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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
本編二部 「紅」

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第48話 紅の夕陽

 しばらくはミアさんの後を気付かれないように追跡する。

俺はうまく歩けないウチムラに肩を貸して歩く。


「何が起きてもおかしくない。

突然ガス爆発したことも。

なんの前触れもなく下水道が破裂して、

メンテナンスホールの鉄の蓋が飛んできたこともある。」


 確率だと万が一どころか、

億とか兆に一の事故だ。


「そこまで行くとファンタジーの話だ」

「飛行機の墜落もあり得る。

もう、原因がどこかも辿りようがないやつばっかりで」


 うんざりと言った顔のウチムラ。


「俺がミアさんを助けたら?」

「それが、

ヒロセさんがゼータ・ディアスタシを装着して待機してても、

間に合わないんだ。

俺も駆けつけようとするけど、ダメ。

 ミアに話しかけて一緒に行動しててもだ。

必ず何か事故の前に起きて、

俺たちとミアが引き離される。

そして、ミアが死んでしまう」


 ゼータが言っていたルールの一つ。

『尾道でミアさんが死ぬ』。

やはり、

この現象には固定されたルールがあって、

ウチムラはそれに沿ったことしかできないようだ。


「でも、何とかしたい」


 ウチムラは拳から血がにじむほど、

自分の手を握りしめている。

俺だって何とかしたいが、あまりにも後手だ。

後だし、後だしでどうにもできない。


「あれ?

ミアが手を振ってる」


 どうやら、

ミアさんは俺とウチムラを見つけたようだ。

彼女が手を振ってこちらに向ってくる。


 突然、道路が陥没した。


 ミアさんは陥没した穴のほぼ中心にいて、

穴へまっすぐ落ちていく。

俺たちは急いで駆け出したものの、絶対に届かない位置だ。


「なんだと!」


 俺は思わずそう叫んだが、

無情にも大きく深い穴にミアさんは飲み込まれてしまった。


「中、に!

降りなきゃ!」

「ダメだ!

ウチムラ君のその怪我じゃ降りられない!」


 俺は穴へ向かおうとするウチムラを押さえて、

一人で陥没した穴に飛び込んだ。

深さは十メートル以上落ちている。

中心へ向かって行くが、

足場が不安定なのと水道から水が吹き出て通れないところがありなかなかたどり着けない。

 突然、ゼータはあわてて叫ぶ。


「ヒロセ君!

この穴、まだ崩れるよ!

このままじゃ、

脱出口がふさがる可能性が高い!

今のうちにゼータ・ディアスタシを着てくれ!」

「おう! 変身!」


 俺は手慣れたポーズを決めて、

ゼータ・ディアスタシを装着した。

この装備さえ着ていれば、

最悪エゼキエルで穴を掘り返せる。


「ミアさーん!

どこにいますかー!?」


 俺は声を出しながら穴の中を探す。

だが、穴はドンドン崩れて行き、

水かさも増え続ける。


「ヒロセ君……。

今レーダーで見つけた。

 彼女は、……瓦礫と水の下……だ。

落下時に即死だったみたいだ」


 俺は思わず近くの岩を殴ってしまった。

岩は砕けて水で流れる。


「……ご遺体は?」

「恐らく、人の形はとどめてない。

肉片も水で流れて……」


 遺体すら、回収させてもらえない。

悔しさが、悲しさが喉の下からあがってくる、

 俺は肩を落として地上へ戻った。

既に周囲の人は避難をして、

警察と消防の人たちが辺りを駆け回っている。

穴の中でゼータ・ディアスタシを解除した俺は、

穴から這い上がった。


「ヒロセさん……。

その、ミアは?」


 そこには、ウチムラの姿があった。

俺は静かに首を横に振る。

ウチムラは、

気力が切れたのか膝から地面に崩れ落ちる。

 俺はウチムラの身体をかろうじて受け止めた。

ウチムラは既に意識がない。

俺は救急隊員に向かって叫びながら、手を振った。

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