閑話 続けるようなら
久しぶりの特捜隊一班の全員集合。
皆、顔つきが変わって暗い。
セキグチはほぼ化粧無し。
シミやシワが目に見える。
いつかと比べるとかなり老い、疲れた顔つきだ。
サワダはくっきり眉間にシワが刻まれ、
ほほが痩けてかなりつらそうだ。
シマザキはすっかり痩せてしまい、
影のあるイケメンになってしまった。
オオゾノすら疲れた顔つきで、うつむいている。
そして、
ミズノの顔はまるっきり別人と言っていいほど変わっている。
今までの自信満々で、
覇気とやる気に溢れた好青年はもういない。
暗くよどんだ瞳、陰気と恨みの念がにじみ出ており、
万人が近寄りたくないといっても過言じゃない。
「集合をかけたのは他でもない。
この前、逃がした異世界人の件です」
全員が一様に顔を伏せる。
機動隊員が多数亡くなり。
謎の『歌』で間一髪、助かった件だ。
「昨日、熊本県であの異世界人と同じ個体とおぼしきモノの
目撃証言がありました。
熊本県警から山口県の防衛軍防衛隊に連絡があり、
防衛隊が駆けつけたのですが全滅です」
防衛隊は全員がディメンション・エックスを装着している。
『穴』の防衛の最前線を担う部隊だ。
特捜隊員はオールラウンド。
防衛隊員はディフェンス。
そう言う住み分けがされている。
ただ、戦力的には防衛隊が圧倒的に高い。
装備も隊員の能力も特捜隊員より上だ。
その防衛隊が全滅。
一班全員に、静かに衝撃が走る。
「先日の山口県山陽小野田市の事件でも、
防衛隊は異世界人に歯が立たず。
今回の全滅についても、
防衛軍全体にかなりのインパクトがありました」
ニカイドウキャップは、
静かに話を続ける。
「そして、防衛隊の数名が異世界人に捕まり、
捕虜にされています。
異世界人の要求は、『特捜隊を出せ』でした」
シマザキは生唾を飲んだ。
「異世界人の目的は不明です」
「いいえ、
異世界人の目的はヒロセです」
ミズノは突然、ニカイドウキャップを遮って話し出す。
ミズノは資料を円卓の真ん中に投げて広げた。
「本部のデータから手に入れた情報です。
『ヒロセ マコトは異世界人の手先である』」
次の瞬間、
ニカイドウはいつの間にかミズノのそばに立ち、
その顔面に拳をめり込ませてその頭を床にめり込ませた。
ニカイドウは皆が目を見開いているのを余所目に、
服の汚れを払って話し出す。
「情報を曲解して、
ヒロセさんをおとしめるとは。
そもそも私は発言を許可してません。
前歯はまだあるから、これで許します」
セキグチが真っ青な顔で自分の身体を抱き締めた。
「今の話に補足しましょう。
ヒロセ マコトさんは、
『ゼータ・ディアスタシのレーダーに設定されている』可能性があります」
ニカイドウは床にのびているミズノを蹴り飛ばして、
壁際に片付けた。
「ゼータ・ディアスタシは、
ヒロセさんを『この世界の戦力の上位』と定めて。
ヒロセさんが対応できない、
またはヒロセさんが気を失ったり戦えない状態になると、
ゼータ・ディアスタシがやってくる」
ニカイドウはゆっくり自分の席に戻る。
「逆にヒロセさんが対応できるものは、
この世界の戦力で対応可能として、
ゼータ・ディアスタシは現れない。
本部はヒロセさんがレーダー兼アラート、
だと推測しています。
その上、『ヒロセさんはその自覚がない』」
ミズノは壁際で痙攣している。
その顔は血まみれだ。
「もし、ヒロセさんに自覚があれば、
防衛軍をこんなに簡単に辞める訳ありませんからね」
その通りだと皆頷く。
「そう言えば、
ゼータ・ディアスタシが来るときはヒロセは気を失ってたり、
怪我して救急搬送されたりしてたな」
サワダが小声でそう呟いた。
「つまり、ヒロセさんの強さは異世界人、
ゼータ・ディアスタシすら認めるものだった、
と言う情報です。
ミズノはそれを曲解して、
ヒロセさんをなんとかおとしめたかったんでしょうね。
何の意味もないことですが。
本部はこれを受けて、
なんとかヒロセさんを防衛軍に引き戻せないか手を尽くしてるようです」
皆一様にため息をついた。
「今からミズノのリーダーの任を解き。
サワダさん、
貴方を一班のリーダーに任命します。
皆をつれて熊本県へ急ぎましょう。
三班は誰もいませんし、
二班はコンソールの前から動かせる人数じゃないので、
一班全員で特殊車両に乗っていきましょう。
運転は私がします」
関東から九州熊本県まで、
高速道路を使っても十時間くらいかかる。
「特殊車両は三百キロ出るそうなので、
フルアクセルなら二時間くらいで着けますよ」
え?
「運転は自信がありますので、
皆ヘルメットとマウスピースつけてベルトをしっかりしめてくださいね」
ニカイドウキャップはそう言って笑う。




