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アルカロイドに眠る妖精-Alkaloids of the gods-  作者: 可燃性少女
第三部【無闇矢鱈に輝くな】

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Ep.72『声だけで分かり合えたら』

 離婚した。

 愛はあった。子供も考えていた。貯蓄もしていたし、家も買った。

 ただ、愛を伝えられなかった。

 だから、離婚した。


 ラザロ卿は違った。

 彼は、伝えずとも愛を受け取ってくれた。伝えられずとも、愛を感じられた。彼が信じる神が、それを与えてくれた。その薬の名前を、アダムスと言った。けれど、教会はそれを認めなかった。偽物だと言った。偽神だと中傷した。

 破門されたことに文句はなかった。ただ、私たちの神を否定されたことが許せなかった。

 愛情を伝達し、言葉にせずとも心を通わせる、そんな、苦痛を取り去る薬。そんな福音を、私たちの神はもたらしてくれた。果たして、教会が信じる神は、そんなものをもたらしてくれただろうか?


 だから私は、覚悟に歯根を噛み締める。


「墜ちろ『失楽園(インピィダンス)』。」



 タグが見えそうなほどにクリーニング直後の様相を見せるワイシャツ、端正に締めたネクタイには、魔煩のデザインをあしらったピンが留められている。淡いベージュのジャケットとスラックスは、完成されたスタイルに完璧に適合するように仕立てられていた。彼女が一段、また一段と歩く度、その上に着たコートの裾が柔らかに揺れる。

「愛してる、愛してる……愛してる。」

 さながらマフィアの女ボスのような立ち姿では、呟く言葉の可愛らしさも底知れぬ怖さに裏返る。

 足取りはどこか軽快になり、階段を駆け上がる速度も上がる。

「愛しているわぁ……リゼルキルトくん。」

 女───セスタ・クリスタルベリーは、懐から注射器を取り出した。

 緻密な意匠が凝らされていて、薬物中毒者が仲間内で使いまわし、路地裏に捨てるような質の悪い物とは全く違った注射器だった。

 優雅な動作でコートから片腕を抜き、ワイシャツの袖を捲る。注射針は、彼女の腕の皮膚に滑らかに分け入り、寸分違わず静脈に薬液を注入する。

 循環器系に取り込まれた薬液は、効率的に血液─脳 関門を通過し、受容体に結合する。その薬理作用が、彼女に名前を呟かせる。

「『涙で一晩を過ごせるか(クリスタルメス)』。」

 水晶のような澄んだ結晶がセスタの額からせり上がった。右目にかかっていた前髪を少しばかり避けたそれは、いくつにも連鎖して髪飾りのように結実した。

 淡い水色を纏った銀の髪。翻り、揺蕩い、たなびいた。憂うような表情が、冷たく眼下を見下ろしている。

 服装を正したセスタは、背後、揺蕩う妖精の名前を呼ぶ。

「オルタネート。」

 階段が終わり、一体何段あったのかもわからないような長い道のりにピリオドを打つ。その一歩を踏んだときに、水滴にも満たない霧のような水分が、セスタの肌を湿らせた。

 水槽の上を渡す、格子の足場。轟々と流れる水流の音。それは、彼女が出資し、マフィアが作り上げ、そして、バルデリーニが終わった、浄水場だった。

「来なさい、異端者。」

 向かい側の階段を上ってきた女。黒衣に身を包み、わざとらしい十字架を首に提げている。ローブの上からでも見える豊満な体つきと、柔らかな雰囲気の顔立ち。ラザロ教団、教団会議が一角、インクィタス大司教であった。

「争う必要なんてない。そうでしょう?だって、私たちはわかり合える。」

 女は既にアダムスを摂取していて、その薬理作用は、彼女に異能の力を授けている。

 「わかり合える。」と、インクィタスは言った。

 共感した。セスタは少なくとも、その言葉の表面上の意味に頷いた。果たして含意については思考しなかった。反駁しなかった時点で、セスタはインクィタスの言葉に価値は感じていなかっただろう。セスタ・クリスタルベリーの審美眼は、その言葉に評価額を付けなかった。

