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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
終章 愛

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第85話 愛のしるし

「『ビジョン』らは、

ゼータ君の中から『何かの欠片』を取り出して、

『次元を超えて世界を破壊する兵器』に改造し。

次元を超えて全ての世界を支配しようとしている」


 どうやら落ち着いたオオゾノさんが、

おずおずと手を上げて前に出た。


「は……発言の、許可を願います」

「ん?

貴殿は報告書になかったが、

特捜隊の方かな?」


 アルファ総司令官は、

オオゾノさんに続きを促す。


「はい。オオゾノと申します。

 現在、その『ビジョン』、ですか?

その戦艦とおぼしき兵器が、

この世界に攻めこんで来ています」

「うむ、それは既に感知して知っている。

だから、我々は急いでここへ来た。

少し待ってくださるか?

 ゼータ君、ヒロセ君。

二人に頼みたいことがある」


 アルファ総司令官は俺たちの方へ向き直った。


「すまないが、

我々はこの世界に先ほど到着したばかりで、

ここの人の協力者がまだいない。

今は我々とシンクロできる方を探す時間が惜しい。

 しかし、ゼータ君は既にたくさんの協力者を得ている。

なので……」


 アルファ総司令官は、

どうやったのか布でできた指をパチンと鳴らした。

すると、空の上のエゼキエルの内一体から、

光の玉が降りてきた。

その玉はとても大きくて、

人がすっぽり入れそうなほどだ。

 それは俺の目の前に降りて、

中から見知った顔が出てくる。


「マサヤ君?

ジナコさん?」

「おう!

助けに来たぜ、ヒロセさん!」

「お久しぶり。

二人とも、お元気?」


 二人は笑顔で俺に駆け寄ってきた。

俺はマサヤの上げた手にハイタッチして、

ジナコさんには会釈した。

 続いて、もう一つ光の玉が降りてくる。

中から出てきたのは、

ウチムラとミアさんだ。


「ちょっと!

ヒロセさん!

ヒロセさんのお兄さんだ、

って人から連絡来たんだけど。

本当にお兄さん?」

「ウチムラ、先に挨拶でしょ。

お久しぶりです!

ヒロセさん!」

「う、うん。

お久しぶり。

ってことは……」


 次の光の玉が降りてくる。


「いや、ムラマツさん、

お怪我は!?」

「あ、なんか治してもらった」


 光の玉から出てきながら、

ムラマツさんは自分の頭をかく。

彼はまだ入院着のままだ。

その後に続いて、

何故か女優のハヤタさんが出てきた。


「あの、何でハヤタさんが?」

「偶然お見舞いに来てて。

どうしても俺についてくって、

ただこねやがって……」

「先輩は病み上がりッスから、

私がそばでサポートするッス!」


 テレビとはことなる話し方と、

イメージしてた感じとは違う満面の笑みを見せるハヤタさん。


「お前、変身できないんだぞ?」

「また、防衛軍にスーツ借りるッス!」

「いや、前のは緊急事態だったし……」


 ムラマツさんはハヤタさんをなだめているが、

なんと言うか夫婦漫才に見えてきた。

アルファ総司令官は改めて話し出した。


「ヒロセ君。

ゼータ君の中の『何かの欠片』を守りつつ、

ヤツらと戦ってもらえないだろうか?

ちなみに、既に私から彼らには状況を説明済みだ」


 ゼータがあわてて割って入る。


「あの、司令官殿。

連れて来て下さった人たちの内の四人は、

私とシンクロできる方々です。

 しかし、私は一度に全員とシンクロできません。

ゼータ・ディアスタシも一領しかありません。

もしかして、

この中の誰かが司令官殿とシンクロできるのですか?」


 確かに、

複数人が同時にゼータとシンクロして変身することはできない。 


「いや、私とシンクロできる方はここにいない。

 しかし、大丈夫だ。

ゼータ君の報告書は精緻緻密で非の打ち所がなかった。

その報告書に書かれていたゼータ・ディアスタシのデータを元に、

我々が新しく作った装備を提供する」


 アルファ総司令官は、

また器用に指をパチンと鳴らした。

すると、彼の周囲に五つのソフトボール大の光の玉が現れた。


「『ゼータ・ディアスタシ・Ver.2.0』。

引き受けられるダメージの量を大幅に増やした。

更に新機能として、

装着者の身体能力を数倍に引き上げることもできる。

 これをヒロセ君のようにこの世界の人に所持してもらう。

そして、所持した人はゼータ君と離れていても、

いつでもシンクロし変身することができる」


 アルファ総司令官は、

俺の目の前まで近寄ってきた。


「改めて、ヒロセ マコト殿。

大災害の原因究明と、

この世界に散らばった『何かの欠片』を集めて死守する。

そのために、我々に正式に協力をして欲しい。

 貴殿をこの世界の『次元の守護者』として、

正式に任命したい」


 そして、

アルファ総司令官は深々と頭を下げた。


「……貴殿には多大な負担をかけている。

ゼータ君の報告書にもあった。

我々が貴殿の人生を狂わせている、と言っても過言ではない。

しかし、

この世界を任せられるのは貴殿とゼータ君しかいないんだ。

本当に申し訳ない」


 俺は振り返って皆を見た。

兄さんと父さんはスマホの画面越しに頷いている。

叔父さんたちは、右腕を曲げて力こぶをつくって見せる。

お婆様とヤマシタさんは、

まっすぐ俺を見つめていた。

 少し視線を下げると、

オオゾノさんはぼうだの涙を流して敬礼している。

サワダとシマザキは土下座のままだが、

肩を揺らして泣いている。


「ヒロセさん!

約束したよりちょっと早いけど、

俺も仲間だろ!?

俺の歌で争いを止めてやる!」


 マサヤがそう言って俺に向かって右手を差し出した。


「俺は、緊急の時には手伝う、って言ったけど。

師匠を助けるのは、弟子の勤め、だと思うしな」


 ウチムラはそう言って、

マサヤの右手に自分の右手を重ねた。

ウチムラを見てマサヤは笑う。


「私は戦いはからっきしだけど、

命の恩人のウチムラとヒロセさんを助けられるなら!」


 ミアさんはウチムラの右手に自分の右手を重ねた。


「そう言う話なら、私も喜んで手伝うよ」


 ミアさんの右手にジナコさんも自分の手を重ねる。

ミアさんは慌てて重なってる手の順を変えて、

ジナコさんの手をマサヤの手に乗せた。

それを見て四人は笑う。


「俺は怪我が治ったら仲間にしてもらう約束だった。

怪我が治った今、喜んで協力する」


 ムラマツさんはそう言って、

一番上になっているウチムラの右手に自分の右手を重ねた。


「はい!

私はダメッスか?

ディメンション・エックスなら使えるッス!」

「ハヤタ、お前女優業があるだろう?

しかも、あの装備は防衛軍のだ」

「先輩の隣は、

私しかいないじゃないッスか!」

「なんじゃそりゃ」


 夫婦漫才をしつつ、

ハヤタさんはムラマツさんの手の上に自分の右手を重ねた。


「……私からも、頼みたい。

ヒロセ君、いや、相棒。

今一度、私と世界のために戦ってくれないか?」


 ゼータがそう言って、

皆の手の上に小さな右手を重ねた。


「……皆」


 俺は胸に熱いものを感じた。

涙が溢れて止まらない。

 俺は皆に近寄り、

ゼータの手の上に俺の手を置いた。


「皆でやろう!」


 そう言うと、皆笑って頷いてくれた。

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