終わりの始まり
よく分からないけれど、道すがらローエルから私は経緯を漸く聞いていた。半ば信じられないけれど――私はどうやら百年前実在した人物の生まれ変わりと言う分けらしい。多分だけれど――話してはくれなかった――その人はローエルの想いの人であり、あの『宝物』を持っていた主だろう。
「うん。でも、私には関係の無い話だね」
それが私の素直な感想だった。にこりと微笑むとローエルは残念がる様子も無くにこりと微笑み返した。
「うん。アンタはアンタだからな。……けど――」
学院裏門。正門からなんてとてもではないがこんな時間に入れはしない。門限は本来日が暮れるまでなのだから。どうせなら部屋まで送り届けてくれればとか思ったけれど仕方ない。
彼は何かを言おうとして言葉を切る。続けた言葉はおそらく違う言葉。
「帰るわ――ライラは来ないだろ?」
「ん。宿題とかあるしね。とうさんだっていきなりいなくなったら困るでしょ?」
言うと軽く喉を鳴らされた。楽しそうに笑うので私が可笑しなことを言ったみたいだけれど至極まともなことを言ったつもりだ。あまりいい気分はしなくて私は眉を潜めて見せると『悪い』と軽く謝る。
「ま、でも。奴の困った顔見て見てぇな。ま、絶対に困るのは俺とか、世界とかだろ? あの魔王」
「だから」
私は抗議をしようとしたが、その前に彼の手が私の手を取った。掌に置かれるのは一つの指輪。シンプルなデザインだったけれど嵌められた宝石は赤く、強い輝きを放っている。そう、まるで少年の目の様に。
「やるよ。お礼――もう二度と会えないし」
「……でも」
とても高そうだし――困る。こんなの。どうすればいいのか分からないし。
「いいんだよ。元々あんたにって母上が用意してくれてたものだし」
「……」
母上――って。それに、それって『前』の私だと思う。関係ないと言ったばかりなんだけれど。関係ないのに貰うわけにはいかないし。
どうしよう。
「それじゃな」
考えている間に少年は踵を返していた。何でもない別れ。また明日も会えるかのような雰囲気だった。
もう会えない。そんな雰囲気はどこにもない。けれどそうなのかもしれない。私は思わず彼を呼び止めていた。
「――ローエル」
「ん?」
ゆったりと少年は振り向く。その表情はこれまで見たどの表情より大人びている。まるで一瞬で大人になったかのように。
「あ、あの、ありがとう。素敵な景色だった。嬉しかった。――これも。ありがとう」
言うと彼は満足したようにフワリ笑う。同時に金の髪がさらりと揺れた。それと共に唇が微かに動いていたが、何を言ったのか分からない。それは彼がその場で消えたためだった。まるで何事も無かったかのように世界は闇に包まれる。ただ、私の手元に残ったのは温もりと輝く指環だけだった。
******
ここに王族系譜がある。
過去から現在まで続く王の系譜に一人だけ出身・生年月日・身分。すべて書かれていない姫君がいる。学者の話では若くして死んだ『ローエル王子』を不憫に思った国王と王妃が名前だけ載せたのだろうと言われているが詳しいことは分かっていない。
その名がどこから来たのかさえも。
姫の名前は『ライラ』と記されているだけだった。
終了しました。
ええ。唐突です。申し訳ございませんm(__)m
恋愛って相変わらず何だったんだ…orz
そして、何が言いたかったのかさえ分からなくなった始末…。
でもここまでお付きあいくださってありがとうございます。




