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【完結】転生薄幸令嬢の奇妙な愛人契約――イケオジパトロンか富豪貴族か――えっ二股愛人ですと?  作者: 赤城ハルナ
【第六部/最終章】クズな人たちの、クズな人たちによる、ドクズな契約

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ランベール・ギーズの受難

~~~~~~~~

★仕事はデキても性格に難があるランベール・ギーズ。エレンとの関係は複雑奇怪。

★ランベールとアイラの関係も複雑です。以前読んだフランソワーズ・サガンの小説が興味深かったので、愛の形は色々なんだなと思いました。

★真打登場回です(少ししか出ません、スミマセン)。

~~~~~~~~

『アイラはすぐにでもここを引き払わせる! これ以上我々を引っ掻き回さないでいただきたい!』


 僕はジェシー・ウエストの胸を狙って剣を突きつけようとした。殺したいわけではない、戦意を削いでアイラを諦めさせるのだ。


『ランベールお義父様、やめて! ジェシー様を傷つけないで!』


 ジェシー・ウエストを庇って僕に背を向けるアイラ。

 あんなクズを庇うのか!?


『ア……アイラ……こんな情けない男を……』


 それからどうなったのかはうろ覚えだ。確か僕は剣を投げ捨てて……。


『こちらです、ボス!』


 ボス?


『ギーズ、この大馬鹿野郎!!!』


 ガタイのデカイ大男が距離を縮めて来た。いきなり腹を殴られ、僕は地面にめり込んだまま意識を失った。



※



 ここはセントレ病院の特別棟、精神疾患の患者用だ。窓が鉄格子になっている。

 閉じ込められた。

 フッ、僕はまたヨーク・セントレに殺されかけたんだな。


「ここまで愚かな男だったとは!」


 やめてくれ、首根っこを掴(つか)まれているから息ができない……。


「商売人というのは表向き善良な市民でなければならない。気に入らないヤツがいたら裏で何とかしろ。何のためにセントレ実動部隊が存在すると思っているんだ」

「それ、は……グッ……」

「あんな小娘に入れあげてんじゃない、一年以内にエレンに子ができなければお前を消す。その前に子爵家の全財産をエレンに残すという遺書を書け。セントレがギーズを継いでやる」

「ウッ、息……息が……」


 それはヨーク・セントレからの最後通告だった。



※



 今僕は、大いなる反省会をしている。こんなに落ち込むのは、祖父母が処刑され国を捨てたとき以来だ。


「いい加減にしなさい!」


 バッチーン!!


 な、殴られた……若妻に……殴られた!


「ランベールはギーズ家当主、次期セントレのリーダーなのよ! いい年して、たかが小娘一人のために馬鹿仕出かしてんじゃないわよ!」

「……すまない」

「今回のことはパパに頼んで葬ったけれど、次はないわ!」

「セントレ氏を呼んだのはエレンだったのか?」

「ウォルティーよ。閉じ込めたのもウォルティー」

「あ、あぁ……」


 アイツはセントレの犬だからな。


「……もう、いいです。離婚しましょう。こんな情けない夫など不要でしょう。エレンはお似合いのフリップを迎えればいい」

「何を言ってるの、離婚なんかしないわよ」

「僕のことなど、どうでもいいのでしょう」

「あのねぇ……」

「貴族籍が目当てで僕を嵌(は)めただけでしょう?」

「だったら何なの、よくあることじゃない。ランベールだってセントレの金をとことん使ったくせに!」

「あぁ、そうですよ。お陰でこの国での地位を得ることができました」

「何が気に食わないの!?」


 エレンの前で、僕は首(こうべ)を垂れた。(少しだけ)やり過ぎたかもしれない。(少しだけ)反省している。


「情けない夫で……すまない。あなたにはもっと相応しい男がいる」


 可哀そうなエレン。

 本当ならフリップみたいに年が近くて麗しい青年こそがお似合いだろう。しかし僕のようなクズと結婚してしまった。

 フリップをペットにしたままなのは頂けないが。


「離婚なんてしないって言ってるでしょ!」

「僕は地に落ちた……もう立ち上がれない」

「ランベールらしくないわよ、もっと堂々としてよ!」

「僕はもう……」

「卑屈なことを言うのは、もう、やめて……」


 いきなりエレンが泣きだした。

 泣いた?

