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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
本編三部 「遅い」

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第73話 この人こそ、遅れても必ず来てくれる

●ムラマツ サイド●


「ははははは!

素晴らしい!」


 片腕の異世界人は楽しげに笑う。

アサギさんに切り落とされた腕から出血はしてないようだ。

回復力がすごい。


「えっと……、えっと……。

『プラスマッシュ』で殴っても、ダメ。

切り落とされた腕がやっとダメージになってる」


 俺の頭の上で、

オレンジ色の唐草模様が揺らめく。

ゼータ、と名乗る彼は『次元の守護者』だ。


「ごめんね、ムラマツさん。

私、ガンバマンのことあんまり知らなくて。

なんの助言もできない」

「いや、いいんだ。

助けてくれてありがとう」


 俺はゼータへお礼を言う。

突然現れた彼に身体を貸して変身した。

変身したのは、ゼータ・ディアスタシだったが。

何故か今俺はガンバマンだ。


「なんなんだろ、この装備。

本当に私はこんな風に作ってないんだけど。

 制作者の手を離れるにしても、

派手に離れすぎだよ」


 ゼータはそうぼやく。

なんのことか俺にはわからないが、

心底不思議そうにぼやいている。


「ぬん!」


 槍が突き出される。

俺はその動きがフェイクだと見抜いているので、

異世界人から派手に距離をとる。


「強敵と戦い片腕になり、

さらに強敵が現れて。

なんと素晴らしい日か!」


 片腕の異世界人はとても嬉しそうだ。


「平和を! 調和を!

エックスに!」


 突然聞こえてきた叫び声。

俺は声のした方を見る。

すると、ディメンションエックスを装着した人が、

こちらに向かって来た。

銃を構えている。


「先輩から離れるッス!」


 あの声はハヤタ?

エックスはこちらに早足で近づきながら銃を撃つ。

だが、片腕の異世界人は槍でその弾を易々と弾いた。

俺はその隙をついて異世界人を攻める。


「ははははは!

そちらの戦う者も、力を得たか!

いいぞ!

まとめて来い!」


 それを見た防衛隊の人が声を上げた。


「なんで装備できた!?

ディメンションエックスは、

登録者しか装備できないんだぞ!」

「なんか、おじいさんが助けてくれたッス!」

「アサギさんは退役してるはずだ!

なんで、それなのになんで!」


 どうやら、

ハヤタの装備も俺の装備同様イレギュラーらしい。

それより気になることを俺がハヤタに聞く。


「なんでお前は銃が撃てるの!?」

「アクション女優は、

海外で実弾訓練を欠かさないッス!」

「ジョンかよ!?」


 俺が思わずツッコミをいれた。

ハヤタの射撃はかなりの腕前だ。

撃った弾は確実に当たるコースだが、

片腕の異世界人は槍で打ち落とす。


「早いし威力はあるが、

直線的な攻撃だな。

面白い武器だ。

ドンドンと音が鳴るのがいい」


 そう言って片腕の異世界人は笑う。

俺も隙をついて攻撃するが、

パンチが当たる瞬間、

その位置の筋肉をバンプアップさせて内圧で弾き返される。


「『プラスマッシュ』って、

プラズマ砲のゼロ距離発射でしょ?

それを弾く筋肉って、何でできてんの?」


 ゼータはそう言って頭を抱えている。

この片腕の異世界人だけ、

他の異世界人より圧倒的に強い。

俺も打つ手がなくなってきてジリ貧だ。

 新しいシリーズのガンバマンなら、

いい武器がたくさんある。

しかし、初代のガンバマンは技が二つしかない。

『プラスマッシュ』と『テナサス』。

 しかも、『テナサス』は狂暴化した怪人のとどめをさすためのもので、

ガンバマンは使うとエネルギーを全て使い果たして人間に戻る。

 恐らく、

この装備は俺の記憶か何かを元にガンバマンを作っている。

それならきっと、

『テナサス』も忠実に再現しているはずだ。


「敵が多すぎるんだ。

コイツだけなら、

『テナサス』が使えるのに」


 ここと向こうにも『穴』がある。

そこから次々と敵が沸き上がってくる。


「先輩!

『テナサス』はダメッス!

今、変身が解けたら、

袋叩きにされるッス!」

「現実だけど、

なんかハヤタの方が一言多くない?」


 一言多いのはガンバマンの設定だ。

ハヤタのディメンションエックスでも、

槍の距離の外から銃撃するのが精一杯。


「わかった!

敵がこの片腕だけになればいいんでしょ?

なら、もうすぐ来るよ!」


 ゼータはそう叫ぶ。

来る? 何が?

 突然、周囲を囲んでいた異世界人たちが吹き飛ぶ。

その真ん中にいるのは、一人の男性。


「お待たせ!

向こうの『穴』は機動隊と追加の防衛隊で封鎖した!」


 彼はそう言って笑う。

屈託のない笑顔で。

その上、無傷で笑う。


「もしかしなくても、

彼がヒロセ マコトさん?」

「うん!

本物のゼータ・ディアスタシだよ。

 ちなみに、

ムラマツさんのガンバマンと違って、

ヒロセ君の装備は『顔バレ防止』の機能しかないから。

戦力は生身のヒロセ君のものだよ」

「本物のヒーローかよ」


 俺は思わずそう言って笑う。

だが、今ならこの目の前の片腕の異世界人に全部つぎ込める。

 周りの異世界人はヒロセさんが蹴散らしている。

生身に戻った俺を狙うやつがいても、

ハヤタと逃げればなんとかなる。


「むしろ、ハヤタさんとアサギさんを連れて逃げてください。

コイツ倒してムラマツさんが元に戻ったら、

私もヒロセ君のところに戻るから。

そこからは、本物のゼータ・ディアスタシの出番だ」


 なるほど、それはいい。

俺はガンバマンの決まりポーズを取る。

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