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「……死んだ、死んだ、また人が死んだ」
「あの家では子供が熱を出した」
「あの家では老人が寝込んでいる」
「今年の冬も、人が死ぬ……」
——誰ともなく、言葉を発する。
井戸端で、畑に向かう道の上で、不意に交わされる会話。
「……今度はイルマだ。イルマが死んだ」
「どうして死んだ? 薬を飲んでいただろう、ギルと違って」
「クラリスが毎日のように家に通ってた」
「それなのに、死んだ?」
「薬を飲んでたのに、死んだ?」
ひそひそ。ひそひそ。
他人を窺うように、他人から隠れるように。小さく、小さく。
「……最近多いよな。寝込むやつ」
「熱を出したって話、あっちの家でも聞いた」
「うちの子も、昨夜は咳が止まらなかった」
「どうして? どこの家も、あの子の薬を受け取っているのに」
「魔女の薬だって、受け取らなくなったやつはもういないのに」
ざわざわ。ひそひそ。声はだんだん大きくなる。
「次は誰だ? 誰が死ぬ?」
「神の思し召しだろう、仕方ない」
「神の思し召しにしても、重なりすぎだ」
「昨年までとはわけが違う、今は薬があるのに」
「……あの薬、本当に効いているのか?」
沈黙。
「……少なくとも、イルマには」
「薬で助かった奴もいる」
「なぜ、助かる奴と助からない奴がいる?」
「薬が助ける人でも選んでるのか?」
「まさか」
「だけど薬を作ってるのは、あの疫病から復活した子だ」
「……」
「俺の母さんは助からなかったのに」
「私の息子も助からなかったのに」
「……」
隠れるように言葉を交わす。
隠れたまま恐怖が広がっていく。
「あの子は、なぜ疫病から助かった?」
「イルマは、なぜ突然死んでしまった?」
「薬を飲んでいたのに?」
「薬が助けるヒトを選んでる?」
「それは本当に“薬”なのか?」
「それは本当に村のためのものなのか?」
「何が悪い? 何が原因だ?」
「この村にまた災厄をもたらすものならば——」
「燃やしてしまえ」




