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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
本編一部 「終わり」

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第19話 終わりなき旅路

 熱海駅に着いたときには、

あいにくの雨が降っていた。

 仕方がないので、ホテルへ向かう。

ホテルは熱海駅のすぐそばにある大きなものだ。

兄さんいわく、

温泉旅館も良いが、このホテルはまた良いぞ、

とのことだ。

 仕事ではビジネスホテルばかり利用していた。

到着したのは豪華なホテル。

なんだか緊張したが、

ボーイさんは丁寧に案内してくれた。


「年間契約で、二年契約されております。

どうぞ、当ホテルを家だと思っていただき、

ゆっくりおくつろぎください」

「にっねっ?!

ウソッ!?

兄さん、やりすぎ!」


 後で電話して文句を言ってやろうと思いながら、

部屋に入る。

そこはテレビとかアニメでしか見ないようなロイヤルスイートルームだった。


「……やりすぎだよ」


 ため息混じりにそう呟いた。

とりあえず、鞄を適当に放り投げてベッドルームを見に行く。

キングサイズのベッドなんて、生まれて初めて見た。

 引き取ってくれた父さんたちは世に言う『お金持ち』だが、

家や服はごく一般的なものだった。

いわく、『何にも遣いどころがある』らしい。

 皆、絵に描いたような贅沢はしない。

その代わり、

母さんだとフィールドワークにかなりの金額をかけて出かける。

後、国立公園や野生動物保護区に毎年かなりの額を寄付している。

 父さんは美術品に目がない。

だが、自身で美術品を持つのではなく、

買い取っては美術館へ寄付して足しげく通う。

管理がめんどいし、皆に私が寄付したって自慢できる、

とのことだ。

 ソファに腰かけると、

沈むがしっかり支えてくれる。

すごい包容力だ。


「小市民の願いが、

なんかすごいことになっちゃってる」

「まぁ、良いじゃないか」


 ゼータはソファに寝っ転がってそう言った。


「質素堅実は美徳だけど、

やりすぎるとただの貧乏性だ。

 それに、

十年も頑張った君はゆっくりする権利がある」

「そう言われてもなぁ。

落ち着けない」


 ゼータは俺を見て笑った。


「『ヒロセ君甘やかし計画』は着実に進んでるよ!」

「相棒、君は兄さんとグルか?」


 俺は苦笑いしつつゼータをつつく。

ゼータは俺の指を伝って肩まで来た。


「さて、

約一時間の片道くらいじゃ、

適正を持った人は見つからないよ。

 明日からブラブラ観光してくれよ、

ヒロセ君」

「そうさせてもらうよ。

ところで、仲間の『適正』って具体的にどう言うもの?」


 ゼータは頭をひねる。


「まず、健康体であること。

大前提だよ。

切った張ったをするんだからね」

「まぁ、わかる」


 ゼータは俺の目の高さに浮かび上がる。


「次に『男性』であること。

私は君たちここの世界の基準では『男性』だ。

細かく言うと性別と言う概念がないんだが、

近いのはこっちと言うくらいに思ってくれ。

 そんな私が着ていて貸し出せる装備は『男性用』なので、

『次元の守護者』としてヒロセ君のように戦うためには必要な条件だ」


 俺は率直な疑問をゼータに投げ掛ける。


「戦わなくて良いなら、

女性でもいいのか?」

「うん、大丈夫。

健康体だったら良いよ。

 そうだ。

君の負担を軽減するなら、

戦えなくても移れる身体として考えてもいいね。

戦闘以外、アリバイ作りとかに協力してもらうのもありだ」


 ゼータは一人で納得してうなずく。


「次はシンクロ率だ。

これは必須。

これが一定以上ないと憑依できないからね」

「それをレーダーで探してるんだろ?」

「そうそう。

むしろ、レーダーで探せるのはそれだけだから。

直接その人のところに行って、

健康体かどうか、性別はどっちか調べないといけない」


 俺は自分と相棒のシンクロ率を前に聞いたことがある。

九十九パーセント。

それは、本当に奇跡の確率だとゼータは言う。


「君ほど高いシンクロ率はもうないと思う。

最低限、七十パーセントあればいいと思う」

「それは、なかなかいない?」

「ここに来るまで。

そう通勤ラッシュで電車内に人がたくさんいたけど、

最高が三十パーセントくらいで一人だけだったよ」


 ゼータはいびつな肩をすくめて見せる。


「最後に、これも大切。

絶対に妥協できない」


 ゼータは指をひとつ立てて言う。


「『私たちと同じ正義』を持つ人であること」


 正義。

確かに、それは大事なことだ。

正義と一言で言っても、様々ある。

 法令を遵守することを正義と言うし。

仁義を通すことを正義とも言う。

時代、土地、文化、人で異なる正義があり。

全てが間違いなく正義だ。

 そんな中で、

『私たちと同じ正義』を持つ人を探すのは至難の技と言える。


「難しいのは理解してるが、

これが食い違うと大変なことになる。

 『次元の守護者』の力は強大だからね。

それを手にしても揺るがない正義を持っている人。

 そして、この世界の人だけでなく。

ヒロセ君みたいに、

他の世界の人すら助けようと思う人じゃないと」


 ゼータは俺に言い聞かせるように、

でも、自分にも言い聞かせるように言った。


「少数精鋭で良いんだ。

欲を言っても五人。

 最低三人いれば、君をもっと自由にできる。

特捜隊にいなくても情報を集めやすいしね」


 気長に行こうよ、と

ゼータは言う。

俺は本当に仲間が見つかるか少し心配になってきた。

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