40話 勇者君臨、されど無気力
「フー……ッ、さぁ!貴族諸君!王は俺が打ち取った!これからは俺に従え!」
静寂が走った後、降り始めの雨のような、まばらな拍手が部屋に響いた。どう考えても国を手に入れた人間を迎える態度じゃない。そこで神宮寺は思い出す。
「国民あっての国じゃないか!」
かつて魔王が世界に向けてそうしたように、俺もやるべきだと思った。
【全世界同時放送】正直、実利が半分。もう半分は憧れだった。だから神宮寺は魔法を手にした時からコレは使えるんじゃないかと考えていた。
神宮寺は壁にかかっている鏡を叩き壊すと、一番大きな破片を拾い上げてニヤリと微笑んだ。そして残りを細かく砕いて窓から撒いて呟く。
「【反射】」
大きい鏡の破片から粉の破片へ己の姿を【反射】。さらに別の破片に反射。それを街の窓、鏡などに反射。映像を国中に届ける。
最初の一言目は何がいいだろうか!やはりここは先人に倣って――
「こんにちは!」
「――俺は勇者だ!早速で悪いが本題だ!君たちは俺の下だ!王は殺した!だから正面から俺が歩いてきたら道を譲れ!俺に関係ないことでイライラしてるならその態度を表に出すな!それさえ守れば俺もお前たちを人として扱おう!あとは——」
人の気配を感じ、放送を止める。
「うへぇ、王様死んでんじゃん」
銀髪の少年が舌を出す。
「嗚呼、おいたわしや……我らが王よ」
角刈りが巨躯を震わせた。
[王直属部隊 墓守師団 『尊厳』『忍耐』到着]
「俺は勇——」
「勇者ってんでしょ?聞いたよソレ。おんなじ言葉しか喋れないの?オウム〜?」
「無駄に時間を使うな『尊厳』よ。ほら参ろう。王が呼んでおられる。」
巨躯が銀髪を撫でると一瞬にして姿を隠した。
「……あっ、【時間停止】」
慌てて時間を止め、辺りを見渡すがどこにもいない。まさか逃げたってことはないはずだ。奇襲なら2、3歩距離をとって時間を動かせば……
「え?」
時間を動かすと、銀髪と巨躯が王の死体の前に現れた。そしてまた消えた。
彼らの目的もわからず、どこに消えたのかもわからないので追いかけられない。中途半端に止めてしまった放送を再開する気も起きない。
「なんなんだ!」
ずっと握っていたガラス片を全力で投げる。
ガラス片は床で一回跳ねた後、壁に当たって情けない音をたてた。
「寝る!」