「いけないわぁ、オルタネート。アタシと彼女は、通じ合っているらしいの。」

 努めて幼い声を出したセスタは、その内心の嘲りを隠そうともしなかった。呼ばれたはずの妖精───オルタネートは応じなかった。代わりに、軽蔑するような視線をセスタに向けた。その妖精の顔立ちは、セスタにも、あるいはフラクタルにも劣らないほど完成されている。

「アタシが貴方を殺す、っていうのが通じ合ってくれているなら、自分で首を落としてくれてもいいわよ?」

 セスタは、自身の腕に薬液を注入した端正な意匠の注射器を、まだその手に持っていた。

 持ち手のリングに指先を嵌め、自身の腕にそうしたように、ボタンをゆっくり押していった。しかしその矛先は、つい先刻と違い、偽神の妄信者に向く。

「撃って、『涙で一晩を過ごせるか(クリスタルメス)』。」

 針先が虚空に突き刺さり、注入された力が虚空を破裂させる。鳴り響いた発砲の音、インクィタスは黒衣を翻し、真横に跳んだ。セスタの撃ち放った第一射。水晶のように透き通り、ダイヤモンドダストのように輝きを振りまく。

 それは、夜空を駆け抜けていく流星のように見えた。走った軌跡にはダストテイルが靡き、やがて空間が凍てつく。奪い取られ、消し去られた熱。

 インクィタスは、ふと違和感に瞳を擦り、しゃり、と零れ落ちた凍った睫毛を瞬かせて、すぐ隣を通り過ぎて行った流星の行方を追った。振り向いた先にある空の一角、舞い落ちる天使の羽のように、氷結し、キラキラと輝いた空気中の水分が降下している。

「知っているからしらぁ?」

「なにを、ですか?人の子。」

 雪のような儚い金の前髪を少しばかり構う。その腕の動きで、コートの裾が揺れた。全ての動作は緩慢で、セスタという女にとって、今の攻撃行動がとるに足らない威嚇射撃だったのだと思い知らされる。

「アタシたちのボスは、燃え上がってしまって、もう、どうしようもないくらい情熱的になってしまうときがあるのぉ」

 インクィタスは指先を折り、その動きの鈍さを確かめた。局所的に気温が下がった。指に血が通わなくなった。しかし、そのどれもが、彼女の行動の鈍重さを証明しない。凍てつくような資本主義中毒者の瞳、それだけが、インクィタスの身体を縫い留めていた。

「熱い、熱い炎。リゼルキルトくんは、それを思い出す。」

 かつて、彼の両親を、あるいは彼を、そして、彼が恋焦がれた或る少女を、灼いた熱。

「ずっと、昂揚し続けている。」

 かつて、彼に一歩を踏み出させた、とある貧民街の娘。その肌を這った、或る痛覚と、その熱。

「彼の副交感神経は遮断されていて、その上、交感神経は絶えず動き続けている。安らいで、信じて、託そうとする神経が、戦って、猜疑して、燃え上がろうとする神経に上塗りされている。」

 全てを背負い込み、愛す者全てを遠ざけようとした、とある男の姿、その脳内で再燃した、とある熱。

「小さな刺激が、彼の精神を摩擦して、跳ねた火花が彼を着火させる。あの日を、フラッシュバックする。」

 炎はずっと、リゼルキルトの瞳の中で燻っている。少しの刺激でその勢いを思い出し、再燃する。やがてそれは極端な結論に彼を走らせ、そこに休養を要請する神経は、火の色に上塗りされて遮断される。