 エレンが?


「いつものように悪だくみしてちょうだい、堂々としてちょうだい、こんなのランベールじゃない!」と言って、僕の胸をしきりに叩いた。


 えっ、そういうことだったのか!?


 何ということだ!

 今まで気付かなかった。

 エレンは僕のうしろにヨーク・セントレを見ていたのか!?


 僕は何も守れない。

 血のクーデターのとき、目の前で祖父母は処刑された。

 哀れなアイラを守ろうとしたら、情けない男を庇いながら逃げられた。


 それから数日間、強制的にセントレ病院に監禁された。

 いっそのこと死んじゃおっかな。

 できない――情けなくても無様でも、ギーズ屋敷の亡命連中やアイラを残して死ねない。僕にはやらなくてはならないことがある。



※



『わたし、ランベール様に会えて幸せです』

『ランベール様がいるから、この世界で生きていけるんです』


《僕のエンジェル!

 手放すものか!

 夫となる男は僕の監視下に置き、馬鹿なことをしでかさないよう常に管理しなければならない――アイラを裏切ったら死をもって制裁する!》


 あぁこれは――セントレ義父が常日ごろ僕にしでかしていることじゃないか。


『ギーズ卿、娘というものは、いつかは離れてしまうものなのだ。そもそもお前が俺から奪ったのだろう。だがな、夫とは離婚できるが父親は永遠なのだ。いざとなったら離婚させればいい。お前がバカをしでかしたらエレンとは別れさせる』


 祖国のワインでようやく冷静になった。気持ちが落ち着く。この国へ来てからときどき精神が不安定になる。非常に良くない傾向だ。



※



「……結婚してからも、奥様はパパといつも一緒ではないですか。こんなにセントレパパが羨ましいと思ったことはありませんよ」

「わたしは、と・く・べ・つ」

「アイラは……僕をどう思っているんだろう。見放されたんだろうか」

「それなら、あの子をわたしの弟子にする。義娘だもの、当然よね」

「ウッ……それは……」

「ランベールの許可は必要ないけど」


(ダメだ、危険だ、という声が聞こえる……)


「次はウエスト家を狙うわ」


 僕は……奥様が恐ろしい。


「もしかしてですが、奥様はコッソリ離婚届を隠し持っていたりするんですか?」

「どうかしら? 最近は見てないけど?」

「フッ……そうですか。僕はただ、アイラを情けない男に預けたくないだけなんですよ。嫁がせたくない訳ではない」

「結婚したとしても、いなくなるわけじゃない。今だってギーズ家の都合で連れ回しているじゃない。だったらセントレ家も問題ないわよね。財界のパーティーに連れて行くことにする」

「財界……(アソコは倫理観が怪しいのだ、道徳的によろしくない)」

「随分弱気なのね。ランベールらしくなくてよ」

「……あの娘の前では強がっていても、僕は弱くなるんだ」

「もうっ、しっかりして! 来年にはランベールの子が産まれるかもしれないのよ。これ以上沈まないでほしいわ」


「ナ、ナンダッテー!?」


 そういえば、あのとき……いや、あのとき?

 だからセントレに帰ったのか?

 早くも危機脱出か!?


「そ、それは、僕との子でしょうね!? 金髪の子が生まれたら離縁ですよ!」


 バシッ!

 た、叩かれた!

 またエレンに……叩かれた!!!


「あなたにそんなことを言う資格があると思ってるの? さ・い・て・い! ドクズ!!!」

「……どうせ最低なクズですよ」

「フリップはパーティー用のペットよ。ランベールこそ、おかしな所で遺伝子をばら撒いてないでしょうね? 隠し子が現れたら片っ端からパパに消してもらうから!」

「ま、まさか、僕は奥様一筋なんですよ?」

「どうして疑問形なの? 聞き飽きたわ、その言い訳!」

「ハァ……もう言い合いは止めましょう。今まですまなかった……」

「また謝るの? 何に対しての謝罪なの?」

「色々……まぁ、なんというか……だね。子供は絶対に守る、誓う」


「あ・た・り・ま・え」



~続く~

〜〜〜〜〜〜

☞ランベール・ギーズのクズ度はもともとではなく、祖父母の処刑に関係ありそうです。アイラに会って紳士度が増し、少しは矯正されたはずなのですが……。

〜〜〜〜〜〜

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