容疑者候補たちとご対面
死体を上司に任せる前に、聞いておかなければ。
「新星の旅路はどこに待たせてます?」
「いつもの部屋だ。」
「了解です。彼らの様子はどうですか?」
「少なくとも良くはないな。何かは言われるかもしれん。覚悟はしておけよ。」
いつもの部屋なら、応接室か。応接室は、あくまで商談の取引や、打ち合わせ、面談や相談を行う部屋だ。できればこんな理由で使いたくない。
だが、仕方がないのだ。今から調査員のための新しい部屋を作るのも難しい。なぜなら、調査員専用の部屋は基本的に使わないからだ。普段使わない部屋を何個も作れるほど、余裕があるわけではない。
ちなみにだが、この冒険者ギルドには尋問室もある。ならそちらを使えば良いだろうという話もあるが、まだ、犯人だと確定できていなければ、使えないのだ。こっちの部屋の方が使わないのに。
にしても、よくはない、か。言われることには慣れているが、できれば嫌な思いはしたくない。しかし、調査員として働く以上避けられないことだ。
これからのことを考え、気を重くしながら霊安室を出て、カナンと共に向かっていると
「先輩…。」
「ん?どうした?」
「先輩は今回の件は、事故と事件のどちらで考えてます?」
「俺は事件だと思ってる。少なくとも、偶然の事故とは思えない。疑問点が多すぎる。」
「ってなると、俺の力が必要ってことすか!?」
「まぁ、そうなるな。お前は耳がいいからな。尋問は任せる。期待してるぞ。」
「任せてください!」
やる気を出してくれるのは嬉しいことだ。ただ、俺の考えならば新星の旅路の中に、直接的か間接的に殺した奴がいるはずだ。
今回の事件は疑問点が多い。少なくとも嘘をつかれることはありうる。そうなれば、カナンの力が必要だ。
………ほんと、調査員に向いてるよ。
カナンの張り切った顔を横目に見ながら、気合を入れる。ここからは、心を強く持たなければな。
話しながら歩いていれば、応接室のドアが見えてきた。扉の前に立ち、深呼吸をしてから、ノックをし、部屋に入る。
部屋の中には、澱んだ空気が漂っている。応接室にいた4人の人物をざっと見る。男が2人、女が2人。男は1人は童顔で、もう1人は、痩せている男だ。女は、1人はきつそうな顔をしている。もう片方は、小柄で小動物のような印象を受ける。全員が沈痛な表情をして、こちらを胡乱げな目で見ている。
そりゃそうだ。人が、パーティーメンバーが、自分たちを守ってくれた人が、死んでいるのだから。
部屋の雰囲気に流されないようにいつもより少し声を張って話す。
「初めまして。調査員のレナン・ハースです。」
「同じく、調査員のカナン•ウェディンです。」
「この度は、誠に残念でございます。心からお悔やみ申し上げます。皆さんも未だ辛いこととは思いますが、事件の真相を解決するために、一度お話を聞きたいと思います。」
そういうと、童顔の男が立ち上がった。
「前に話したとおりだ!それ以上のことは何もない!早く保険金を渡してくれよ!あのことを蒸し返すなよ!俺らの気持ちも少しは考えろよ!」
そうか、俺らの気持ち………か。男の物言いもわかる。パーティーメンバーが死んで、その状況を思い出して、赤の他人に話してくださいって言われて、少なくとも良い気持ちになるやつはいない。
でも、それでもだ。俺たちは、感情的になってはいけない。
俺たちだけは感情的になってはいけない。
「私たちは、保険金を渡せるかどうか判断するために、あなたたちの話を聞く必要があると考えています。あなたたちがこれに応じなければ、保険金を渡すことはできません。」
「ですから、どうか協力していただきたい。」
そう言って俺は頭を下げる。
男も落ち着いたのだろう。それを見て、頭を上げて話し始める。
「今から奥の部屋で1人ずつお話を聞いていきます。呼ばれた人から部屋に入ってきてください。」
そう言って奥の部屋に入る。応接室の奥の部屋は、防音の結界が張ってある。そのため、外に声が漏れ出ることはない。今のうちだろう。カナンと話しておくか。
「とりあえず、説明はできたな。まずは、ソル・レターを呼んで話を聞くか。」
「了解です!でもなんか久しぶりっすね、この拒絶される感じ。気持ちはわかるっすけど、やっぱりちょっと辛いっすね。」
カナンは、優しいやつだ。他の人よりも共感性が高い。他人の感情や状況を自分ごとのように捉え、寄り添えるやつだ。
調査員に向いている力はある。ただ精神構造があまり適してはいないのだろう。だからこそ、矢面に立つのは俺だけでいい。
こいつは、このままでいいのだ。カナンのこの気持ちは、穢してはいけない、素晴らしいものなのだから。
「大丈夫だ。辛くなったら俺が前に立つ。だから気にするな。それに、あいつらも今は少し情緒が不安定なだけだ。」
そう言いながら、背中を優しく叩く。
「………大丈夫っす。俺ももう大人ですから。」
「こういう時は、素直に先輩の優しさを受け取っておくもんだよ。」
「じゃあいつもの言って欲しいです。」
「あぁ。カナン、期待してるぞ。」
「了解です!」
これでカナンは大丈夫だろう。
さて
早速尋問を開始しよう。
次回こそ尋問です。




