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【第二部完結〜第三部へ】転生薄幸令嬢の奇妙な愛人契約――イケオジパトロンか富豪貴族か――えっ二股愛人ですと?  作者: 赤城ハルナ
【第二部】スキャンダル王ランベール・ギーズの憂鬱

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19/22

孤独な薄幸令嬢

~ ~ ~ ~ ~

『親愛なるランベール・ギーズ様


皆様その後いかがお過ごしですか。

先日はたくさんの差し入れをありがとうございました。


最近離れには、タオルやリネン、お菓子や果物などが、『使用した物やごみ屑などは籠に入れて玄関扉の前に置いて下さい』というメモと一緒にバスケットに入れられ、扉の前に置かれるようになりました。

早朝黒服が見えたので、執事さんかと思います。


わたしを気遣ってくれる人がいたんですね。嬉しいです。


以前のように街歩きしたいし、ティールームへ行きたいし、できれば旅行へも行きたいと思っています。馬車は少し苦手なので、列車旅ならできるかもしれません。


できましたら女性用のタオル、石鹸、化粧水、ボディローション、各種薬など差し入れていただければ助かります。


出版社の皆様にお会いできるのを楽しみにしています。


アイラ・サウスより』

~ ~ ~ ~ ~



 それから何回か、使用人を巻き込んだエリーゼ・イーストの襲撃があった。そのたびにわたしたちは『かるたバトル』をしつつ、何かが壊れた。

 何だろう、この、ストレス発散大会。

 伯爵家の使用人は彼女をとがめもせず離れに通してくるから頭に来る。わたしは伯爵様の『お連れ様』なんだけど。


 当主様不在、使用人を味方にしたヒステリー女の暴行、放置DV。

 ジェシー・ウエスト、エリーゼ・イースト、ウエスト邸の使用人。


(覚悟しておきなさい、元凶ジェシー・ウエスト!)


《ハゲろ、ハゲてしまえ、 髪の毛一本だけ残して丸ハゲになってしまえ!》


 わたしは『ジェシー・ウエスト ハゲろ』『エリーゼ・イースト ブタになれ』『ウエスト邸の使用人 梅毒でしね』と、恐怖文字書体風の日本語で書いた三体の呪いの布人形を作り、木に縛り付けた。ジェシー・ウエスト人形には、髪の毛を一本だけペンで書いておいた。


(さあ、これから丑の刻参りよ!)


 五寸釘はないので、憎しみを込めて呪いの布人形をゲンコツで何度も叩いたら、血濡れの布人形になった。


 その後、女性書店員が面会にやって来た。


 椿油で櫛削ったようにつややかなブルネットヘアーを後ろでまとめた、目鼻立ちのくっきりした女性。

「ギーズ卿のお使いなんです。こういうことは女性にしか分からないから、もっと早くに来るべきだったんだけど……ごめんなさいね。侍女がいないようだったから、必要だと思って」

「ありがとう、ございます、助かります」


 渡されたのは、大量の生理用品とタオル類だった。


「執筆は進んでいますか? フリップがリライトするから助かっているようだけど、もう少し文法と語彙のお勉強をした方がいいんじゃないのかしら?」


 いきなりそんなことを言われても……分かってはいるんだけど……この世界の学校へは行ってないし……。


「……分かり、ました……」

「ここなら気楽でしょう、居室を散らかしたって誰も非難しないものね……応援しています、しっかりね!」

「ありがとう、ございます?」


(叱られちゃった……のかな? 何者なの? ランベール様の愛人一号? にしても、叱られたのか励ましてもらったのかよく分からない)


 とはいえ、凄く助かりました。ギーズ出版社の皆さま、ありがとう。





 薄霧が立ち込める午後、何もやる気がなくて、庭園のベンチに座ってぼうっとしていた。最近のわたしは夢遊病者みたいになっている。

 二週間ごとに訪れるアーチーさんやギーズ出版社の人としか話をしていない。それもわずかな時間だけ。また話せなくなるかも。


 ここは監獄。

 サウス邸よりもキレイだけれど、誰もわたしに話しかけない。


 足元にゴルフボールが転がってきた。


 これは――タンディーさん?


 通りの向こうにスーツ姿のタンディーさんが手を振っていた。使用人には見えない。

 拾ったのはゴルフボールに見える、チョコレートを布で包んだものだった。


「タンディー、さん、わたしをここから、出して!」

 夢中で錬鉄フェンスを握りながら叫んだ。


「アイラお嬢様、屋敷の連中に見つかるとマズイ、声を出さないで……」

「なんで……」

「お嬢様は伯爵様の想い人ではという噂があるんだ」

「会ったこともないのに?」

「ほかの男と会っていてはマズイから、また様子を見に来るよ」

「あっ、待って……」

「オレ、お嬢様を守れるようになるから!」


 手を振りながらタンディーさんは消えた。





 翌日の昼下がり。

 その日は視界に入るものすべてが霧で覆われていた。

 足元にコツンと石が転がってきた。

 錬鉄フェンスの向こうに大男ともう一人の影……。


 近付いてみると、タバコを咥えているその姿は……。


『ランベール様!』と叫んで駆け寄ろうとしたら、ランベール様は片手を上げてわたしを制した。


「どうして?」


 こんなに近くにいるのに、どうして誰にも会えないの?


 俯きながらひとときタバコを吸うと、小さくなった吸殻を足元で潰し、ランベール様は霧の向こうへ去って行った。


 わたしはその様子を黙って見ているしかなかった。





【オマエを絶対許さない】

~~~~~~~~

☞このころから文学青年フリップ・セシルの野望(アイラの小説を自分勝手にリライト)が加速します。

~~~~~~~~

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