↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
本編一部 「終わり」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/116

閑話 それでも続く

 病室には重い空気が流れている。

ニカイドウはお見舞いと、

結果の報告を聞きにミズノの病室を訪れた。


「……具合はどう?」

「俺は無事でした。

俺は……」


 ベッドの上で包帯だらけ、

足にはギプスをつけて点滴をしたミズノはうつむいた。

 異世界人に関する情報は、罠だった。

現場に到着した特捜隊と警察の機動隊は、

異世界人のアジトとおぼしき廃工場に突入した。

見事に待ち伏せされていた。

 一斉に攻撃を浴び、

多大な犠牲がでてしまった。

エックス・ディメンションや機動隊との連携でなんとかしのぎ、

耐え抜いた。

 それは突然辺りを包み込んだ。

歌だ。

どこから聞こえてきたかわからない歌。

その歌が聞こえてきた途端に戦意が霧散した。

 敵対していた異世界人たちも、

突然のことに戸惑い、撤退していった。


「結局、異世界人を逃がしてしまい。

さらに、私を含めてシマザキも大ケガで入院。

機動隊からはたくさんの犠牲者が出てしまい。

 現場指揮をとっていた私としては……」

「そこまででいい。

今回については、焦りすぎた私にも否がある。

もっと慎重に情報を精査していれば、

罠も逆手にとることができたかもしれない。

 それに、二班の情報制度があまり高くなかった。

誰か一人の責任ではない。

私はそう判断している」

「……ニカイドウキャップは、ですね」


 含みがある物言いに、ミズノは覚悟を決める。


「……本部からは、こう言われた。

先に断っておくが、ほぼ原文のままを伝える。

気を悪くしないで欲しい」

「わかりました。

私の失態でもありますので、

甘んじて受け入れる所存です」


 ニカイドウはため息をつきながら、

本部からのメッセージを伝える。


「『やはり、ヒロセ マコトの存在が大きすぎた。

個人に依存するのは組織として問題がある。

 そのため、彼を除隊したが、

ここまで酷いのならば全員の能力不足としか言えない。

 このままでは、問題がある。

増員の要請があったが、余剰人員はいない。

 経費は削減。

まず、三班の戦闘機は一機に。

代わりに特別車両と対異世界人用戦車を一台ずつ配備。

 二班の人員の半分を別部署へ異動。

代わりに各種センサーを積んだドローンを八台配備。

 一班は人員の減った二班を補助し、

現地調査および現地での対応を現地の警察組織に依頼するのみとする。

そのため、

特殊兵装エックス・ディメンションは回収する。』

 どうやら、本部はこれを狙っていたようだ。」


 あまりのことに言葉がでないミズノ。

ニカイドウは自分の考えを補足した。


「まず、私はここに配属される前に、

ヒロセさんの除隊は本部の意向と聞かされていた。

 だが、実際は現地、

つまり貴方たちの意向を汲んだ本部の決定だった。

そうだね?」


 正確には本部がヒロセの除隊を考えている、と知って、

ミズノが動いたのだ。

一班班長のミズノ、二班班長のハマダ、

三班班長のクロダの三人からヒロセの除隊のについて本部へあげられている。

もちろん、ミズノの手引きでハマダが同調。

三班のクロダは、

ハマダから流されたデマを信じた結果そうなったのだが。


「本部はそもそも、

ヒロセさん一人でこなすタスクの量が多すぎて不自然に思っていたようだ。

除隊してから我々がどうなるかをかなり注視していたみたいだ。

 その結果が、今回の失敗。

特捜隊の規模縮小を目指す本部としては、

鬼の首をとった気分だろう。

ここぞとばかりにこの始末」


 そもそも防衛軍自体、

存在がかなりセンシティブだ。

 異世界からの侵略者に対応するため、

各国の国境も法律も越えて活動する戦力を持った組織。

各国の政府は背に腹はかえられぬ、

と言う感じで受け入れている。

 防衛軍はそれに配慮するため、

基本は各地の『穴』の包囲と防衛が仕事だとしており、

特捜隊は例外的なものだった。

 特捜隊の活動が政治介入になる可能性をはらみつつ、

だがその必要性を各国どの政府も主張する。

つまり、

各国政府は特捜隊にそこまで大きな権限は与えたくないが、

いざというときは責任をとらせたいのだ。

 防衛軍本部としても、

どんなわずかでも現地政府とあつれきができてしまうと『穴』の包囲にも影響が及ぶため、

特捜隊は小規模で運用したい。

 ニカイドウは吐き捨てるように言う。


「だからと言って、これは無理だ。

本部は現状を知らなさすぎる。

日本が異世界人に支配されても良いと言っているも同然だ。

 案の定、日本政府から防衛軍へかなり熱量で遺憾を表明した。

普段はのらりくらり明言をさける日本政府が、だ。

本当に、どういうつもりだ」


 だが、実際はとてつもなく重要な業務である。

すでに『穴』以外からの侵略が一般的になりつつある現状で、

迅速に対応し異世界人の侵略活動を早期に止める。

そのために人材も資材も権限も多大に必要だ。

 だが、防衛軍本部はそれらの仕事を、

各地の政府に完全に移行させることを目指している。

確かにそれが正当で、道理にあっている。

 ミズノは頭を抱えた。


「ちなみに、

熱海の件はゼータ・ディアスタシが解決したそうだ。

偶然熱海を観光していたヒロセ マコトさんの協力のもと、

警察が周囲の住民を速やかに退避させて犠牲者はなし。

 怪我をしたのはヒロセさんと、

異世界人に拉致監禁されていた女性の二名だけ」


 ヒロセと言う名前に反応したミズノ。


「ヒロセは、もう」

「そう、除隊済みだ。

だが、現地の警察たちが彼に頼み込んだらしい。

かなり無理を押して、結果彼を怪我させて。

 警察から、

もしその件でヒロセさんが何かしら罪に問われるなら、

我々の責任だ、と言っている。

 ケンカ腰で言われたから、

ヒロセさんは怪我をしたんですよね、と

私が言ったら彼ら突然小さくなって。

それについては、

彼に謝罪し賠償することを予定している、だと」


 ニカイドウは苦笑いをした。


「今街じゃ、

その話を聞いた人たちが

『特捜隊より、ヒロセさんの方が頼れる』と。

口々にそういってるそうだよ」


 ミズノの顔が険しく歪む。

抗議したくても何もでてこない悔しさがにじみ出ている。


「たった一度の失敗。

私は君も、君たちも精一杯できるこをとしたと知っている。

 この状況を打破するために、

私でできることはなんでもするつもりだ。

だから、とにかく君は早く傷を癒して戻ってきてくれ」


 ニカイドウは可能な限り穏やかな声でそういった。

だが、その声はミズノの耳には届いていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。