25話 トリガー発動
「痛ぇ……クソ」
昨日は飲みすぎたんだっけ。頭痛ぇし何も思い出せねぇ。誰と飲んでたんだっけ……って。
「知らない天井だ」
一応言ってみた。小さい木造の室内、ゆっくり体を起こすと心配そうな表情の女が2人。1人は橙色の髪の毛に華奢な手足、もう1人は年下っぽい黒髪の女、八重歯が尖りすぎている。
「お兄さん!」
目が合うなり飛びついてきたのは八重歯女の方だった。どう言うことだ?お兄さん?これはあれか……やっちまったのか?ワンナイト!しかも2人同時に……?!始まっちまったか青いキャンパスライフ!!
「あ、あー!ありがとう。まずは、おはよう!そしてここはどこ……だっけ?」
ゆっくり思い出すのだ。ここで「覚えてない」なんて言えば修羅場もいいところだ。
「ん?イリスのマオさんの家だよ」
「イリス?」
イギリス?国外?いやいや、そんなバカな。――そんで誰だよマオさん。もう面倒くさくなってきたな。短いキャンパスライフだったな。クソ。
「……ごめんなさい、昨日のこと覚えてないんです。あなたたちは誰で、ここは日暮里じゃないんですか?」
そう口にすると橙色女は「あなたこそ」と言い、八重歯女は膝から崩れて泣き出した。勘弁してくれよ。にしても何だここは。小屋か?電化製品なんて一切ないし、全体的に埃っぽい。
埒が明かないので女二人を押しのけて扉へと向かう。だが途中で足が止まる。
僕は鏡とは像を反射させるものだと認識している。ならこれは何だ?栗色の直毛に青い瞳。外国人だ。だが口をあんぐりと開けた僕と同じ表情、同じ動き。鏡に映る人物に心当たりがない。けれどこれは僕だ。
「おい、おい!ここはどこでお前らと俺は誰なんだよ!!」
――
――――
八重歯の女から全てを聞いた。
だが信じられない。「僕は超能力者で、失踪した恋人を探しに異世界に来ました。その体は異世界の住人の体です」って説明されたのだ。わけがわからない。
僕は千葉県の中流階級の家庭に生まれ、スイミングを習いながら地元の公立中学へ進学、そして平均的な高校へ入学して今は中堅私立文系大学に在籍している。この間、彼女なんていなかった。ましてや超能力が入り込む余地なんて皆無だ。
しかし、これは事実らしい。最初はドッキリを疑ったが「意識はそのままに身体を変えました!」なんて倫理と現代技術を超えすぎている。頬をつねっても痛い。……僕は、どうしたらいいんだ?
言いようもない焦燥感に苛まれ、心臓が奇妙なペースで拍動し続ける。
「勘弁してくれよ……」




