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・3章 二度目の幸福

 「…ん?」


目前に広がるは真っ白な壁に真っ白な床や天井。等間隔に並んだどこかアンティークなランプが壁と床、天井の境界線を描いている見覚えのある景色。ここは…


 「…またかよ」


ポツリとつぶやいて前へ、悪魔たちいるの所へ歩みだす。

そう言えば夢はレム睡眠の関係で基本体が動かないそうだけど、体が動く感覚と実際に進んでいる現状を見て少し混乱する。

これは本当に夢…なのか?と


 「あらぁ?」


座りながらモグモグとクッキーのようなモノをむさぼる一人のふくよかな女悪魔が俺に気付き俺を見る。

すると否応いやおうなしに


 「どうでした?」


と聞かれる。あれは…あれは偶発ぐうはつ的に起こったにしては出来すぎた偶然?だ。

だが、にわかにはまだ信じがたい…。


 「その、確かに望んだ幸福だったけど。それでもまだ完全に信じることは…」

 「んー。まあ、そうですよねぇ。私たちもたかだか一度で貴方あなたたち人間が簡単に信用するとは思ってませんし」


アニスという悪魔はペロリと指についたクッキーの欠片をめて上目遣いで俺を見る。


 「前もだ…」

 「はい?」

 「前も何かお菓子を食べてた…よな?」

 「はい。」


お菓子が好きなのか?というかどこから持ってきてるんだ。


 「好きなのか?」

 「私たちのような悪魔はクッキー等のお菓子しか食べれる物が無いんです。悪魔と言えど流石に何か食べないと死んじゃいますよ。まあ、形やお菓子の種類は個々の趣味ですけど」


成る程、と俺は渋々(しぶしぶ)理解する。

俺は立ち上がりクッキーを食べ終えて幸せな顔をする悪魔アニスを見る。


 「まてよ?『形は』って事は味はどうなんだ?」


その言葉に被せるように悪魔アニスは


 「では、もう一度幸福を与えましょう。」


と前と同じ営業スマイルで言う。


 「あ、あぁ。助かる。こちらの判断材料にもなるしな。そうだな、ここから出たら宝くじで15万ほど当たるってので良い?」


少し強欲かな?と思いつつも悪魔アニスに言う。


 「むぅ。少ししょうもない&お金ばっかな強欲者ですが、まあ良しとしましょう!前も言いましたが対価は無いですよ」


あ、そうだったな。

まあ、何かしらの代価があるならば、その異変に気付くだろうな絶対。

というか、大金を得ることこそ人生最大の幸福だろう。


 「お金はあっても困らないし多くあった方が幸せじゃん」


俺はそう悪魔アニスに少し笑いを含めて言う。

一瞬シーナとやらの肩がピクッと動いた。そして悪魔アニスは少し、ほんの少しだけ顔に影を落とした。

だが一瞬でいつもの顔に戻り「確かにそうですねぇ」と悪魔アニスは怪しげにニヤついた顔で返事をする。

パンッと手を合掌がっしょうさせた音が空間に反響する。

また、意識が薄れていく。また、妙な浮遊感を得る。

まどろみの中から現実に放り出されるのか。


 「あ。貴方が幸福になる為に、お代はいりません♪」


まるでカンペが用意されたかのように前も言っていた言葉を最後に意識が閉ざされる

 

 * * *

 

ピピピピッピピピピッ…


 「うぅ~ん…」


いつもより早いアラームで目を覚ます。

やはり昨日と同じで夢のことは余り覚えていない、だが、前と同じく望んだ幸福についての会話は完全に覚えている。


 「願った幸福は…宝くじで15万ほど当たるってやつだよな」


時計の針は6:45。一階に降りると母さんは寝ている。

俺は紙に『朝ごはんも昼御飯もコンビニで買っとく』と書いて机の上に置いておく。

そして洗面所で洗顔、歯磨きといつもしている日課を済ます。服を着替えポケットに300円を入れて俺は家を出る。

 

 * * *

 

車がまだ少なく、歩道も人がおらず空いている。

風を体に目一杯受けて気分がやわらぐ。少し肌寒い朝の風は俺の頬を心地よくでる。

その風は少しだけ土や草木の香りが混ざり、まだ都会になりきっていない発展途上の町と言うことを知らせる。

ふと横を見ると時間的に今は建設が進んでいない建設途中の大型ショッピングモールがある。駐車場も広く見晴らしが良い。

その駐車場の入り口あたりにぽつんと一つの宝くじ売り場がある。1等は1250万と少し低いがまだ真新しい外装から新設された物とわかりやすい。俺は売り場へ歩み寄る。


 「すいません。一枚良いですか?」


俺はポケットから300円を取り出して手の平にお金を乗せて店員さんへ見せる。


 「はい。どうぞ」


渡されたくじの銀紙ぎんがみを俺はその場で削る。


 「番号は487590…」


そう心の中で何度も繰り返しながら鞄からスマホを取り出し当選番号を見る。

ビンゴだ。当たっている。15万1000円で。


 「すいません。当選しました。番号は487590で、当選額は15万1000円です」


短くおめでとうございますとだけ少し驚いたような顔で店員さんは言って番号の確認を済ませるとお金を差し出す。

本来ならこの額になると銀行らしいが、この地域では宝くじ売り場も少なく、そんな額滅多(めった)に当たらないから銀行で渡すことを無視している所が多い。

適当で普段なら不安なのだが、今は助かる。

判子はんこを家に置いているからだ。当たると確信していたつもりなのに、心のどこかでまだ信じていなかったんだな。と俺は自己嫌悪する。そのお金を受け取ると俺はきびすを返しコンビニへ向かう。

パンしか買わないから1000円しか使わないだろうな。

 

 * * *

 

 《学校 教室》

いつもより早いからか誰もいない。

時計の針は7:10を指す。少し新鮮な気分だ。

いつもはワイワイガヤガヤと騒々しい教室が今では時でも静止したかのように静まり返っている。

他のクラスも同じだがそもそも先生が来ておらず教室が開いていない。

俺らの担任はマメだなぁとしみじみ思いつつ窓の外から景色をながめる。

こちらに歩いてくる学生が数人見える。

背景には住宅街や小学校、ラーメン屋等が少し見える。やっぱり、未だに発展途上の町だなぁと思いにけているとふと先生の事について考えていたことを思い出す。

―あれ?俺らの担任の名前、何だっけ?

