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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
終章 愛

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閑話 継続的な危機

 二日、時間をさかのぼる。

***


 熊本県についたのは、

基地を出て三時間後だった。

 自衛隊と各都道府県警が、

特捜隊のために基地から熊本県の三ツ島海水浴場までの高速道路を通行止めにし。

特殊車両だけが走れる状態にしてくれていた。

 さらに、ニカイドウの運転テクニックは恐ろしい程だった。

出発時の発言通り、

高速道路をフルアクセルで走り抜け。

ノーブレーキ、減速なし。

アクセルべた踏みの狂った走りで完走した。

 日本の高速道路は、

米国のような直線的なものじゃない。

曲がりくねった高速道路を、フルアクセルで走り抜けたのだ。

 一般道やどうしても減速が必要な箇所以外は、

時速三百キロで駆け抜けたので所要時間がかなり減った。

 目的地に到着して、サワダが放った第一声は。


「嘘、……だろ?」


 F1のレースすらかわいく見える。

違法な公道の危険レースでも、

ここまで命知らずはいない。

 後部座席に乗っていた一班の一同は、

気絶したミズノが羨ましく思えるほどの時間を体験した。

到着してすぐ、

運転手のニカイドウとミズノを除く全員が地面に倒れ混んで動けなかった。


「いやー。

高速道路を独占して走れるなんて。

最高ですね!

 帰りは普通に走らないといけないのが、

残念です」


 ツヤツヤした顔でニカイドウが言う。

特捜隊員は特殊部隊として訓練を受けたので、

吐き戻す者はいなかったが。

それでも、青い顔でうずくまっている。

 あの走りを見て知っている自衛隊たちが、

同じように青い顔で彼らに敬礼して立ち去る。


「あの……。

想定の時間よりはるかに早く到着されましたね?」


 防衛軍、防衛隊の隊員がおずおずと言う。


「早い方がいいでしょう?

高速道路を封鎖してる時間が短くて済みますし」


 けろっとした顔でニカイドウは受け答えした。

防衛隊員は、困惑した顔のまま説明を続ける。


「……他の方はそのままで良いので、

お聞きください。

 先ほど異世界人たちは捕らえた防衛隊員を一人、

殺害しました。

要求は変わらず、

『特捜隊を彼らの前に連れてくること』」


 何故、特捜隊を欲しているのか。

誰も彼も、全く予想がつかない。


「変わらず目的は不明です。

 新しい情報は、

この異世界人は『人間に

取り憑いて身体の自由を奪う』様です。

 防衛隊はそれで大敗を喫してしまいました。

戦闘中、隊員の一人が身体を奪われて、

不意打ちを食らったんです」


 獅子身中の虫。

裏切り者ではなく、

身体を奪われて暴れられてはどうしようもない。

 だが、同時に疑問も浮かぶ。


「それ、前に特捜隊が対峙したときには、

しなかった行動ですね」


 ニカイドウはそう言って腕を組んだ。


「えぇ。

おっしゃる通り。

 なんと言うか、

前回の情報と今回を比べると。

前回は『いたぶり、なぶるような』戦い方。

今回は『効率的に、最短、最小限で済ませる』戦い方でした。

 本当に、ヤツらは何がしたいのか……」


 考えられることとしては、復讐。

特捜隊、もしくは特捜隊員の誰かに恨みがあって、

その復讐を目的にしている。

 だが、それなら前回の戦い同様、

関東で騒ぎを起こせばいい。

それこそ、

囮になるような情報を流せば特捜隊が出てきやすい。

 それなのに、

ここは遠く九州の熊本県の端。

三ツ島海水浴場だ。


「皆、立てますか?

 ……おや?

ミズノも気がつきましたね」


 ミズノは包帯で応急処置された顔を押さえながら立ち上がる。

もごもごなにか言おうとしているが、

包帯で聞き取れない。

他の四人も起き上がって服と装備をあらためる。


「冬で良かった。

近隣の住民は既に避難済みです。

一班各位は武装して、

異世界人が指定した地点へ向かいましょう」


 ミズノは自分の口元の包帯を引っ張って声を出した。


「私のディメンション・エックスは!?」

「ありません。

あと、さっきリーダーをサワダさんに変更しました。

ミズノ、サワダさんの指示に従ってください」


 ミズノは目を見開いて、

ニカイドウとサワダを交互に見る。


「文句も何も受け付けません。

本作戦中の貴方の無断の発言を許可しませんので、

次に無断で何か話したらまた殴りますよ」


 ミズノは青い顔で口をつぐんだ。

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