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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
本編一部 「終わり」

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第33話 終わって欲しいのは誰か

●マサヤ サイド●


 俺の手を見ると、

見たことない色のグローブのようになっている。


「なんだこりゃ!?」

「それが、ゼータ・ディアスタシ。

ちなみに、

その状態の君はあのヒロセ君の足元にも及ばない戦闘力だから。

巻き添えを食わないように気をつけて」


 身体がすごく軽く感じるが、

これで生身のヒロセより弱いって言うのが不思議だ。

 いや、待て。


「このまま歌えば良いんだ!」


 俺はギターを弾く。

だが、力が強すぎたのか弦が全て切れてしまった。


「うわっ!

やっちまっ……。

あ?」


 突然、ギターが光って腰の当たりに消えていった。


「嘘ぉ?!

何これ!?

武器の一覧に『エレキギター』?」


 ぬいぐるみが叫ぶ。


「ギター触っただけだよ。

しかも、今のはアコギだ。

アコースティックギター」

「見てたから、知ってるよ!

でも、なんか装備に入っちゃった!

なんか、よく見たら見た目もいつものゼータじゃないし!」


 残念ながら、

俺自身の身体なのでよくわからないが。

見た目も違うらしい。


「ただジャケット着たマサヤ君じゃん!

顔、丸出しだよ!」


 俺は自分の顔を触ると、

普通に自分の頬にグローブの手が触れる。


「なんだこりゃ!」

「私が聞きたいよ!」


 自分の身体を見下ろすと、

皮のジャケット、肩や肘などにサポーターみたいなもの。

ジーンズはいつものものより良い。

靴は皮のブーツだ。


「いや、マジでなんだこりゃ」

「そんな見た目に変えてないし、

その装備は、

そんな簡単に見た目を変えられないんだよ!」


 ぬいぐるみがわめく。


「もう、とにかくヒロセ君のところへ行こう!」

「お、おう!」


 俺はとにかくパトカーのボンネットから降りて、

ヒロセの方へ走り出した。

 相変わらず一方的に異世界人が攻撃されている。

悲鳴を上げて助けを求める異世界人。

すっかり立場が逆だ。


「ヒロセ!

落ち着け!」


 俺が叫ぶが、まだ距離がある。

突然、見えない壁のようなものに思い切りぶつかった。


「いっ!

……痛くない。

ってか、なんだこりゃ!?」


 手で触れると確かに壁があるが、

全く何も見えない。


「これに阻まれて行けないのか!

なんとかできないか?

 あ。おーい!

お宅さぁ! 

このフィールド解除しろよ!

そのままだとヒロセにやられるぞ?」

「できません!

一度発動したら一定時間解除できません!」


 涙ながらに異世界人が叫んだ。

異世界人の身体は既にさっきより一まわり小さくなっている。


「マジか。

ぬいぐるみ、どうする?」

「いや、どうもこうも。

ヒロセ君!

一旦落ち着こう!

時間経過で何とかなるみたいだから!」

「あ!

今はもう、彼にそちらの声は聞こえてません!」


 慌てて異世界人が補足する。

ぬいぐるみは大慌てで聞き返す。


「なんで!?」

「この技は、

時間経過で武器になり得る能力を奪っていきます!

既に聴覚はなくなってるはず……。

 ぐぎゃぁぁ!

なんで、攻撃が当たるの?

視覚もないはずなのに……。

なんで勝てないの?」


 この異世界人の技は思ったより凶悪な技だったらしい。

だが、完全に裏目だ。

どんどん異世界人の身体が引きちぎられて、

ヒロセの万力のような掌に握りつぶされていく。

異世界人が泣き声と絶叫をあげる。


「マジでか!

マズいだろ、これ!

ぬいぐるみ、どうしよう!?」

「んー! んー!

 あ! マサヤ君!

歌ってくれ!

君の歌は聴覚がなくても、届く!」

「でも、ギターがねぇ!」


 ぬいぐるみが俺の前にでてきて、

自分の腰を叩いて見せる。


「腰を叩いて、『武装展開』って言って!

ギターがそこにあるはずだから!」

「おう!

武装展開!」


 俺は腰を叩く。

すると、目の前に突然ギターが現れた。

さっきまで弾いていたアコースティックギターじゃない。


「飾り付きギターは弾きづらいんだよ!」

「知らないよ!」


 ギターは稲妻のような形に変わっている。

とにかく俺は、弦に挟まったピックを取り、

軽く弾いてみた。


「うぉ。

凄い手に馴染む」


 いつも弾いてるギターの感じがする。

しかも、チューニング済みだ。

良い音が鳴る。


「これなら、いける」


 俺は苦しむ『彼女』と、戦い続けるヒロセを見た。


「助ける、止める。

やってやる。

ロックンロール!」


 全力でギターをかき鳴らす。

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