↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
本編二部 「紅」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/116

第49話 闇夜の紅

 ウチムラの容体は悪い。

やはり、内蔵はぼろぼろ。

骨もあちこちヒビが入って、

全身打撲で重傷。


「むしろ、あの事故でこれで済んだのは奇跡ですよ」


 警察、救急、そして医者は、

ウチムラはあの落盤事故に巻き込まれたと思っている。

訂正するのもなんなので、

俺はそれを処理しつつ『もう一人いた』ことを話す。


「……それは、御愁傷様ですが。

あの穴からは他の生存者は見つかりませんでした」


 やはり、『彼女』ミアさんは死んだ。

ウチムラの言う通り、とんでもない大事故。


「何やかんや、あって。

もう二十時だ。

 四時間でリセットされる。

もう、陥没した地域は警察と消防が封鎖したろうし。

あのフラグを回避するための情報がない」


 俺はウチムラの入院する病院からでて、

ホテルへ帰ることにした。

あいにく、タクシーどころか車は通っていない。

病院にあるタクシーの電話をかけるが。


「夕方の事故で、

どこも道が混雑してて向かうのに一時間以上かかるんです」


 なるほど。

あんな大きな事故だ。

しかも、尾道駅の商店街の近く。

交通に影響して当然だ。

 ただ、俺もヘトヘトなので、

病院の一階でタクシーを待つことにした。


「この間に、情報を整理しよう」


 ゼータはそう言って俺の前に大きなホワイトボードのようなものを出した。

ゼータと同じ、

俺にしか見えない映像だがホワイトボードにはぎっしり今日の出来事をタイムラインに書き記されている。

ゼータは話をし始めた。


「朝、ホテルの一階の喫茶店で、

ウチムラさんと出会う。

そこで、繰り返しのことを聞いて信じられなかった」


 確かに、そうだったな。

朝の八時半過ぎごろだったと思う。


「ウチムラさんの言う通り、

一緒に外へ出てトラック事故が起きたのが九時五分ごろ」


 あの時、ウチムラはトラックにはね飛ばされたが、

見事な受け身で無傷で着地した。


「私たちは次の現場へ先回りした。

坂の上の車を止める。

十一時七分から約五分間。

 その間に、ウチムラさんは通り魔に刺される。

これは実は足場事故の次に起きるものだ。

彼はこっちを先に潰して回避」


 この辺りで、

俺たちはゼータ・ディアスタシに保存されたデータを見つけた。


「十一時四十分頃に天寧寺で合流。

足場に戻って崩れる。

 そして、

猫の細道の近くでウチムラさんが崩れた塀の下敷きになる」


 たしか、十二時までにと言って、

十一時五十六分とかその辺りで下敷きになっていた。


「ここでウチムラさんが重傷の傷を負ってしまう。

しかも、分かっていて回避も防御もさせずだ。

ここでもう異常に感じる」


 そう、ここからルールのようなものが出てくる。


「『ループ』なら、

何をどうしても同じ因果を辿ってしまうから事件や事故を回避することは不可能だ。

『ループ』、繰り返しだから同じことしか起きないし、

同じ結果になる

 『リープ』なら、

変える余地はあれど一つ変えた時点で因果はぐちゃぐちゃになる。

それこそ、朝起きて動き出す時間が一秒でもずれたら、

そこから先の未来は前回と全く同じにはなり得ない」


 俺はそう言うことに詳しくないが、

ゼータの言わんとしてることは分かる。


「そして、

車がコンビニに追突。

本来十四時前くらいなのを、

ちょっと早めの十三時四十分とかに処理した」


 あれは、色々おかしかった。

俺はミアさんと話していて現場を見てないが、

あんな事故なのに衝突音もなにもなかった。


「ここからなんか、

因果もなにもかもおかしい。

 車がどこからともなく、突然現れて、

コンビニに追突。

ウチムラさんは車とドアにはねられる」


 俺はふ、と気づいたことを確認するためにスマホを取り出して調べる。


「ヒロセ君、どうかした?」

「……ない。

朝のトラック、通り魔、足場の倒壊、車のコンビニに追突。

どれもニュースになってない」

「……それは、おかしいね。

最低でも、

通り魔と車の追突はニュースになるはずだ」


 ゼータも違和感に気付く。


「ゼータ、これさ。

『ミアさんが死んだ事故』じゃないかもしれない。

『ウチムラ君が遭う事故』なんじゃないか?

 通り魔くらいから、

ウチムラ君のダメージに見合った事故が起きてる。

ウチムラ君のあの重傷なら、

確かに落盤事故くらい大きなものに遭わないと説明がつかない」


 うまく言葉にならないが、感じた通りに話してみる。


「その『ウチムラさんの傷に合わせた事件・事故』が起きてる、

って?」

「なんか、そんな感じがした。

説明はうまくできないけど」


 ゼータはっとして、

データを見直している。


「……それかも。

『ミアさんが死ぬ』じゃなくて、

本当は『ウチムラさんが死ぬ?』

 いや、でも。

まさか、それなら」


 ゼータははっとした顔で俺をみた。

俺は何度も頷きながら、話す。


「それなら、

『ミアさんがウチムラ君の身代わりに死にに来てる』。

それこそ、

フラグを管理するウチムラ君みたいに。

ミアさんは、

ウチムラ君を助けるために死にに来てるようじゃないか?」


 俺は気づいたことを話す。


「落盤事故の時も、

俺たちをあそこより前に進ませないために、

ミアさんから駆け寄って来たんじゃないか?」

「確かに、

あの時はミアさんから近寄ってきたね」


 俺は腕を組みつつ、

前提条件から解体していくことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。