第17話 終わり方を決める
「……決めた。
私は決めたぞ」
ゼータはそう宣言し、
俺の目線まで浮かび上がる。
「ヒロセ君。
私は決めた。
私は君を必ず幸せにする」
彼のボタンでできた目が本気だ。
「まず、私は新たな協力者を探す。
君一人に頼らなくても、いいように。
防衛軍のような、特捜隊のような組織を作るんだ。
そうすれば、君の負担を減らせる」
「そうだな。
俺が防衛軍から抜けてしまったから、
異世界人についての情報源が全くなくなってしまった。
その事も相談したかったし。
とりあえず相棒の話を聞こう」
俺は相棒の話を聞くことにした。
「そして、君と同じように私が憑依し、
装備を貸し与えることができる人を増やせば、
おのずと君の負担が減る。
一人増えれば、半分。
二人増えれば三分の一。
そうだな。
週七日として、
その内の五日間は私が君の中にいない状態にできる。
さらに、君のアリバイ作りが非常に楽になる」
なるほど、それは良い案だ。
気を失っているフリをしたデコイも、
いつバレるか分からないか。
人が増えればそれだけ身バレのリスクも減る。
「そもそも、
君が私のことを周囲に秘密にしてくれているのは、
もっぱら私の都合だ。
『次元の守護者』をこの世界に深く関わらないようにするため。
それに、この世界の人の異世界人への意識もデリケートだ。
『異世界人と協力して異世界人と戦っている』、
なんて言っても受け入れてもらえない可能性の方が高い。
それで君に風評被害等の不利益があっては困るからな」
俺は家族にすらゼータのことは話していない。
本当に誰にも話していない。
良く考えれば、
この十年秘密を維持できているのは奇跡的だ。
「だが、それが原因で君一人に負担をかけることになっている。
ここまでになると、
この世界への影響は既に大きいと言える。
だから、開き直って組織を作るんだ。
そして、君を自由にする!
君を五体満足、幸せにして、
戦いから抜けてもらう!
円満退職だ!」
満面の笑みでゼータは言う。
だが。
「……それ、俺がクビってことに?」
「ああぁあ!
違う! 違うよ!
そう言う意味じゃないよ!
だって、すぐに組織を作ることはできないし。
シンクロすることができる人も見つからないから。
でも、更にもう十年、二十年と君を一人で戦わせるわけにはいかないから。
君が『もういい』、『辞めたい』と、
言ったときに円満に。
後顧の憂いなく辞めることができるように。
準備をしたいんだ」
なるほど、それは確かに。
俺も更に二十年戦えと言われると、四十八歳になる。
技でなんとかできるが、体力的に難しい。
その時点で後継者を探すより、
今のうちに組織を作って協力者を増やす。
そして、後継者を増やすなら理想的なタイミングか。
「なんと言うか、
良い意味でちゃんと『終わり』を決めるんだ。
このまま君が不慮の事故で亡くなってしまう可能性だってある。
私がいるから病気にはならないけど、
身体は怪我をするから。
それに、戦いの中で強敵に負けてしまうことも、
あるかもしれない。
だったら、
先にどうなったら『終わり』か、
『終わった後』はどうするか決めておくのは大切だよ」
突然クビになり。
突然恋人にフラれ。
突然何もなくなった。
これは、かなり辛い。
なら、『なくなるとき』のことを決める。
なるほど、なるほど。
建設的な、引退への準備。
『終活』と言うと少し違うが、
『引退活動』か。
「それより何より、
君の自由が増えれば君自身の幸せのために時間を使えるだろ」
ゼータは俺の鼻を指差して笑った。
「わかった。
相棒。
ありがとう。
そこまで俺のことを考えてくれて」
「当たり前だ!
私と君は相棒だ!
一蓮托生、一心同体!
だから、君の幸せは私の幸せでもあるんた!」
ゼータはそう言って俺の周りを飛び回る。
「私は君の味方だ。
だから、そうだな。
とりあえず夕日を見ながら、
これからのことを話そう!」
俺は笑って同意した。
ゼータも笑って、二人で砂浜を歩いた。




