38話 リメイク
「勇者ってのは、まぁ、なんだろ。打倒魔王を国民へアピールするために召喚ばれた人だよ。あと、そこの『敬意』ちゃんの仇を打つためでもあるね」
「あぁ、王都が『魔王』に壊滅させられたんですっけ」
「そ、国民の心の拠り所。造られた救世主ってとこかな」
「ははっ!サルバドーリさんみたいですね!」
「やかましいよクソガキ」
肩を小突きあった後、僕らはバルフラ王国へと帰ることにした。糸目女こと「敬意」さんには【魔王】の能力について聞きたかったが起きないので置いていくことにした。
けれど、どうせ国の惨状を見れば自ずとわかることだろう。
ボクは血濡れた草を踏みつけて新緑へと足を踏み入れた。
――
――――
「……まぁ、そうなるよね」
太陽をキラキラと反射する大海原を前に、サルバドーリさんは額を抑えながら俯いた。
居た堪れなくなり辺りを見渡すと爆発したかのような焦げついた大穴があった。やっぱりイリス連邦は治安が悪いらしい。
「えっと……もしかして……」
嫌な予感をビンビンに受け取りながらサルバドーリの提案を促す。
「あぁ、【英雄変幻】だ」
たちまちサルバドーリの髪の毛は真紅に染まり、背丈が伸びる。そして、いつのまにか薄く光る剣を帯びていた。
「はぁ、やっぱ、こうなりますよね――っ」
サルバドーリさんはボクをヒョイと抱え、翔んだ。
[大戦を終わらせた英雄は真紅の髪を靡かせて、その四肢は鋼鉄を裂き、空を駆けながら目にも止まらぬ速さで敵を蹂躙したとされる。]
大戦から数年後、このように誇張された活躍から酷く、重くかけられるプレッシャーに耐えかねたサルバドーリさんは適応してしまった。
頭から返り血を浴びて【肉体強化】で戦場を逃げ回った内気で優しい青髪の少年はいつしか【英雄】に乗っ取られてしまった。
だからボクはサルバドーリさんのこの姿が嫌いだ。
歯を食いしばって暴風に1時間ほど耐えていると着いたらしい。
目の前に広がるのは一面の砂漠。建物の残骸がたまに混じっているくらいで砂の海が広がっている。懐かしい景色もクソもあったもんじゃない。
だが、驚きはするが別に悲しくはない。生まれはこの国ではないし、この都市へは入学のために来ただけで住んでいたのも半年ほどだ。なのにどうしてだろう。少しだけ寂しい。
「これだと寮も無くなってますかね」
「そうだね。でも誰も死んでないそうだよ。お友達にでも会ってきたらどうだい?」
サルバドーリさんはわざとらしく爽やかに笑う。ボクに友達がいないことを知っているクセにこんなことを言っているのだ。何と不謹慎な男だ。
「まぁ、おいおい、そのうち――えっ」
砂漠と瓦礫に混じったガラス片から音がした。拾い上げて見てみると黒髪の男が閉じ込められている。……一体どんな魔法を使えばこんなに小さくなれるんだ。
「ねぇ、サルバドーリさん。この小人って……」
サルバドーリさんに見せようとしたが彼も同じものを持っていた。どうやらこの小男はガラス片に閉じ込められているわけではないようだ。通信魔法などの系統だろうか。
太陽に照らしたり振ったりしていると、ガラスの中の住人は話し始めた。
「あー!あー!マイクテスト!よし!……こんにちは!俺は勇者だ!早速で悪いが本題だ!君たちは俺の下だ!」




