第9話 今起きている異変 ~捌~
ヒロセは瓦礫の中で目を開けた。
だが、真っ暗で何も見えない。
近くから戦闘音が聞こえてくる。
そんなに遠くには飛ばされてないようだ。
「怪我はないか?
相棒」
オレンジ色で唐草模様の巾着をひっくり返したみたいな、
不思議な見た目の生き物が現れてそう言った。
彼の姿はヒロセの瞳の中にだけ映っていて、
彼の声もヒロセ以外には聞こえない。
ヒロセは自分の身体を確認した。
口の中がジャリジャリするのは、
攻撃を受けたとき奥歯の発信器を噛み砕いてしまったたからだろう。
軽度の打撲はあるが、
ダメージは受け身でほとんど受け流している。
壁が割れて床に落ちた時の衝撃が受けきれず、
一瞬気を失っただけだ。
「あぁ。
痛いが、動けるよ」
「じゃぁ、それ以上大ケガする前に、
始めようか」
応、とヒロセはその小さな相棒に応えた。
「偽装展開」
ヒロセはそう呟いた。
すると、ヒロセのとなりにヒロセが現れた。
現れたヒロセは気を失った状態の偽物だ。
ヒロセのアリバイ作りに使うデコイである。
「瓦礫から抜け出せるか?」
「この程度なら。
見えないけど、問題ないよ」
ヒロセはデコイを残して瓦礫から静かに抜け出した。
戦闘音とわずかな光が、
壁の穴の向こうからこちらに届いている。
「よし……。
剛力招来、超力招来!
変っ身っ!」
ヒロセは両手を腰にあて、
身体を捻って両手を大きく円に振る。
そして、腕を胸の前でクロスした。
「ゼぇット!」
ヒロセはそう叫ぶと、
巾着袋が笑って応える。
「承認完了!
チェンジ、ゼータフォーム!」
巾着袋がそう言うと、
ヒロセは胸の前の両腕を平行に揃えてアルファベットの『Z』を形作る。
そして、ヒロセの身体が輝いて作り替えられた。
「くそっ!」
一方、ミズノはピエロたちに徐々に押されており、
かなり劣勢だ。
彼のスーツに何度か攻撃を食らった跡がある。
「ほらほら!」
ピエロたちの連携が冴え渡る。
ミズノのスーツにナイフが叩きつけられ、
火花が飛び散る。
「ぐぁっ!」
ピエロたちをなんとか押し返し、
肩で息をするミズノ。
「リーダー!」
「クソッ!
応援はまだか?!」
シマザキとサワダが援護を試みるが、
ピエロに邪魔されて上手く行かない。
「そこまでだ!」
そこに突然現れた人影が、
ピエロたちをなぎ倒していく。
「貴方は!」
ミズノはその人影を見て安堵した。
「剛力招来!
超力招来!
次元の守護者、
ゼータ・ディアスタシ!
見参!」
筋肉がむき出しのような、
プロテクターのような姿。
デザインはヨーロッパの甲冑と仮面のよう。
ゼータ・ディアスタシと名乗った男は、
ピエロたちの前に立ち塞がり、
ミズノたちを庇った。
「来てくれたのか、ゼータ!」
「遅れてすまない!
ここからは、私に任せろ!
行くぞ、ピエロども!」
ヒーローのそれとは、
と言う様にピエロたちを相手取り翻弄するゼータ。
あっという間にピエロが劣勢になる。
ピエロのリーダーらしき個体が歯噛みする。
「おのれ、ゼータ!
貴様は我々同様、
この次元由来の者ではない!
なのに、何故人間をかばい、助ける!?」
ゼータは鼻で笑った。
「愚かな。
私は次元の守護者。
次元を越えた争いを納めるためにこの次元に来た。
次元を越えて侵略行為をすると、
たくさんの世界が破滅する可能性が極めて高い!
それを防ぐために、私はここに来た!
そして、何より、
弱きを助け、悪しきをくじく。
これが私の『正義』だからだ!」
ゼータはピエロに向かって指を指した。
「さぁ、お仕置きの時間だ!」




