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——愛してる。愛してる。愛してる。
ひとけのない夜の荒地に、静かな囁きがこだました。
子守唄のように愛を唄いながら、魔女は祈りの絶えた大地を音もなく歩く。
白い腕には黒猫が眠るように抱かれ、赤い唇は微笑みを湛えている。
黒いドレスが風を起こすたび、小麦の穂は更に細く、枯れた地は更にひび割れていくように見えた。
実らぬ種を植え続ける彼らは、さらに枯れていく地に何を思うのだろう。
それでもなお不毛な行為を続けるのか。それすらも愛おしい、愛すべき人の営み。
軽やかな足取りで森の奥地までやってきた彼女は、ふと夜空を見上げる。
木々の隙間から覗く月に、腕の中の黒猫もまたピクリと顔を上げた。
「——あら、また舞台が動き出したみたいね」
魔女が呟く。
まばゆい月光が石畳を染める紅い血を映し出した。
自分以外の誰かのために、ひたすら願い続けた少女の姿。
健気に祈りを捧げる様は、痛ましく、愚かしく——だからこそ、愛おしい。
魔女は聖母のような微笑みを浮かべると、穏やかな口調のまま、ぞくりとする冷たさを帯びた声で宣った。
「それでもなお血を捧げるというのなら、いいわ、力を貸しましょう。今度こそ、自分のために踊れるように」
瞬間、夜の森にごう、と強い風が吹く。
黒猫の尾が魔女の腕の中で風に揺れた。
「——さあ、踊ってらっしゃい」
風に森がざわめく。
舞う葉が荒地に落ちる頃、一人と一匹の影はすでにそこにはなかった。




