閑話 続いてしまう
ただでさえ人がいない基地の、
誰も通らない廊下でミズノはハマダを追い詰める。
その顔は暗い笑みを浮かべて、
不気味で恐ろしい。
「しかしっ!」
「しかしも、何もないんだよ」
ミズノは諭すようにそう言って、
ハマダの肩に手を置いた。
「今の俺たちは、どうだ?
こんな、毎日、毎日、モニタを眺めて。
朝も昼も夜もなく。
うんざりだ。
ハマダ、君もそうだろう?」
淡々と、
しかし溶岩のようなドロリとした熱を込めた声。
ハマダは冷や汗が止まらない。
「しかし、次元の歪みの反応があった場所は繁華街で、
大きなショッピングモールがある……」
「んー、んー、んー。
そうじゃないよな?
『弱い反応があった』、
『それは弱いため、詳細な場所は特定できない』。
そうだね?」
ミズノは笑う。
ハマダは恐怖で声が裏返る。
「嘘をっ……っ!?」
ミズノはハマダの口を塞ぐ。
「嘘じゃないよ。
実際に反応は弱い。
場所も確度は低いだろ?
それに、嘘なんて今更じゃないか」
ハマダは恐怖で膝からぐずれそうになった。
だが、ミズノはハマダの胸ぐらを掴んで持ち上げ、
それを許さない。
「もう引き返せない。
特捜隊を元に戻すしかないんだ。
そのために、
今回の報告で県警に失敗をしてもらう」
淡々と、
薬の用法用量を読み上げるかのようにミズノは言う。
「特捜隊の必要性を理解させるんだ……!
ディメンション・エックスと、
特捜隊員たちがいて初めて平和を保てると……!
再認識させる……!」
ハマダは自分の出世のため、
ミズノに協力した。
セキグチとはミズノの連絡を仲介してもらう時に会うだけで、
肉体関係はなかった。
だが、どこからか漏れた噂が広がっている。
ヒロセ マコトをおとしめて、防衛軍から追い出した三人。
今ではそれに盛大な尾ひれがついていて。
しかも、それが街中に知れ渡り。
ミズノ、ハマダ、セキグチの三人は村八分とまでは行かないが、
とても冷遇されている。
曰く、真剣に正義を語る男を追い出した、
自己顕示欲の化け物。
ぎまんと欲望の権化。
三人を明確に敵視する街の人々。
「ハマダ、お前は良いのか?
このままで、良いと思っているのか?」
ハマダは現状をよしとはしていない。
だが、政争をするとしても、
これは限度を超えている。
嘘を報告して、もし被害が出たら?
悪人になりきれないハマダに、
それは重い重い決断。
「でも……」
「でもも、へちまもないんだよ。
『命令』、だ。
やれ」
ついていく男を間違えた。
ハマダの敗因は、ただそれ一つ。
「山口県警へ連絡しろ。
『弱い次元の歪みを感知した』、
『警戒されたし』。
ほら、何も間違えちゃいない。
そうだ!
ハマダは昨日の朝から基地にいるんだろ?
今から仮眠を取ってこいよ。
県警への連絡はその後にしろ」
ミズノは笑う。
ハマダは今更自分のやったことを後悔し始めた。




