第66話 遅延行為
お昼前にゼータのレーダーに反応があった。
「まだ遠いけど、
反応はこっちに近づいてる。
今日のショーもムラマツさんが出るのかな」
「よし。
じゃぁ、早めに昼を食べておかないと。
二回公演だっけ?
十四時と、十六時か。
ショーが二十五分。
グリーティングが一人約一分」
「グリーティングは人が並ぶくらい人気だよね」
「三十分では済まないだろうね。
ほら、パンフレットに、
グリーティングは整理券を配るって書いてある。
ゼータは何が食べたい?」
「ショッピングモールのレストランって、
どれも美味しそうで悩むよね」
異世界人ながらに、
こちらでの生活が長くなってすっかり馴染んでいるゼータ。
ふと、ゼータが険しい顔をする。
「ヒロセ君、
この世界のものじゃない反応があるよ」
俺は顔色を変えないよう心がけて、
ゼータの話を聞く。
「ショッピングモール内かな。
弱い反応が出たり消えたりする。
昨日はなかった反応だと思うけど、
単純に反応が弱すぎて気付けなかっただけかもしれない」
ショッピングモールは人でいっぱいだ。
こんなところで騒ぎが起きると、
パニックになるのは明白。
「何もないといいけど、
気になるな。
ゼータ、大まかな位置を教えてくれ」
ショッピングモールの端の所へ向かう。
特に何もない。
「……これ、歪み反応だ!
今、ゲートが開きそう!」
マズい。
ショッピングモールは人目も監視カメラも多い。
変身はできない。
「火事だ!
逃げろ!」
俺はそう叫んで火災報知器のボタンを殴った。
辺りに警報が鳴り響き、人々は逃げ出す。
次の瞬間、さっきいた辺りがひび割れて穴が開いた。
穴から槍や剣で武装した異世界人たちが溢れてくる。
どう見ても友好的じゃない。
敵意むき出しだ。
鎧武者のようなすがたの軍団。
目につく飛び道具は弓だけか。
「なら、やれる!」
俺はその集団に向かって走る。
突き出された槍をいなして、掴む。
掴んだ槍を相手の身体ごと持ち上げ、
敵を振り落として槍を奪った。
「俺はここだ!
かかってこい!」
俺は出せるだけ大声を出して、
穴の前に立ちふさがる。
生身のまま周囲の人たちが逃げる時間を稼ぐ。
人がいなくなったら、この場から逃げて変身だ。
槍で飛んできた矢の雨をはたき落とし、
敵の喉をめがけて真っ直ぐ突く。
弓兵を半分に減らしたところで、
異世界人は俺を囲むように陣形を取り出した。
「行動が的確だ。
司令塔がいる。
どいつだ?」
俺は穴めがけて槍を投げた。
穴に吸い込まれた槍を見送り、
両手を構える。
「装備が戦国時代のものみたいだな。
エネルギー弾とかじゃないなら、
このままやれる!」
俺は飛んできた矢を素手でいなして、敵との距離を詰める。
敵が明確に驚き慌て出した。
俺は構わず突き進み、敵をなぎ倒す。
「ヒロセ君!
コイツら、ヤバい!
この世界で言う『戦闘民族』だ!
君が強ければ強いほど、
穴を通ってこっちに来るぞ!」
それはさすがに、マズいな。
「こんなわんこそばはお断りだ!」