「そうやって怯えて、覚悟に踏み出せないでいる彼が、泣きそうになりながら、声を震わせながら、逆耐性現象に抗い、自然再燃現象に苦しみながら、燃え上がった火をこの国に解き放つ。」

 彼の中で燃え上がった炎の中で、彼はずっと、夢を見ている。

 燃えている麦畑の中に、あるいは、燃えているバラックの中に。失ってしまった少女と、傷つけられてしまった少女を。

「彼を冷ましてあげられるのは、アタシだけなの。」

 突きつけたままの注射器の銃口。「MSCS、ですのね。」口の中だけで呟いたインクィタス。状況はそれだけで十分だった。放たれた極寒の閃光が、空間を席巻する。熱を呑み込んでいく。空間の運動量を悪戯に変質させるそれが、不規則な旋風を巻き起こし、小さな結晶の粒子がキラキラと舞う。

「『失楽園(インピィダンス)』。」

 輝きを放ち続ける凍てついた弾丸。それはやがて、インクィタスがかざした掌に激突し、即座にせり出した結晶が粉砕されて砕け散る。凍結を封じ込めたセスタの一撃は、依然、インクィタスの掌を削り取るように在り続けた。しかしそこに、第一射のような圧倒的な突破力は見えない。訝しんだセスタが気付くより先、インクィタスの指先が輝きを握りつぶす。

 鉱物が砕かれるような甲高い音がして、閃光が霧散する。

 インクィタスの指の狭間を血液が滑り落ち、格子の隙間をすり抜けて轟々と流れる水流でぐちゃぐちゃに流れていった。

 自身の一撃を正面から受け止められても、セスタは取り乱さなかった。つまらなそうにインクィタスを見て、直ぐ傍にいたオルタネートを見て、そうして、小さなため息を吐く。緩やかに持ち上げた指先で虚空をつまみ、擦り合わせた人差し指と親指の感覚が、セスタ・クリスタルベリーの高精度温度計として機能した。

「熱エネルギーの発散、というより転化ねぇ?だから───伝達抵抗力(インピーダンス)。」

 セスタが凍土に埋めたこの空間が、この一瞬の鍔迫り合いで適温に満たされた。

 彼女の一撃にたわめられた、まだ名前のついていない或るエネルギーは、インクィタスがその手中に収めていた、まだ名前のついていないある等式によって熱エネルギーへと変換され、そしてそのエネルギーは、セスタの生み出した低温世界を適温に慣らして見せた。

 それは雪解け、あるいはエネルギー損耗である。立ち現れた春の向こう側、インクィタスが走り去っていくのが見えた。

「素晴らしき損切りだわぁ……!戦略的撤退、かしらぁ?」

 セスタの世界、この浄水場は、もちろんマフィアの作り出したそれを模していたものの、それそのものではなかった。内部構造は、彼女の思考回路に似た複雑さを持ち、彼女の資産総額を誇示するような奥行きを持っている。

 インクィタスの逃げ込んだ管理棟は、都合十二階建ての高さを持ち、そこを階段だけで駆けあがるのは億劫であった。

「オルタネート、あれ、崩せるかしら?」

 セスタは、構えていたMSCSを下ろして傍らの妖精に聞いた。一言も言葉を交わさず、しかし、その表情からは不機嫌しか読み取れない。けれど、言わなければ伝わらないし、示さなければわからない。特に、現実主義者のセスタは、言質のない意思表示を信用していなかった。

 辟易した様子のオルタネートは、しぶしぶ頷き、セスタはそれににんまりと微笑んだ。

「出力を上げるわぁ───アーヴィング。」

 注射器型のMSCS『アーヴィング』が、その極小化された内部構造を駆動させる。セスタ・クリスタルベリーの脳に接続し、その異能の一端を借り受けて、管制する。魔素(Mana)走査型(Scan)戦闘(combat)基幹(core)システム(System)───MSCSの、その本懐。脳に接続するMSCSが、脳に由来する異能を操れない道理はない。

