31話 どっちにしろ激痛
両の鎖骨を断たれた俺に反撃はできない。腰に忍ばせたナイフも日の目を見ることなく、完全敗北だ。だが清々しい。この俺を打ち負かした存在は「魔王」以来初めてなのだから。
「あー、悔しいなぁ!」
青い一言を空に吐き、俺は倒れた。
だがニチュカ嬢は逃した。これなら安堂は逃げられる。試合に勝って勝負に負けたと言ったところだろうか。
横目で勇者一行を眺めていると、糸目の女が頭に触れてきた。
以前、嬢から聞いた限りだとこの女の能力は「記憶のコピー&編集&ペースト」だと予想している。おそらく安堂の居場所を読み取りたいのだろう。ニチュカ嬢が逃したであろう今、意味もないというのに。
「……ッ!あ゙ぁ゙!!」
不意の激痛。脳をちぎられたとしか思えないような耐え難い痛みが俺を襲った。今にも意識が……トびそうだ……
――
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「えッ……驚きました。この男、魔法を持っていません」
糸目女の素っ頓狂な声でかろうじて意識を取り戻した。
「むっ?!本当か!心を読むとかそんな能力じゃないのか?!」
「えぇ、本当です。生まれ持った天性の才能でしょうね。格闘技能、頭の回転、どれをとっても魔法と言いたくなるものばかりでしたが……驚きです」
マジシャンもこんな気持ちなのだろうか。
一流のマジシャンは決してタネ明かしをしない。今の俺も激痛とダメージで口がきけない。なんと歯痒いことだろう。
本来なら「へへーん、ざまぁみろ!俺は天才なんだぜ!」と煽ってやりたい。
「そして魔王についてですが……」
糸目女が話し始めたところで意識が落ちた。
だが俺にはこの先の展開がわかる。豊富な経験、膨大な知識からくる未来予知といって差し支えないほどのこの予測力。俺の才能のおかげだ。最後の最後で役に立ったな。――魔王の勝ちだ。
――
――――
「そして魔王についでですが……いえ、この者の記憶をお渡ししますね」
ガルフが神宮寺の頭に触れる。そして 彼は苦痛に顔を歪めた。
一緒に来た罪人やそこで転がっている魔王の仲間のように気を失うわけではないが、耐え難い痛みが彼を苛む。
「……は!?本当か?!」
与えられた情報に神宮寺は思わず声を張り上げた。
あまりにも衝撃的すぎて痛みなんて忘れてしまい、ただ頭を抱えた。
「まさか、こんなことがあっていいのか?!ありえない!こんなの人間であっていいはずがない!美しくない!」
「魔王は――俺が殺す!」
いまいち人を殺す踏ん切りがつかなかった神宮寺が決意した瞬間だった。彼は人間の心の美しさを守るために魔王を殺す。




