第60話 紅
●ヒロセ サイド●
ウチムラ君の部屋に三人。
頭を付き合わせて、
ゼータ・ディアスタシの残っているデータを見る。
ちなみに、俺はゼータ・ディアスタシを装着したままだ。
情報のすり合わせは終わり。
ゼータが今必死でデータを解析している。
「ウチムラ、
こんなことしてたの?」
「うん。
ヒロセさん、
これ俺との記憶しかないんです?」
「どうやら、
ウチムラ君とミアさんとで戻るプロセスが違ったみたいだ」
ゼータはまだ解析にかかりきりだ。
仕方がないので、俺が説明する。
「こう言うのは、
ゼータが詳しいんだ。
俺の説明だと抜けてる所があるかも知れないけど、
とりあえず話すよ。
ミアさんは深夜零時に、
タイムリープの形で朝に戻ってたみたい。
時間軸は同じで、
ミアさんの意識だけが朝に戻る感じ。
でも、ウチムラ君は世界がまるごと巻き戻し。
ループでも、リープでもなくて、
その時間軸を全部巻き戻してたらしい。
だから、俺も不完全だけど記憶が残ってて。
それをフックにして、助けに行けた」
記憶はどうなっていたかわかってないが、
このお陰で何とかなった。
「今のこれは俺のやつっぽいけど。
上手く説明できないけど」
「そんな感じする。
私も説明できないけど」
「あのツタを取り込んだのが、
やっぱり何かあったんだと思うよ」
ゼータが口を挟んだ。
「解析は終わったか?
相棒」
「もちろん、相棒。
みんなの話を信じるよ
ただ、今現在の状態については、
推測がほとんどだけどね」
ゼータは少し疲れた様子で話す。
「とりあえず、
ミアさんの方に行って身体を確認させてほしい。
健康体なら良いんたけど、
何か後遺症と言うかそう言うのが残ってないか見ないと」
俺はゼータ・ディアスタシを解除した。
ゼータがミアさんの身体に移動する。
「……よし。
ミアさんの身体に問題はないよ」
ウチムラさんがホッと胸を撫で下ろした。
「恐らく、全体の時間が巻き戻ったから、
ミアさんの身体の異常が戻ってるんだよ」
「どういうことだ?
買い摘まんで教えてくれ」
俺はゼータにそう言った。
「ウチムラさんの方の敵は、
『ウチムラさんの行動で生まれる可能性』を欲しがっていた。
食べるのかわからないけど、
可能性をエネルギーにしてたと推測してる。
だから、
ウチムラさんがミアさんの死を防ごうとすればするほど、
思うつぼだった」
ウチムラが、
あがけばあがくほどエネルギーを得る。
時間が巻き戻っているので、
第三者が気付かない。
「ミアさんの敵は、
『ミアさんの意識か記憶を奪おう』としていた。
ウチムラさんを助けるために時間を戻す度、
何か奪ってたみたい。
それが妙に噛み合った」
ゼータがため息をついた。
「ミアさんが奪われても、
ウチムラさんが巻き戻して全部元に戻す。
ウチムラさんが死んでしまうと、
今度はミアさんが戻すから可能性が生まれなかったことになる。
だから、二人は何も失わず。
敵もお互いに得たいものを得ることができず、
ループしてた」
敵は別々に二人を攻撃していた。
しかも、敵同士はお互いを認識してなかったようだ。
「最後、敵は何も得てないから、
二人に逃げられるわけにいかなかった。
そして、敵は倒され。
追い詰められた敵同士が合体した」
その合体した敵に捕まり、
ウチムラがどこかに消えたんだ。
「ミアさんはウチムラさんが噛み千切った敵のツタを持って、
ゼータ・ディアスタシを装着。
合体した敵の一部を取り込んで変身したらしい。
……私、本当にそんな風に作ってないんだけどなぁ」
ゼータがぼやくが、
俺たちは苦笑いするしかなかった。
「ミアさんは敵の力を使って、
ウチムラさんを助けた。
そして、この世界に戻ってきた。
それは『新しい可能性』だった。
無意識にそれを燃料にして、
ミアさんの身体が全体の巻き戻しを実行してしまった」
ミアさんが光っていたのは、
エネルギーを得たからか?
「全体が巻き戻されて、
ミアさんの身体が元に戻って。
ウチムラさんの怪我もなかったことになる。
でも、それだと敵も元通りのはずなんだけど。
今何時?」
俺は時計を確認して言う。
「十時だ。
前回なら、既に花が襲ってきた。
トラックも来たはずだけど、
何の気配もない」
「……念のため、
三人で今日の深夜零時までここで待機しよう
警戒は解かずに、
交代で休みながらお互い離れすぎないように」
俺とミアさんは頷いたが。
「いや、デートは?!
ミアのデート」
「あれ?
あれ嘘だよ」
「はぁ?!」
ウチムラさんの顔が驚愕で崩壊している。
すごい数の繰り返しのなかでもなかった顔だ。
「あの人は協力者なんだ。
まさか、
ウチムラが探偵まで雇うとは思わなかったから。
バレないか不安だったけど」
「探偵まで?」
俺が思わず繰り返した。
「そうなんですよ。
聞いてください、ヒロセさん。
この男私の彼氏だって聞いて、
探偵まで雇って身辺調査したんです」
あまり、いや、全く聞いたことないぞ。
友達の恋人を調べるとか。
ウチムラが正気に戻って、食いついた。
「いや、待て!
協力者って何の!?」
「キミを尾道に呼ぶための」
今度はウチムラの百面相だ。
言葉は出ないが、
何かを語るように表情がころころ変わっていく。
「だって、
キミが東京に行ってから、
連絡してもろくに返事なかったから」
「いやいやいやいやいやいや!」
ほほを膨らませて、
すねたような顔をするミアさん。
ウチムラはもう百どころか、
千くらい表情が変わってる。
「なんで!
ナンデ?
Why!?」
「教えてやんない」
仲が良くて何よりだ。
俺は思わず笑ってしまった。
そして、深夜零時まで何も起きなかった。
俺たちは大声で喜んだ。
俺の奢りで部屋に食事を頼み、大いに騒いだ。
酔いつぶれた二人は部屋に残し、
俺はゼータを連れて自室に帰った。