 充填される薬液は、セスタの脳漿、異能の力。その圧力を完全に御し、一切の揺らぎもエネルギー損耗も引き起こさない。

 高出力の異能を管制し、セスタ・クリスタルベリーはトリガーを引いた。

 射出された極小のレーザーが、管理棟を貫く。凍結した結晶はすぐさまに顕現し、管理棟を半ばからへし折った。粉砕されたコンクリートが撒き散らされて、巨大な建造物が倒壊する轟音が鳴り響く。亀裂と共に管理棟を駆け上っていく、破壊に費やされなかった余剰エネルギーが、更に上階、また上階へと建物を分解していく。

 壁も窓も床も天井もないまぜになって、余った破壊力が屋上を貫いて一際強く輝いた。

 飛び出す、小さな影。

 黒衣をはためかせ、中空を翻った影───インクィタスの血まみれの指先が、小さな銃を模している。銃口はセスタを向いていて、銃身には紫紺の稲妻が走る。銃床でたわめられた雷撃が、中空を迸る。トリガーが引かれた。

 緩慢な動作で首を倒したセスタの頬を、雷撃が掠める。背後で炸裂した破壊力によって、格子の足場は焼け溶け、奇妙な形にたわんで硬化した。人間の生身で受ければ、骨まで灼かれて肉を炭化させるような威力だった。

 コートのポケットにひっかけたままの手。セスタは、ただ歩くだけだった。次々と飛来する稲妻を最小限の動きで見切り、その中に紛れるコンクリートの塊もひらりと躱した。

 検めた敵の姿。インクィタスは、側頭に瓦礫によって打撃を受けていて、血液を靡かせていた。

 どうやってあの一撃から逃げ延びたのか、中空を泳ぐインクィタスは、緻密な物理法則によって投げ出されていて、セスタの頭上に達した。見送ろうとしたセスタの直上で、インクィタスの軌道が突如に変わる。ぎゅる、と落下に舵を切った肢体。インクィタスの背後で炎が燃え上がり、セスタに影を落とした。

「墜ちろ───」

 指先で囲んだ円がスコープとなり、胸元で構えた指先がトリガーを引く。自動小銃のようなフルオート射撃、弾丸は、雷撃を伴っている。次々と着弾し、稲光と爽快な雷鳴を響かせる銃弾。足場が焼け溶け、立て続けの熱エネルギーによって炸裂する。鉄臭い噴煙を纏いながら、セスタが立っていた足場が階下の水槽に転落する。水柱が連鎖し、やがて流されていった。

 踏みしめる足場を失ったインクィタスは、重力にその手を引かれながら落下した。しかし、問題はなかった。このまま水流に呑まれたとしても、既に敵は無力化した後だった。安堵の息を吐き、瞳を閉じた。

 鳩尾に的確にミートした拳撃の威力に、内臓が激震する。

「うぐッ……ぇ、……!?」

 隣の足場まで吹き飛ばされ、その柵に激突する。辛うじて柵を掴んだインクィタスは、呼吸もままならない身体に鞭を打ち、なんとか自身の身体を引っ張り上げた。喉奥からせりあがってきた吐瀉物を吐き出して、口腔を不快に残響したひび割れた呼吸音を聞いた。

「運動エネルギーも熱に変換できるのねぇ?アタシとしたことが、そこまで考えてなかったわぁ」

 討ち果たしたと思っていた女は、死んでいなかった。それどころか、ただの一撃も、ただのかすり傷もなく、不敵に笑っていた。

 水流の一部が凍結して、彼女のためだけの道が作られていた。ただ、それをゆっくりと歩いて、セスタは拳を緩め手を振った。彼女にとってそれは、インクィタスが見せた不可解な軌道の種明かしでしかなかった。自分がそこで生き残ったことは当たり前のことで、わざわざ取り立てて話すことでもなかった。

