会話
「あの?」
「その目。嫌いかね?」
「え?」
どうしてそんな質問をするのか分からなかった。ただ悪戯に聞いている訳でもないだろう。何か答えを探しながら私を見る視線がそこにある。
正直に言うと私はこの目が好きではない。目の前の国王様には悪いけれどどこか不気味な光を放つ眼だ。薄気味悪い。私も家族と同じ色が良い。そう何度思っただろう。けれどそれはわがままだと分かっている。事故で死なずこの左目があるだけで幸せなのだから。
腹部にあるのは裂傷。臓器まで達する傷でこれで死ななかったのは奇跡にしか過ぎない。そうお医者様は言っていた。
「……あの」
嫌い――とは言えなかった。好きではないが否定することは出来なかった。これが私の眼だから。散々お世話になって来たのだから。それに――同じような眼を持つ国王様も傷付くかも知れない。ソルト様だって王妃様だって悲しむかもしれない。
難しい顔をしていたのだろう。私が口籠っていると、国王様は包容力のある笑顔を浮かべて見せた。
伸びる大きな手が私の頭を優しく撫でる。大きな口許が開きかけたがその声を遮るように王妃様の声が響き、私の肩に腕が伸し掛かった。
「うふふ。優しいのね。ライラちゃんは――嫁に欲しいわねぇ」
「……えっと」
「まぁ、かまわん。嫁は置いておくとして、私がここに来た訳を?」
軽くソルト様に目くばせすると彼は否定するように小さく首を振った。国王様はそれを確認すると『うむ』と呟き私に目を戻す。
「この世界は精霊に支えられ――ウェルザ王たる者その精霊を感じることなしに即位できない――そんな事は赤子でも知っておろう?」
私は軽く頷いた。信じるか信じないかは別として国民の一般常識だ。
「我ら王家は『血』で精霊を感じ『眼』で精霊を見る。そして『意志』で精霊を持つ」
「はぁ」
言いたいことが分からず私は曖昧に返答をする。なんというか。設定がローエルの思考と同じような気がして来たのは気のせいだろうか。
「信じなくともよい。それが事実だ――その特徴として『眼』が赤く染まる」
「後天的にですね――感じるだけなら何も変わらないんだけど、『見る』となると赤く染まって、『持つ』となると輝きを放つんです」
軽く微笑みながら付け加えたのはソルト様だった。言葉が飲み込めない。しばらく頭の中で言葉を反芻しながらぼんやりと派手な顔を見回してみる。何か含みのある笑みに私は頭を軽く抱えた。
まさか。
「ええと――?」
冗談を言っても仕方ないけれど『冗談ですか』という前にソルト様が良い笑顔で返した。
「父上が言うんだから間違いないです。良かったですね。精霊を持つ者なんて世界を探しても父上とあなただけですから」
何の拷問か知らないが、謝れば赦してもらえるだろうか。勿論私は世界中の大半がそうであるように精霊など見ることも感じることもできない。持っているなんて何かの冗談だろうと思う。
まさか――。私は息を飲んで思考をめぐらす。
王族――国王様と同じような眼を持つ私を気に入らないのだろうか。よく考えれば幼稚すぎるのだが、そんな事まで頭が回らず私は心の中で微かに悲鳴を上げる。
「父上。彼女、逝っちゃってますね――何か違う事を考えているようです」
「うむ。話はここからなのだが……」
「もう。それ以上話せば気絶しちゃうわよ?」
「むぅ……」
王妃様にとがめられて国王様は困った顔を浮かべ少し息を吐く。『しかたあるまい』呟いて口許に紅茶を含んだ。
ぼんやりとしたひと時。日のはいる窓の外、小鳥がパタパタとはためいている。何事も無かったように。これで派手な親子と重々しい雰囲気を放つ騎士団の皆さんが居なければ夢だと思えるのだけど。
にしても早く解放してほしい。
――逃げたい。色々あり過ぎてもう眠りたい。
助けて――。
最近ソルト様の出番が多くこいつがヒーローなのか?(疑念)
と思い始めたけどヒーローはローエルなので・・・。
兄様が出ると強制兄様ルートに入りそうなのでお使いに行ってもらってます>_<;




