイ様(メルカノ家の末っ子)の影響?

…何か嫌だな。

カルロ様が言うにはお守りみたいなものらしいけれど、年上のお守りって変な話だよね。


「お帰りなさいリオ君。

 ガーランドはどうだった?」

「フィリカさんの凄さを再確認しました。

 あ、それと学生って皆頭固いみたい?」


「…今度は何してきたの?」

「『今度は』って何ですか。

 頑張って迷宮の攻略してただけですよ?

 あ、そうだ。

 ミントにお土産で木材兵(ウッドゴーレム)とか持ち帰ったけど食べさせて良いかな?」


「え、うん。

 良いけど…私には?」

「あー…急ぎだったから…」


思わずしてしまった催促だけど、本気じゃないよ?

リオ君も忙しいしね。

でもミントにはあって私に無いのはちょっと悲しくなるかな…。


「って、冗談ですよ。

 まぁ…『お土産』じゃ無いんですけどね」


そう言って差し出されたのは小さくとも、しっかり魔石の付いた首飾り。

中央に1cmくらいの小さな魔石。

1つに見えるその魔石は噛み合うように半分ずつ色が少し違う。

だから多分2種類の魔石を組み合わせて作ったものなんだろう。

その魔石の周囲にはリング状に纏う1.5cmくらいの台座があって、後ろ側からは魔石が見えない。

台座には彫金などが装飾されていて、何と言うか変形のブローチみたいな感じかな?


「…え、何これ?」

「ちょっと立て込んでて遅れたんですが、お守りです」


「お守り…?」

「魔法使えるって言ってましたよね?

 危なくなったら真ん中の魔石に魔力流してください。

 僕かスミレが気付きます。

 台座の方に魔力を通せば『裏側の3つ目』に刻んでる【結界】と【竜鱗】の特性が使えます」


「え、え…はぇ?」

「いやほら、前に連れてかれたでしょ?

 次が無いとは言えないし、例え連れて行かれても大丈夫なようにと思って」


いやいや、待ってよ。

いくら小さくても『魔石を3つ』だよ?

軽く言ってるけど、魔石って欠片でも特性を入れられる純度なら一つ5000カラド位するよ?

それを3つ…に加えて3つ目が特性を2つも入れられるような魔石。

入ってるものも一つがユニークって…。

しかも『あえて3つ目が見えないように作ってある』ってどういうこと…?

余りのことに考えがぐるぐるする。


「え、流石に貰えないよ…?」

「いつものお礼と、僕の心配解消のためだから受け取ってください。

 その前面についてる血魔石(ブラッディコア)って2つの魔石はGPS代わり…じゃ分かんないか。

 うん、ただの目印です。


 しかも僕とスミレ(他人)の血魔石だから、それだけだと意味も価値も無い。

 一目見て魔石とも分かんないだろうし。

 だから装備してても警戒されないし、わざわざ外されることは無い。

 もし取り上げられそうになった場合のために裏側に特性用の魔石を入れてます。

 つまりこれはセリナさんのためだけに作ったモノだから、受け取ってください」


「ち、違うよ!

 聞きたいのはそういうことじゃないよ!」


うん、そんな話じゃない。

いくらなんでもそんな高価なものを貰えない。

けれど私用だからって、それは流石に無茶な渡し方じゃないかな…?

首を傾げるリオ君を目の前に、心を落ち着かせて聞く。


「…本当に良いの?」

「うん、是非。

 というか要らないって言われると捨てるしか無いんですよね。

 あ、デザインが気に入らないならまだ少しくらいなら修正出来ますよ?」


「ううん、凄く嬉しい。

 ありがとう。

 大事にするよリオ君」


凄いなぁ…受け取ってもらうか捨てるかの二択しか用意してくれてないとか。

これで『捨てる』って言える人は確実にリオ君のこと嫌いだよね…。

受け取って早速身に付けると、リオ君は私の手を取って指を浅く切った。


私が驚いている間に滲んだ血を魔石と台座の間に落として反応を見ている。

すごい…前面にある2つの魔石の色が変わった。

…あ、違うのか。

背面にある魔石の色が変わったから、色の加減が変わったのかな?

そんなことを思っているとリオ君はホッと一息入れていた。


「痛くないけどびっくりするじゃない」

「すみません。

 これで契約しておかないと『セリナさん用』にならなくてさ」


「…嘘ついたの?」

「まさか。

 今は本当ですよ?」


むぅ…リオ君にしてやられたみたいだ。

聞いてる限りだと常に付けてた方が良いみたい…寝てる時以外は身に付けておこうかな。

デザインも華美じゃないからか、どんな服装でも問題なさそうだしね。

今の作業着(エプロンドレス)なら注目させるのに、そうじゃない貴族の服装なら服を立てるように見えるんじゃないかな。

汎用性のあるデザインは難しいはずなんだけどなぁ…。


「あ、そうだリオ君。

 前に教えてくれた『マヨネーズ』と『お好み焼き』を作ってみたよ?」

「えぇホント?

