第69話 手遅れになる前に
●ムラマツ サイド●
俺は何とか四人目を運びきった。
まだ十二人ほど転がっている。
そして、アサギさんはまだ戦っている。
パッと見優勢だが、時間がかかりすぎている。
アサギさんの息が上がってきた。
「なかなか……っ、タフですねぇ」
「はははは!
見ろ!」
異世界人は始めに傷つけられた腕を伸ばして見せる。
「この程度の傷なら、
この通り!
治癒力で抑えられるわ!
切り落とす位しなければ、
我にとって手傷にならぬ!」
「……ご親切にどうも」
周囲にはまだたくさんの異世界人たちがいる。
このままでは、不味い。
「……本部。
応援を……。
アサギさんはまた戦えてるが、
限界が近い」
最初に助けた防衛隊員が、
無線機に向かって話している。
「……もう一つ『穴』?
そちらは?
ヒロセ マコトが?
……特捜隊が」
ヒロセ。
俺も聞いたことがある。
『不死身の男』、『特捜隊の最終兵器』。
あまりに生身が強すぎて、
対異次元武装ディメンション・エックスを装着すると、
『逆に弱くなる』特例。
「あっちで戦ってるのは、
ヒロセ マコト。
こっちではアサギさん。
……俺たちは実践不足とだと言いたいのか?
特捜隊どもっ!」
防衛隊はそう叫んでいた。
俺はなんとかこの周囲の異世界人たちを通り抜けて、
ヒロセさんをここへ連れてこれないかと考える。
「そこ!」
アサギさんが勝負をかけた。
アサギさんさ突き出された槍を打ち落とし、
少し異世界人が下を向いた瞬間に距離を詰める。
異世界人の身体を台にして飛び上がり、
全体重をかけて首を狙った一撃を繰り出した。
「見事!」
異世界人はそう言って、
突き出して力んだはずの右腕を槍から離した。
そして、片手で首をかばう。
「っ!?」
俺すら予想外の異世界人の反応だった。
アサギさんは鉄片で異世界人の丸太のような腕を切り落とした。
だが、右腕を犠牲にして、異世界人は首を守りきった。
そして、異世界人はもう片方の腕も槍を手放し、
アサギさんを殴って吹き飛ばした。
「アサギさん!」
俺は叫んだ。
遠くに飛ばされたアサギさんは玉のように床に転がって、
受け身をとったように見える。
だが、そのまま床に倒れて動かなくなった。
不味い!
俺はアサギさんへ駆け寄ろうとしたが、
周囲の異世界人たちが槍を俺に向けた。
俺はさすがに立ち止まる。
アサギさんは動かない。
「惜しむらくは、
お前がちゃんとした武具を装備していれば、
あの一撃は我の命に届いただろう。
それでも、この腕を取ったお前は強い。
さぁ、アサギ エイイチロウよ。
その首もらい受けよう」
異世界人はそう言って落ちた自分の腕を拾い、
他の仲間に投げて持たせる。
そして、アサギさんに向かって歩き出した。
「んん?!」
モールの商品棚の影から人が飛び出して、
アサギさんの上半身を背中から抱くように抱える。
「ハヤタ!?
なんでここにいるんだよ!
逃げろ!」
ハヤタはアサギさんをそのまま抱えて、
異世界人たちから逃げようとする。
「本当に素晴らしい!
この世界は戦う者が多い!」
異世界人は喜んでその後を追う。
ダメだ!
なんとかしなければ!




