第44話 から紅の決意
俺たちは人気のない路地裏で変身して、
ゼータはそのデータを解読し始める。
「……ダメだ。
何かしらメッセージか何かがあればと思ったんだけど、
見つからない」
ゼータはパソコンのようなものを激しく叩きながら唸る。
「ゼータ・ディアスタシって、
俺の目線の画像も残るんだな。
この前のマサヤの変身の時の映像は、
すごいな。
こんなにすごい熱量の歌だったんだ」
「あれは、彼にしかできないよ」
「……それで言うと、
マサヤ君が歌ってる時に俺がゼータ・ディアスタシで戦ってた時。
あの時、身体の動きがすごく良くなったように感じたな」
「マサヤ君の歌の効果なのかな。
彼の歌は、
詳しく調べてみないと分からないことが多すぎるんだよ。
……もしかして」
ゼータは何かを思い出してパソコンのようなものをまた叩く。
「……あった!
あったよ!
こんな所に、よくもまぁ」
「どこにあったんだ?」
「ゼータ・ディアスタシの動作制御は、
ヒロセ君の身体の動きを記憶してそれをフォローする。
『動作の追従』なんだ。
その動きの記憶、
人間だと小脳的な記憶領域にメッセージが保存されてた。
今まであった動作の記憶データが全部消えて、
代わりに文章のメッセージが入ってる」
ゼータ・ディアスタシは、
俺の顔バレ防止が主な役目だ。
このデータが消えたとしても、
俺自身が戦い方を覚えているので、問題ない。
「……どうやら、この領域の容量がそんなに大きくなくて、
メッセージはループ二十回分しか残らないんだって。
最古のデータでは、
三千と四十一回目だ、って書いてある。
なら、今は三千六十二回目だね。
それでも約十年くらい前だけど、
ここにデータが残ることに気付いてからのデータだから。
実際はもっと以前からループしているはずだ、って書いてある」
ゼータはそのデータを詳しく読む。
「……どうやら、
例の『彼女』は夜のデートに行く前に死亡するみたい。
朝のトラック、足場。
次は通り魔、落下物、売店に車が突っ込む。
ここまでは完全に防げるらしい。
ただ、それ以降は二十回とも死因も原因も違うから、
うまく防ぎきれなくて。
だいたい十六時頃には……」
おそらく、フラグ管理も完璧ではない。
対応のタイミングのずれや対応の違いで、
未来が大きく変わってしまうのは理解できる。
「それなら、トラック以外のものも変わりそうな感じだけど」
「どうやら、朝の喫茶店でウチムラさんが外に走って行ったのが最後の車の衝突のフラグだ。
朝までに対応できるフラグの死因だから、
大本の因果はループ前に確定してるんだよ。
こういうの複雑だけど、
ループはすれど、『ループ中の因果』は確定してない。
『ループ以前の因果』は確定してる」
ゼータはまたフリップを取り出して長い横棒を書いた。
「朝の八時半に、ウチムラさんがホテルで目を覚ます。
そして、夜中零時になると、時間が巻き戻る」
ゼータは長い棒の中央を赤く塗る。
赤い範囲がループの範囲か。
そして、俺から見て左の方に青を塗る。
「この青いのが『昨日』だ。
この青の範囲に原因がある事件や事故は、
変わらないみたい。
でね。
この範囲より後、
赤の範囲に原因があるのはウチムラさんの行動次第で変わってしまう。
それがどうなるのか、
結果が出るのが夕方の十六時ごろみたい」
複雑だけど、なんとなく分かる。
これでは、数をこなしてもどうにもならないと思うが。
「……つまり、その。
ウチムラさんは、無限にある結果を全部試してでも、
『彼女が助かる未来』を探そうとしてるんだ。
なん十年も前から、何千回も試行して」
何て気の遠くなることをしてるんだ。
普通なら、正気を保てない。
だが、彼は彼女への強い思いでそれを成していることになる。
「俺にできることはあるかな」
「分からないけど。
今さっきの足場の事故の件はヒロセ君がいない場合、
ギリギリ間に合わないことがあるらしい。
同じように、
仲間としてウチムラさんの代わりに行動するのが最大のフォローみたい」
ウチムラにかわって俺はやれることをやろう。
俺は静かに決意を固めた。