 凄く食べたい!

 聞いただけで作れるなんてセリナさんはやっぱり凄い!」


さっきまで真剣な顔で首飾りを渡されてたはずなんだけどなー。

一気に子供っぽくなっちゃった。

でも良いよね、こういう『子供らしさ』って。

リオ君って普段は大人顔負けの突飛な発想を実現するけど、こういうところを見るとやっぱり子供なんだと安心するよ。

可愛い子だなぁって私は頬が緩む。


「ふふ…じゃぁ、いつにする?

 お昼でも夜でも構わないよ?」

「えっと…なら夜で。

 今日はちょっとフィリカさんと打ち合わせが…」


「あ、じゃぁまたお昼ご飯作った方が良い?」

「うん、お願いします。

 後…あちこち挨拶してきます。

 あ、そうだ。

 《亜空間》のご飯減ってきたからまた一杯作ってください」


「それならお昼には一度寄って。

 追加分は夜までに仕込みしておくから、夕飯時に仕上げちゃうね」

「ありがとうございます。

 じゃ、行ってきまーす」


そう言って慌ただしく出て行くリオ君。

といっても《転移門》って言うのかな?

そういうのを使って行き来してるみたいで、移動時間はほとんど掛からないみたい。

まぁ、向こう側の状況を見てからじゃないとダメっていう面倒な条件があるらしいけどね。

何というか…相変わらず忙しい子だよね。

と久々に見たリオ君を見て私は嬉しくなる。


「あ、ミント。

 リオ君から差し入れだよー」


ミントを呼び寄せリオ君が置いていった木材兵(核あり)を指差す。

嬉々として(多分)食べ始めるミントを眺めながら


「さてと、それじゃお昼ご飯とお夕飯の仕込みをしますか」


そう呟いて食事作りに精を出す。

いつもと変わらない、けれどいつもよりも少しだけ気合が入った料理を。


・

・

・


夜になって落ち着いたリオ君は食堂の席に着く。

『特別室を開ける』って提案はあっさりと却下されちゃった。

リオ君は「いつもの雰囲気が良いんです」だってさ。

気に入ってもらってるなら嬉しいけど、少しくらい特別扱いさせてくれても良いのにね?


「さて、お待ちかねのお好み焼きです!」


私は鼻高々にリオ君の前に『お好み焼き』を出した。

お客様の支持を得ての渾身の作品(料理)に、リオ君は声も無く目を丸くして固まる。

ふふふ…驚いてる!

これだけで頑張った甲斐が…って、割と簡単に出来ちゃったけどさ。


「まさかのチヂミ!」

「えぇ!?」


違った、驚いたのは私の方だった。

リオ君が違う名前を叫んだ。

アレ…何処で間違った?


「え、水と玉子で溶いた小麦粉に野菜と肉を入れて中はふんわり外は出来ればカリッと焼き目を付けた料理だよね?」

「うん」


「調味料はマヨネーズを使うんだよね?」

「うん」


「その完成品だよ…?」


私は念のため確認をしたけれど、間違いは無かったみたい。

けれど違うみたい?

完璧だと思われた渾身の料理がまさかの別料理だとは…。

気落ちする私にリオ君は


「うん…そうだね、間違いなくそうだと思う。

 セリナさんは悪くない。

 僕が知ってる二つの料理が似過ぎてるだけだから」


と声を掛けてくれる。

けど…え、いやそれはそれで凄くないかな?


「え…同じ作り方なのに呼び名が違うの…?」

「うーん…良く知ってる訳じゃ無いからなんとも言えないんだけどね」


ほぼ同じ材料、ほぼ同じ調理法なのに結果が違うって…。

ついでに「でもチヂミってマヨネーズ使わないっけ…? いや、万能だし使うか」って呟きも聞こえた。

リオ君が知る料理ってどれだけ千差万別なんだろう?


「びっくりはしたけど、チヂミも美味しいんだよねー。

 というかこの再現率は凄い…一口大にまで切ってる辺りまで一緒だよ」

「え、失敗したけど良いの?」


「うん、失敗どころか凄くおいしいよ?

 僕が適当に言ったレシピで作っちゃうんだからやっぱり凄いよ!

 中はキャベツ、ネギ、玉ねぎ…に何かの芋かな?

 魚介類が無いから肉だけど…うん、こういうのもありだよね。

 それに表面サクサクで中がもっちり。

 マヨネーズは完璧だし、タレも酸味と辛味が利いてて美味しい。

 こっそり刻んだ唐辛子まで入ってるとか、さすがセリナさんだよね!」


まさかの別料理に衝撃を受けたけれど、基本的には美味しいみたい。

良かった…失敗じゃなかった…のかなぁ?

