第59話 もう二度と
●ウチムラ サイド●
お姫様抱っこされるのは、
男としてかなり恥だ。
確かに、両腕両足がつぶれて動かせないが、
かなり恥ずかしい。
「降ろして。
降ろして、救急車呼んで」
「このまま病院へ駆け込む方が早いよ!」
ミアはそう言うが。
「いや、ミアさん。
君も無事じゃないんだ。
なんとかしなきゃ」
聞き捨てならない台詞がヒロセさんの口から出てきた。
「ミアさんはウチムラ君を追いかけるために、
君が噛み千切った異世界人のツタを取り込んで
ゼータ・ディアスタシを装着したんだ」
「はぁ?!」
ゼータ・ディアスタシのデザインが、
蔦のような植物の彫られた鎧なのはそのせいか?
とにかく、ミアは無事なのか?
「キミの居場所がわかるとしたら、
あの花だろうから。
あの花が私に触れたら、
時間か場所かが飛ばされるんでしょ?
これしか浮かばなくて」
ミアはそう言って笑ってごまかそうとした。
「大バカ!
何してんだ!
せっかく……?!」
ミアの身体が内側から光出した。
「え?!
何これ!?」
ゼータすら、あわてふためく。
「ミア?!」
「わかんない!
でも、これなんか知ってる……」
ミアは何か言いかけたが、
まばゆい光があたりを包み何も見えなくなって。
何も聞こえな……。
***
俺はベッドから飛び起きた。
身体の痛みはない。
平気で動ける。
「夢? いや、違う!」
スマホを見ると日付は変わらない。
ただ、。
「七時だ!
一時間三十分早い?」
俺は上着を掴み、
ホテルの部屋を出た。
「うおわ!」
丁度俺の部屋のドアの前にヒロセさんが駆けつけてきた。
「ウチムラ君!
無事か?!」
「もう、この状態が無事かどうかも判断できません!
でも、早起きした!
早起きできた!」
「一つ前の出来事は覚えてるか?」
忘れるはずがない。
「はい。
虫のトラックと植物は倒したはずです。
でも、ミアが!」
「急いでミアさんの所へ行こう!
場所を教えてくれ!
ゼータ・ディアスタシで向かおう!」
俺はミアの住んでるあたりを説明しながら、
ヒロセさんとホテルの階段をかけおりる。
ホテルの一階はいつもとさほど変わらない。
俺たちは出入り口からホテルを出て、
物陰でヒロセさんが変身したら背中にのせてもらって、
ミアの家まで向かうことにした。
だが、ホテルを出てすぐタクシーが猛スピードで向かってきて、
俺たちの前に止まった。
「ウチムラ!
ヒロセさん!」
タクシーから飛び降りてきたのはミアだ。
「ミア!
無事か?!」
「大丈夫!
お金払うからちょっと待って!」
ヒロセさんは、空中を見ている。
その辺りにゼータがいるみたいだ。
ミアがタクシーの清算を終えたので、
一旦ホテルの一階の喫茶店で話をすることにした。
「コーヒー」
「私は紅茶をミルクで」
「俺は本当に寝起きだから、
一旦お冷や下さい」
席について注文を手早く済ませた俺たちは、
周囲を警戒しつつ話し出す。
「二人とも、
記憶はどうだ?
俺はある。
あのトラックと植物を倒して。
ウチムラ君が消えて、ミアさんが光って。
そこから、気付いたら戻ってた」
「俺も記憶はあります。
途切れたのも同じ、ミアが光って。
それで気付いたらホテルの部屋でした」
「私も記憶があります。
私の身体が光った理由はわからないけど、
身体に異常は感じません」
三人ともあたりをキョロキョロしつつ、
話を続けた。
「……また繰り返している、のか?
ちなみに、ゼータには記憶はなかった」
「ゼータ・ディアスタシのあの姿、
忘れてるんですか?」
「思い出したらややこしそうだし、
その話は一旦保留で」
「ちょ!
何それ?!」
ゼータは俺たちの前に姿を表した。
「本当に三人とも、
その『以前の今日』の記憶があるんだね
ヒロセ君が突如、訳の分からないことを言って、
走り出しから驚いてたんだけど」
ゼータは本当に記憶がなさそうだ。
俺は手を上げて思い付いたことを話す。
「……提案なんですが、
俺の部屋に行きませんか?
情報のすり合わせをしつつ、
いざときに変身しやすいし」
二人は賛成して、
急いで席に届いた熱々の飲み物を飲もうと格闘を始めた。