そんな言葉が頭の中を低徊ていかいし少しモヤモヤする。んー。何だっけ?なぜか思い出せない。

夢と同じで所々欠けている。脳裏のうりに部分的に浮かぶ担任の姿。

セミロングの麦色の髪と日々を楽しそうに過ごす口の笑み。主に首から口までを抽象ちゅうしょう的にしか思い出せない。

いや、覚えていないと言う方が正しいかもしれない。元々知らなかったような感覚におちいる。

教室のドアがガラガラと音をたてて丁寧ていねいに開かれる。誰か、女性が入ってくる。

麦色の髪と口周りの色白い肌、そうだ。さっき脳裏のうりに浮かんでいた人物像はこの人じゃないか?

口から首までの情報が合致がっちする。


 「あら?荒木さん、もう来てたんですか?早いですね!先生感心しちゃいました!」


その女性は笑顔で元気よくそう話しかける。毎日聞いていた筈の声、なのに初めて聞いた声。俺は失礼かなとは思いつつも


 「…誰でしたっけ?」


と質問する。先生とやらはマジですか!と言いたげな表情で俺を見る。


 「半年以上経ってまだクラスの子に名前を覚えてもらってなかったなんて先生ショックです!私はたちばな 理恵りえですよ?」


くすくすと笑いつつ先生は教室の花瓶の水を取り替える。

朝だと言うのにテンションが高いというか、独特な先生だ。こんな人何で忘れていたんだろう。

考えても仕方がないから俺は本を読む。昨日借りた『夢』についての本を。

 

 * * *

 

《昼 屋上》


 「なぁつかさ。月曜暇?」


晃太こうたが屋上に吹く朝とはまた違った昼の暖かい風を体に受けつつパンを食べる俺に聞く。

勿論もちろん、部活に所属していなければバイトもしていない俺は暇だ。


 「暇だけど、どうしたんだよ」

 「オッケ。月曜部活休みだし、月曜の放課後に健斗けんとは除いて何人かで新しく近くにできたカフェでも行こうぜって思ってな」


そういえば学校の近くに西洋風のお洒落しゃれなカフェが3日前くらいに建てられてたな。何でも連日行列ができるほど人気らしい。

どうせお金もあるし行くか


 「良いけど、健斗けんとは誘わねーの?」


そう聞くと晃太こうたの顔は察してくれとうったえかけている。


 「あいつには…似合わねーよ。つか、大人しくしないから、さ。」


はぁーと晃太こうたは溜め息をつく。確かにそうだ。

昔から体育会系でヤンチャだったあいつを店に連れて行くとロクなことが無かった。


 「その代わりに宇都宮うつのみやさんとか京介きょうすけとか誘うつもりだ。」

 「…マジで?」


宇都宮うつのみやさんは女子だ。しかもそうとうクールかつミステリアスな人間だ。

まあ、毎日紅茶やコーヒーを持ってくる位だからカフェは好きなんだろうな。

…いや待て。なんで男3人:女子1人なんだ。そこは宇都宮うつのみやさん以外にも誘うべきだろう。まさか…


 「お前、宇都宮うつのみやさんと…」


表情が健斗けんとに対する呆れ顔で固まったままピクリと晃太こうたの肩が一瞬()ねる。ビンゴか?


 「…お前さ。恋愛に鈍いくせしてたまに鋭いよな」


おいコラ。二重の意味でどう言うことだ。俺が鈍いだと!?それにお前一人だけ抜け駆けとはズルいぞ!

その言葉は俺ののどまできてとどまる。

それは屋上のドアに照れて体を少し隠しながらこちらを見る丸目で黒ロングストレートヘアの女子生徒が見えたからだ。


 「…か、神崎かんざき君。いくらなんでも男性3人は…お、多くないですか」


すごくおどおどしている。これが宇都宮うつのみやさんだと言うのか。恋は盲目ってやつか。


 「大丈夫だよ!俺が守るからさ」


滅茶苦茶めちゃくちゃ爽やかなスマイルで、親友である俺でさえ見たことのない屈託くったくの無き笑顔でキラキラしながら宇都宮うつのみやさんの方へいく。

黒いなこいつ。マジで。


 「じゃあなー!集合時間とかは来週の月曜に言うよ!」


そう言い残し奴はこの場を去った。あぁ、暖かいはずの昼の晴風はれかぜが冷たく感じるわ

 

 * * *

 

 「…ただいまー」


返事は無い。母さんはいつもなら夕方過ぎたら帰っているはずなのに。キッチンへ向かうと机の上に置き手紙がある。


 『つかさへ。ご飯は用意してあります。私は遠くで働くお父さんとディナーに行ってくるね!』


幸運なはずなのに不運だ。俺は服を着替えて夕飯を食べる。

どいつもこいつも…俺だって色恋の一つや二つ、いや二つもいらない、一つで良いから経験したい。

 

 * * *

 

風呂を上がり自分の部屋のフカフカベットにダイブする。ベットはボスンッ!と音をたてて俺を優しく抱擁ほうようする。


 「…寝るか」


明日も明後日も学校が休みだから日がな一日中ゴロゴロしとこう。

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