でもそうなると『お好み焼き』ってどういう料理なのかな?


「リオ君リオ君」

「はい?」


「それ食べ終えたらお好み焼き作ってみてくれる?」

「あ、はい。

 分かりました」


と気軽に請け負ってくれた。

ってことは、やっぱりそこまで難しい料理じゃないのかな。

聞いただけで近いものは出来るんだしね。


この日リオ君は私にちゃんとしたお好み焼きを伝授してくれた。

私の作ったチヂミが少し水が多かったくらいで材料はほとんど同じ。

高さがなかったのはタネが緩かったから。

作り方は『カリ』を前面に出すために油を多めに使ったのが間違いだったみたい。

最後に薫り付けと食感にと思って生地の周囲で香油を焼いた一手間も余分だった感じ。

隠し味にって思ったんだけどなぁ。


上に掛けるのはデミグラスとはまた違った、甘辛いとろっとしたソース(リオ君が説明する味に私が作った)。

どっしりとした見た目と、しっかりとした具材の食感と甘み、それに食欲をそそる香りと焼ける音。

これが完成品か、と少し感動した。


「欲を言うなら鰹節とか削り節とか青海苔とかあると良いんだけどね」


どれも聞いたことが無い調味料。

今度作ってみようかな。

調味料が増えれば料理の幅も広がるしね。


あ、そうそう。

このお好み焼き実演会にはダグも呼んでいて、リオ君の横で苦心の『出し巻きたまご』を作成した。

リオ君が感動しながらぱくついていたけど、実は作った全部がそうらしい。

なんだか明確な基準があるわけじゃなくて、単純に『溶き卵の中にスープを入れた玉子焼き』なんだってさ。

その中でも一番イメージに近いのは、実は一番初めに作ったモノだったみたい。

だって今食べてる出し巻きたまごって、玉子焼きの中から野菜のあんかけスープが出てくるんだもの。

美味しいんだけど、ダグも私も凝るとこういうことになっちゃうんだろうなぁ…。


「二人ともありがとう。

 凄く美味しかったよ」

「いや、こちらこそ面白い料理を教わったからな!

 また何か食べたかったら言ってくれ」

「うん、そうだね。

 出発が同じでも結果が変わるっていうのも面白いしね」


変な料理を食べさせたにも関わらずリオ君は私達にお礼を言った。

結局最後は『美味しければそれで良い』ということなのかもしれないね?

ダグも帰って後は寝るだけになった時。


「あ、そうそう、リオ君。

 この『マヨネーズ』って広めて良いの?」

「良いよ。

 作り方知ってるから分かると思うけど…それ太るよ?」


「う…確かに…」

「広めたら病気の人が増えましたってならないように、あけみやの名物料理…というか調味料にしといたら?」


「考案者リオ君なのに?」

「あはは…。

 まぁ、見た目や味から材料と作り方は分からないと思うし、セリナさんにレシピ預けるよ」


多分この『マヨネーズ』っていう調味料は本当にびっくりするほど需要が出ると思うんだけどな。

それをポンと私の一存って…まぁ、量産するには卵が高いし、かき混ぜるのもしんどいから仕方ないかもしれないけどさ。


「分かったよ、ありがとうリオ君。

 今日は流石に泊まっていくよね?」

「うん、お世話になります。

 また明日からガーランドに戻るけどね」


「忙しいね?」

「んー…そうでもないですよ」


そう笑っては話してはいるけど、いくつかの案件を同時に進めているのを私は知ってる。

いつも通りのリオ君は、私の知らないところできっと危ないこともしていることも。


「おやすみセリナさん。

 いつも通り夕飯美味しかったです」

「おやすみリオ君」


翌朝、ご飯を食べたリオ君はいつも通りに出発する。


「行ってきます」

「気を付けてね」


「今日はスミレも居るから大丈夫ですよー」

「いや、自分じゃそんなに役には…」


そんなことを言いながらスミレを見る。

少し顔を赤くしてるのは頼られて照れてるからかな?

最初来た時はスミレって凄く大人しくて引っ込み思案だったのにね。

コボルトとか色々と経験したからかなぁ…自信持ってる感じ。


弟みたいなリオ君は、私が思っているよりもずっと大人で凄いのは知っている。

それでも私としては出来れば危険から距離を置いて欲しいんだよ。

でもリオ君に言ってもまず無理だから、私は『どうかリオ君が無事で居ますように』って人知れず願う。


「無理しちゃダメだからね、リオ君」


私は手を振って見送った。

お読み下さりありがとうございます。


そんな訳で、セリナの首には理熾からの贈り物。

血魔石が3つもついた特性付きのネックレスが掛かってます。

これで一安心ですね。

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