「接近すれば、アタシに手札がないと思ったかしら。だったらごめんなさい。」

 水流から水晶がせり出して、階段を形作っていく。セスタはそれを勿体ぶったように上り、ついにインクィタスが蹲る足場へ到達した。

「武器商人をあまり舐めないことね。」

「許されませんわ……神の力が、及ばないことなんて」

「貴方達が祈っているところは、ついぞ見たことがなかったわ。」

 息も絶え絶えのインクィタスの言葉は、即座に放たれたセスタの言葉に中断させられた。

「神も、言葉を欲するんじゃないかしら。」

「必要、ありませんわよ……主は全てをわかっておられます。そして我々も、通じ合っている。言葉などなくとも、何かを差し出さずとも」

 だから、とセスタはまたしてもインクィタスを黙らせた。

「だから、貴方達のそれは偽物なのではなぁい?」

 インクィタスの柔和な表情に激情が湧き上がり、怒髪天を突いた衝動が内臓の軋みを忘れさせた。飛び上がったインクィタスの指先がセスタの眼前に突きつけられ、迸った雷撃が───セスタの掌がインクィタスに触れている。

「ぇ」

 溜めもなく、拳も固めていなかった。セスタは、郵便物でも投函するように気軽に、インクィタスに触れただけだった。

 血管の中を、血液の代わりに冷水が通っている。あるいは、氷塊が蠢いている。錯覚、されど、眼前で自身の身体は冷気を吐いていて、身体の真芯にあらゆる方向から突き刺される脳を痺れさせるような激痛は、現実だとしか思えない。

 受け身も取れずに背中から倒れ、インクィタスは空を眺めた。視界の中に、微笑を浮かべた女の、端正な顔立ちが割り込んでくる。

「アタシは無神論者だけれど、この世界で最も信じられている神のことを知っている。

 アタシは実用主義者だけれど、どうして愛を伝えるべきなのか知っている。」

「あな、たに、主のことが、わかるものです、か」

「傲慢なのよ、貴方達。」

「われわれはぁ、!」

「全てをつまびらかに開示して、勇気を振り絞って言葉にする関係性。愛を、貴方達は履き違えてる。」

 セスタの冷たい瞳。憎しみや軽蔑、それすら含んでいない、無感動で無関心な、酷薄な瞳。それが、インクィタスを酷く底冷えさせて、その声を続けさせなかった。

「楽だったでしょう?言葉にしなくても通じ合っている。何をも必要とせず、快楽に身を委ねていればいい。羨ましいくらいだわぁ……それが、本当に愛だったなら。」

 既に、セスタの興味はインクィタスには無く、視線も、どこかを茫洋と眺めていた。

「貴方達は何もわかり合っていないし、一度(ひとたび)も本物の愛を持ちえなかった。そうして遂には、本物の神からも見放されて、偽神を信仰する魔薬中毒者に成り果てた。」

「……ことば、だけでわかりあえるって、知ってたら……私も、苦労しなかったわよ」

 インクィタスは初めて、神を介在させない言葉を吐いた。大司教ではないインクィタスが、夫と関係を分かち、愛を失った女が、その言葉を吐いた。

「言えなかったんだもの……それくらい、わかってよ。」

「言葉で分かり合えるなんて、ロマンチストねぇ、貴方は。」

 濁ってしまって、興味を失っていた瞳が、インクィタスを見て微か、輝きを取り戻す。

 少なくともその瞳には、つい一瞬前の酷薄な色は見えなかった。

 セスタ・クリスタルベリーは言った。愛を司る彼女は、自身の中に埋没したとある原理を語った。

「アタシたちは絶対に分かり合えない。そう分かり合った瞬間に、コミュニケーションが始まる。」

 立ち上がったセスタの背後、たなびいた雪色の髪。


「ただ声を出すだけの努力もしなかった人間が、簡単に分かり合っているなんて言うのは、傲慢だわ。」

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