第35話 終盤戦
●ヒロセ サイド●
……思考も。
制限……。
……。
急げ……。
助け……。
助ける……。
……敵……倒……。
……。
……、……。
護……。
守る……。
皆……。護……。
助ける……。
…………。
守、護、護護守護護護守る護護る守る護護る守護護護守護。
守る護護る守る護護る守る、護護守る、護護守る、……。
守る護護守る護護敵倒す護守る護守る護護護護る守る。
助ける守る護護護護る守る。助ける守る護護護る。
護護敵守る護護守る護守る護守る、歌?
歌? 唄? 歌?
「歌……?」
霧に包まれたようだった頭が、
突然冴え渡る。
目の前に異世界人はいない。
振り替えると、
縮こまって怯える異世界人がいた。
「歌?
歌だ。
マサヤ君の歌」
耳には彼の歌声が聞こえている。
だが、彼の姿が見当たらない。
「まさか、あれか?」
ギターをかき鳴らす、一人の男が見える。
ゼータ・ディアスタシだ。
そうだが、俺が着ていた時と見た目が違う。
俺の時はフルフェイスの仮面だったが、
マサヤのは口元が露になっている。
全体的に小さめで、
鎧というよりステージ衣装のようだ。
そして、彼の周囲を飛び交うドローンのような何か。
どうやら全部スピーカーのようで、
周囲に彼の歌声を届けている。
全部で九つ飛んでいて、
その一つに。
「ヒロセ君、大丈夫か?!」
ゼータだ。
ゼータはドローンスピーカーに乗って、
俺の元に飛んできた。
「相棒……。
なんとかな。
そっちは上手く行ったみたいだな」
「上手くないよ!
ゼータをマサヤ君に取られちゃった!
勝手に改造されて、
見た目も機能もかわっちゃって!
なのに、本人に自覚なしだよ!?
返してもらったら、前のデザインに戻せるかな」
俺は思わず笑ってしまう。
「マサヤ君は、
彼は本当にやる気だ。
『歌で戦争を止める』つもりだ」
マサヤの歌声は響き渡る。
戦意が削がれると言うより、
戦意より歌を聞きたい気持ちが勝つ。
俺はパトカーに近寄って、
地面に腰掛けパトカーに背を預ける。
満身創痍だ。
ここまでやられのは久しぶりだ。
異世界人は縮こまって怯え続けてる。
戦意はもうなさそうだ。
後は拘束された『彼女』を助ける方法を探そう。
「ヒロセ君、本当に大丈夫かい?」
「感覚とか思考とか、
色々制限されてた。
それが一気に解除されて、
ちょっと混乱ぎみだから。
少しすれば落ち着くよ」
円盤は不安定になり、
繋がれた異形は抵抗を強めている。
「もう!
もう、許さない!
お前ら皆、消し炭にしてやる!」
異世界人が起き上がり、
そう叫んだ。
俺は舌打ちをしながら立ち上がる。
それを見て異世界人は悲鳴を上げて空へ飛び上がった。
異世界人は円盤の上に着地し、
円盤と合体を始める。
みるみるうちに円盤の上にロボットのような上半身が生えてきた。
「無限のエネルギーがあれば、
熱海の町ごと消し飛ばせる!」
ロボットの腹部にエネルギーがチャージされ始めた。
異形からエネルギーが吸い上げられているようで、
『彼女』が悶え苦しみ出す。
「マズい。
『彼女』に負荷がかかってるようだ」
ゼータは慌ててマサヤの方へ飛んでいく。
「マサヤ君!
マズい!」
マサヤはそれを聞いて笑う。
「おう!
ピッチを上げてこう!
怪力『唱』来!
ComeOn!
エゼキエル!」
マサヤがそう叫ぶと、
いつものように空に穴が空いて巨大ロボットが降りてくる。
「行こうぜ!」
マサヤがギターをかき鳴らす。
すると、そんな機能は無かったはずが、
エゼキエルが変形を始めた。
「はぁ?!
何あれ、何あれ!?
ヒロセ君、何あれ?!」
「俺が聞きたいわ」
エゼキエルはあっという間に空飛ぶステージに変わる。
ステージに飛び乗ったマサヤは、声を上げて歌い出す。
花火の演出がステージを照らし、
スポットライトがマサヤを照らす。
「私のエゼキエルも取られちゃったぁ!」
ゼータが絶叫してる。
俺は思わず笑ってしまった。




