4.村人たち
「……死んだ、死んだ、また人が死んだ」
「あの家では子供が熱を出した」
「あの家では老人が寝込んでいる」
「今年の冬も、人が死ぬ……」
——誰ともなく、言葉を発する。
井戸端で、畑に向かう道の上で、不意に交わされる会話。
「……今度はイルマだ。イルマが死んだ」
「どうして死んだ? 薬を飲んでいただろう、ギルと違って」
「クラリスが毎日のように家に通ってた」
「それなのに、死んだ?」
「薬を飲んでたのに、死んだ?」
ひそひそ。ひそひそ。
他人を窺うように、他人から隠れるように。小さく、小さく。
「……最近多いよな。寝込むやつ」
「熱を出したって話、あっちの家でも聞いた」
「うちの子も、昨夜は咳が止まらなかった」
「どうして? どこの家も、あの子の薬を受け取っているのに」
「魔女の薬だって、受け取らなくなったやつはもういないのに」
ざわざわ。ひそひそ。声はだんだん大きくなる。
「次は誰だ? 誰が死ぬ?」
「神の思し召しだろう、仕方ない」
「神の思し召しにしても、重なりすぎだ」
「昨年までとはわけが違う、今は薬があるのに」
「……あの薬、本当に効いているのか?」
沈黙。
「……少なくとも、イルマには」
「薬で助かった奴もいる」
「なぜ、助かる奴と助からない奴がいる?」
「薬が助ける人でも選んでるのか?」
「まさか」
「だけど薬を作ってるのは、あの疫病から復活した子だ」
「……」
「俺の母さんは助からなかったのに」
「私の息子も助からなかったのに」
「……」
隠れるように言葉を交わす。
隠れたまま恐怖が広がっていく。
「あの子は、なぜ疫病から助かった?」
「イルマは、なぜ突然死んでしまった?」
「薬を飲んでいたのに?」
「薬が助けるヒトを選んでる?」
「それは本当に“薬”なのか?」
「それは本当に村のためのものなのか?」
「何が悪い? 何が原因だ?」
「この村にまた災厄をもたらすものならば——」
「燃やしてしまえ」




