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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
終章 愛

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第77話 家族の愛

 九州は、鹿児島県。

市電の鴨池駅から、歩いて十分くらい。

閑静な住宅街の中にある古い邸宅。

そこに、お婆様は住んでいる。

 昔からある古い家だが、

ちょくちょく手を入れており綺麗な外観だ。

インターホンも、ちゃんとカメラ付き、マイク付き。

俺はインターホンを押して、

返事を待つ。


「はーい。

どちら様でしょうか?」


 通いの家政婦さんがいる。

彼女のことは幼い頃から知っているので、

俺は頭をかきながら。


「あ。

ただいま……です」

「あー!

マコちゃん!

ちょっと待ってね!

 奥様!

奥様ぁー!

マコちゃん!」


 インターホンの音声はそこで途切れた。

俺はとりあえず、玄関が開くのを待つ。


「ヒロセ君。

細かいかも知れないけど、

ここで君を『ヒロセ君』って呼ぶと、

ややこしいかな?

他の人も皆、『ヒロセさん』だから」

「ゼータの声は俺にしか聞こえないし、

そのままで問題ないよ。

 よっぽど緊急で他の人に見えるようになるときは、

相棒でいいだろ?」

「オーケー、相棒!」


 ゼータはそう言って小さな親指を立てた。

お婆様の家は昔からある古い日本家屋なので、

かなり広い。

しばらく待つしかないか。

 ムラマツさんは、

仲間になってくれることになった。

ただ、お腹の怪我が酷いため、

しばらくは入院生活だ。

 ゼータ・ディアスタシのダメージの肩代わり機能を

『越えた分のダメージ』は本体に反映される。

あの腹部の大穴のほとんどは肩代わりされたが、

それでも重傷だったのでしばらくは絶対安静。

 そして、ムラマツさんの父親の事件について、

テレビ局も新聞社も揃って平謝りした。

例の生放送は、

世界中に大きな波紋が広がり。

『日本には本当のマスコミはいない』とすら、

揶揄される始末。

 検察審査会は、

事件の再調査を決定。

総理大臣すら、この件に言及したので大事になった。


「父さんが冤罪だったかどうかは、

一旦おいておいて。

事件の真相がわかるなら、俺は嬉しいですよ」


 ムラマツさんは病室で俺にそう言っていた。


「ゼータ・ディアスタシは、

どこにでもいてどこにもいない。

困ったときに現れるヒーロー」


 ムラマツさんの突然の変身。

目撃者は多数。

公開されていないが、

ショッピングモールの監視カメラにも映像として残ってるはずだ。

そこから広がった噂は、

今日本中の話題の的だ。


「異世界人の侵略があったときに、

近くにいる勇敢な人の所に『声』が聞こえる。

『声』に応えると、

ゼータ・ディアスタシに変身して戦えるようになる」


 ムラマツさんとゼータの情報誘導も相まって、

『ゼータの秘密』は上手く着地したと思っている。

防衛軍や政府からそう言う公式見解は公開されていないが、

噂を黙認している。

俺たちも世間も、

防衛軍は噂と同じ見解をしていると推測している。


「ムラマツさん。

『本物のガンバマン』って、

今ネットで話題の的だよ。

 当時テレビでガンバマンを演じていた俳優さんも、

挨拶に彼の病室まで行った、って噂だよ」

「本当なら、羨ましいな。

俳優さんは、

モリ ヒロシさんって方なんだけど」


 なお、何故か俺も『超人』と言う新たなあだ名と共に、

ネットで話題にされている。

ショッピングモールで異世界人の軍勢を相手に戦ったから、

みたいだが。

 その上、俺の株が何故かあがっているらしい。

亡くなったアサギキャップと俺がいたから、

防衛軍は侵略してきた異世界人を撃退できていた。

二人を失った防衛軍は、ただの金食い虫。

そう言う意見がかなり強くなっている。

 そして。


「特捜隊が廃止、か」

「残念だよね」

「本当に残念だ」


 最近のニュースの中でも一番驚いた。

皆、今どうしてるのかな。


「マコト!

あぁ、マコトだ!

おかえいなっせぇ」


 そう言って前庭を軽快に走って来て、

玄関を開けたのはお婆様だった。


「久しかぶいじゃっどねぇ。

ケガんしちょらんけ?

どっか痛かとこはなかね?

痩せてしもて、

飯はちゃんと食うちょっけ?

 さぁさぁ、はよ上がいやい、

寒かったろがねぇ。

コタツにミカンば、よーけ用意しちょっでよぉ。

今日はなんもせんでよか。

ゆっくい、ゆっくいしちょきやいねぇ」


 優しいなまりに、癒される。

お婆様は俺と血の繋がりはないが、

本物の孫のように可愛がってくれる。

 背筋はしゃんと延び、

きびきびと俺の手を引いて歩くお婆様は七十六歳。

もこもこのはんてんを羽織って、

寒い中玄関まで迎えに来てくれた。

 家に上がると、

家政婦のヤマシタさんがお盆にいっぱい食べ物を持って来た。

俺とお婆様の後をついてきて、

コタツに座った俺の目の前にその食べ物を全部おく。


「ヤマシタさん。

お祝いかなにか?」

「お祝いですよ!

マコちゃんが無事に帰ってきたんですから!

夕飯も豪勢に行きますよ!」


 どうやら、

俺のまわりには俺を太らせたい人ばかりようだ。

肩の荷も何もかもおりて、

ただのマコトになった俺は苦笑いした。

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