↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生薄幸令嬢の奇妙な愛人契約――イケオジパトロンか富豪貴族か――えっ二股愛人ですと?  作者: 赤城ハルナ
【第六部/最終章】クズな人たちの、クズな人たちによる、ドクズな契約

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/67

パーティーパーティーまたパーティー/カナン・ノースお披露目

~~~~~~

★ジェシー・ウエスト最後の決戦場です。相手がアイラではなく、女流作家カナン・ノースなので、混乱しているようです。

~~~~~~

 今夜はジョン・ミルズ邸にて、この国の芸術関係者が集うパーティーが開かれる。


 ミルズ氏は六十代の、顎鬚を鎖骨まで伸ばした精悍な人物で、数々の賞を経て一代男爵に叙任された画家だ。

 私――ジェシー・ウエストは芸術に疎いので、書店御用聞きアーチーからミルズ氏の画集を購入した。アーチーには、ギーズ家周りのダブルスパイになってもらおうかと思っている。


「最近のギーズ邸の様子はどうだ?」

「ギーズ夫人が里帰りしたようです、理由は分かりません」

「まさか、妻を追い出した?」


 まさか、ね。いや、アイラを義娘にしたあの男ならあり得る。それに、セントレ氏は娘を溺愛していると聞く。


 ミルズ氏の描く絵は全て女神だ。別名『女神男爵』。

 一日中女神を眺めていたので頭がくらくらした。見かけとは違い、私はそこまで女好きではない。悪友に誘われて(し、仕方なく……)娼館に通っていただけだ。


 私はあくまでも、平凡で幸せな家庭を夢見るロマンチストなのである。


 招かれているのは著名な画家、芸術通を名乗る上流階級、出版社やギャラリー関係者、ミルズ氏の信奉者などなど。ランベール・ギーズは芸術評論家として参加するらしい。

 ヤツの目的のひとつに、新進女流作家『カナン・ノース』のお披露目があるため、私はランベール・ギーズ経由でミルズ邸に招かれ、家令と伴に芸術家のパーティーとやらへ乗り込むことになった。


 つまり私は、『カナン・ノースの後ろ盾にはこんな人がいますよ、凄いでしょう!』ということを周囲に知らしめる駒にされたわけだ。


 タヌキ野郎め、お詫びなどと言いながら、カナン・ノース宣伝のために私を利用するとは! 私を決闘に巻き込もうとしたことは一生許さないぞ!


「初めまして、ミルズ氏。この度はロイヤル芸術大賞の受賞及び男爵への叙任、おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます」

「お初にお目にかかります、ヴェストル卿。パーティーに出席いただき、大変光栄でございます。今宵の女神たちを存分にご堪能いただければと思っております」


 会場の壁一面に飾られたミルズ氏の作品を、さり気なく宣伝された。アイラに最も似ている絵画を一枚買おうか。それよりも、女神になったアイラを描いてもらう方がいいかもしれない。


 芸術関係者の集まりだけあって、それぞれがユニークな服装をしている。貴族のみが集うパーティーとは一味違う。


「参ったな、フォーマルすぎる服装だったかもしれない」

「これでいいのですよ、伯爵であることを主張していけないことはありません」と、何を期待しているのか、いつも以上にオシャレした家令が言った。


 私はシャンパンをチビチビ飲みながら、今だお目にかかったことがない女流作家『カナン・ノース』の登場を待った。



※



 突然さざ波のようなささやきが、エントランスから湧き上がった。

 振り返るとそこには、上質なフロックコート姿の男性にエスコートされ、シルバーに輝くエンパイアラインドレスにミント色の巨大なリボンを羽のように纏い、白い花を散りばめたプラチナブロンドの女神が、滑る様に歩いて来た。


 ミルズ氏の絵画から飛び出して来た女神。

 髪の毛全体に編み込まれた花がこぼれ落ちそうだ。


 反対側には同様のドレス姿の妖艶な女性。ほんの少しだが、お腹が大きいような気がする。


(ランベール・ギーズとアイラと……ギーズ夫人! 里帰りしたのではなかったのか?)


 資本家ヨーク・セントレ氏の溺愛娘と、正統サウス家の令嬢を合法的に手に入れた、隣国ガリア野郎。


 気に食わないな。


 私は初めて『カナン・ノース』という名の女流作家を見た。


『アイラ』という、私が愛している女性ではない彼女。ウエスト家にいたときとは別人のようだ。

 儚さは残っているが、堂々とした彼女に目が釘付けになった。不思議な、不気味ともとれる目は、今や称賛の的になっている。彼女は女性たちに、『カナン・ノース様!』と呼ばれ、恥じらいながら微笑んでいる。


(ランベール・ギーズが固執しているのはアイラではなく『カナン・ノース』なのか?)


「ジェシー様、あの女性がアイラ嬢なのですか? 雰囲気が全く違いますね」

 家令が驚いている――私もだが。

「何といいますか……あんなにオーラのある女性でしたっけ? 不思議な雰囲気はありましたけれど」


 カナン・ノースが、ミント色の手袋をした手を差し出し、こぼれるような笑みでミルズ氏に挨拶をした。今や彼女は著名な評論家ギーズ卿の養女。ミルズ氏も、まんざらでもなさそうに談話している。


 そうなのだ、アイラはある種の男を惹きつける不思議な魅力を持っている。


 ランベール・ギーズ――理由はともあれ、私とエリーゼ・イーストとのややこしい問題を見事に解決した。私がもっとしっかりしてさえいたら……。

 自分が情けない。


 それでも私は、ヤツから彼女を奪う!



※



 最近になってようやく、カナン・ノース作の小説を読んだ。


 彼女の令嬢奇譚小説は、残念ながらあまり興味が持てなかった。どこの世界の話なのかとしか思えない破天荒な内容。だが主人公の置かれた境遇などは、彼女を思わせるものがある。それに、あの様なシンデレラ・ストーリーは、女性にとっては永遠の憧れなのだろう。


 だが二作目の長編小説、アレは何だ!?

『悲劇の令嬢/百花繚乱官能の日々』!?

 十八禁じゃないか!


 ランベール・ギーズめ、アイラにあんな小説を書かせるとは!

 まさかアイラにはあんなケシカラン経験があるのか!?

 誰と?



~続く~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。