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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
終章 愛

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第87話 愛の歌声

 改めて、俺たちは頭を付き合わせた。

ゼータはその真ん中に浮かんで指示を出す。


「作戦は、

まずマサヤ君は歌ってくれ。

私のエゼキエルを貸すから、

ジナコさんとドでかいライブをかましてくれ」

「おう!

任せろ!」

「アタシも、やるよ!」


 マサヤとジナコさんはお互いの拳を軽く付き合わせた。


「ウチムラさんはミアさんと二人で、

歌ってるマサヤ君とジナコさんを死守。

ドローンとか敵が襲ってきたら、焼き払って。

ミアさんは攻撃を転送して反らして」

「ヒロセさんに、

この数ヵ月の筋トレの成果を見せよう」

「ウチムラ、全然体型変わってないよ?」


 この二人はマイペースだが、

ペアで行動してもらうのがいい。


「ムラマツさんはヒロセ君とオフェンスだ。

途中までマサヤ君のエゼキエルに乗せてもらって、

山に入ったら二人で敵の戦艦へ向かって行ってください。

 憑依されて身体を奪われた人質を取り戻す方法を見つけて、

可能なら人質を奪取して欲しい」

「現役ヒーローのヒロセさんとなら、百人力だ」

「こちらこそ、

ガンバマンと肩を並べて戦えるなんて。

幼い頃の夢が叶いました!」


 俺はガンバマン姿のムラマツさんと握手して、

笑う。

顔はお互い見えないが、

ムラマツさんも笑顔なのがわかる。


「ジャスト!

モーメント!

私もついていくッス!」


 いつの間にかディメンション・エックスを装着したハヤタさんが走ってきた。

ゼータがぼやく。


「あのときも思ったけど、

ハヤタさんって意外に戦い慣れてるよね」

「アイツが行った実弾の射撃訓練ってのを詳しく聞いたけど、

米軍のガチの射撃訓練にも参加してたぞ。

マジもんのブートキャンプ」


 ムラマツさんはゼータに補足した。

ハヤタさん、本気でアクション女優を目指してたんだな。

俺の中の彼女の朝ドラのイメージはもうとっくに消え去った。


「じゃぁ、

ハヤタさんはヒロセ君とムラマツさんを後方から援護射撃してください。

敵の数は膨大だと思うので、

残弾数は常に気を付けて。

 オオゾノさん!

初めまして、ゼータと申します!

DX号って、

訓練なしじゃ操作できないですよね?」

「あ、え。

は、初めまして、オオゾノと申します。

 そ、そうですね。

でも、クロダさんたちがいるなら、

DX-八号が出せます。

あれは三班が基本的に操縦して、

ディメンション・エックスに弾薬を補給する補給艦です」


 突然ゼータに話しかけられたオオゾノさんは、

そう言って手早く手配を開始した。

俺はウチムラに指示する


「ウチムラさん、クロダさんたちに連絡を」

「変身したからスマホ出ない」

「俺が連絡する」


 叔父さんがウチムラにかけよって、

スマホを取り出し二人で話し出す。


「よし、

全員私を介して通信できるから、

何かあったらすぐに共有して。

 マサヤ君、エゼキエルを呼んで、

乗り込んで」

「しゃぁ!

怪力『唱』来!

ComeOn!

エゼキエル!」


 マサヤの声に応えて現れたエゼキエルは、

周りにいる同じ見た目のエゼキエルを無視するように変形を始める。


「なっ?!

そ、そうなるのか!?」


 アルファ総司令官と他のぬいぐるみたちが戦慄している。


「……なんか、ごめんなさい」


 俺はもう一度謝っておくことにした。

空に浮かぶ巨大なステージに、

マサヤとジナコさんが跳び上がって乗り込んだ。


「新曲だ!」

「おうともさ!

行こうか、マサヤ!」


 ジナコさんがどこからともなく蒼く輝くギターを取り出し、

かき鳴らす。

ウチムラがクロダたちとオオゾノさんを繋げたので、

俺たちもエゼキエルに飛び乗った。

ハヤタさんはムラマツさんにおんぶされて乗ってきた。


「タイトルは、『絶対ヒーロー』!」


 マサヤはそう叫んで歌い出す。

空飛ぶステージは、

エゼキエルたちを引き連れて保口岳へ向かって飛び出した。


「『届け! 届け! 届け! 届け!

どこまでも、高く! 高く! 高く!

この想いよ、届けぇ!


どんなに、辛くても

どんなに、悲しくても

アイツはいつの間にかそこにいて

君のそばに来てくれる


理不尽で強大な闇が

辺りを包み込んで

希望も何も見えなくなっても


アイツは来てくれる!


走れ! 走れ! 走れ! 走れ!

光と! 夢と! 希望と! 笑顔を届けに!

愛で闇を、切り裂けぇ!』」


 歌声が、何もかもを貫いて心も身体も揺さぶる。

聞いてるだけで、勇気が湧いてくる。

そして恐らく、

あの時のようにこの歌声は世界中に響いている。


「すごぉ……。

尾道の応援歌とか歌ってもらうよ」

「ミア、さすがにそれは反則だと思うぞ」


 すっかり歌に聞き入っていた、

ウチムラさんとミアさんは苦笑いした。


「『速く! 速く! 速く! 速く!

どこまでも、遠く! 遠く! 遠く!

皆の想いを、乗せてぇ!


どこでも、君を

いつでも、君を

優しく力強く護ってくれる


困ったときは

ピンチのときは

泣いても良い、叫べ!


アイツは来てくれる!』」


 街が遠ざかり、

山が近づいてきた。

すると、空を覆うような何かの群れが飛んでいる。

俺は確認もかねて口に出す。


「あれが、敵のドローンか」

「うむ!

我々も援護を開始する!

総員、射撃準備!」


 アルファ総司令官が、

長い耳を揺らして右手を振り下ろす。


「ってぇ!」


 アルファ総司令官のその号令にあわせて、

周囲のエゼキエルたちが射撃を開始した。

ドローンたちはボトボトと音が聞こえそうな程落ちていく。

だが、ドローンの数があまりにも多い。

焼け石に水、と言う具合だ。


「出番だな」


 ウチムラはそう言って、

その両手に黒い炎を宿した。


「私は足場を作るよ!」


 ミアさんが手をかざすと、

何もなかった空にガラスのような板が複数現れた。

ウチムラはそれに飛び乗ってドローンへ向かう。


「ほらほら!

ステージにはそれ以上近づかない!

出禁にするぞ、てめぇら!」


 ウチムラは両腕を振るう。

それにあわせて黒い炎はドローンに燃え広がった。


「『あげろ! あげろ! あげろ! あげろ!

その手を、高く! 高く! 高く!

アイツと一緒に、やっちまえぇ!』」


 少し遠くの空に、黒い大きな影が見える。

あれが、『ビジョン』の戦艦か。

俺とムラマツさん、ハヤタさんは顔を見合わせて頷いた。

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