第92話 愛をもって
俺は撃たれた人たちとリーダーの間に立つ。
「そこまでだ!」
「ははっ!
ゼータ・ディアスタシご本人が侵入者か!
探す手間が省けていい!」
リーダーは俺を見て笑う。
「お前の好きにはさせない!」
「ほざけろ。
お前を捕らえるための用意はできているんだ!」
リーダーはセキグチさんの顔でニタリと笑う。
俺は彼女のそんな顔は見たことがない。
外側だけ彼女なのだと分かっていても違和感が凄まじい。
リーダーが指を鳴らす。
突然、俺が檻に入れられた。
俺が檻に移動したんじゃない。
俺の周りに檻を呼び出したんだ。
かなり狭いが、動くことはできる。
「なっ!?
こんな……。
え?」
俺は檻を破壊しようとしたが、
檻の異変に気付いた。
「うぁ……」
『檻自体から』、声がする。
よく見ると、檻は人間でできていた。
何人もの人間が服を着たまま、
ねじれて絡まって檻の形になっている。
それらから、呻き声が聞こえてきた。
「なん……で。
どうやって?!
いや、生きて……」
「生きているよ。
彼らは生きている。
その檻はこの世界の人間を材料にしてできている!
破壊してみろ、
ゼータ・ディアスタシ!」
酷すぎる。
足の下の部分まで人間出てきている。
「外道め……」
「手段は問わず、行程は見ず!
とにもかくにも、勝てればいい!」
リーダーはそう言って笑う。
「その檻は我ら『ビジョン』の技術でできている。
元の人間に戻したかったら、
言うことを聞け」
最悪だ。
うかつに飛び込んだ俺が悪かった。
だが、俺はもう一人じゃない!
「ゼータさん!
座標固定!
目的地点計測!」
ミアさんの声だ。
「転送開始!」
ミアさんのその言葉と同時に、
俺を囲う檻が消えた。
リーダーが驚愕している。
俺は一足飛びでリーダーに詰めより、
当て身を狙う。
しかし、リーダーは俺の動きについてこれた。
俺は打ち込む瞬間の手を掴まれ、
投げ飛ばされる。
難なく受け身を取って、俺は叫んだ。
「そこに倒れてる人たちもお願いします!」
「もう転送済みだよ!」
どこからともなく、ミアさんが姿を現した。
確かによく見ると、
さっきまで倒れていた人たちがいなくなっている。
「マサヤ君の所は?」
「アルファさんたちが、任せてくれ、って。
だから、私たちが来たよ」
私たち、だ。
その一言を聞いて、リーダーがあわてて跳び下がる。
その瞬間、さっきまでリーダーがいたところに、
黒炎が立ち上がった。
「防衛軍の軍人とは言えど、
あんな動きして身体は大丈夫なの?」
ウチムラがそう言って、
ミアさんと同様に姿を現した。
「な、なんだお前ら!?」
リーダーがそう言って二人をにらむ。
「なんて名乗ろう?
師匠、何かあります?」
「はい!
尾道バスターズ!」
「ミア。
それだと俺たち尾道を壊しちゃうから」
二人がきてくれただけで、
自分でも驚くほど心強く感じる。
「そこッス!」
リーダーはまた慌てて跳び退く。
ドアからハヤタさんが銃を構えていた。
「麻酔弾は弾速が遅いから、
当てづらいッス」
「ハヤタ、それでも撃ち続けろ!
プラスマッシュ!」
物陰からムラマツさんが飛び出して、
リーダーに殴りかかった。
しかし、リーダーは驚異の身体能力でそれを回避し、
俺たちから距離を取る。
「なんなんだ?
なんなんだ、お前らは」
ゼータがゆっくり天井から降りてきた。
「私たちは『次元の守護者』だ」
リーダーはゼータを見て目を見開く。
ゼータはゆっくり、子供に言い聞かせるように言う。
「無駄な抵抗は止めて、投降してください。
そうすれば、情状酌量の余地も残ります」
「情報はなかった。
そんな情報はなかったぞ。
五人もゼータ・ディアスタシがいたなんて、
聞いていない!」
リーダーは忌々しげに吐き捨てた。
「くっ……!
『欠片』はどこだ!?
『欠片』を出せ!
さもなくば、この身体を殺す!」
リーダーはそう言って、
自分のこめかみに銃を向けた。




