11 親父達の二次会
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1
「《水月》」
魔熊達の上空に直径三十メートル級の水球、上級殲滅魔術《水月》が発現した。
「「「ガウウウウゥ! 」」」
魔熊達が水の重量に押しつぶされる。
「《火柱・極》」
《水月》に向かって中級魔術《火柱》が発現される。
ボワァァァァァァァ
その《火柱》は中級魔術であるが上級魔術相当の威力であった。
バッサーン
《水月》と《火柱》の衝突により魔熊達は水蒸気爆発に巻き込まれた。
「皆! 逃げろ! 」
「《砂遊び》」
アルパインが皆に声をかけるが、視界が悪く目の前すら濃霧で分からない。
「いくぞぅ! 《拳骨・岩砕き》」
ドッゴーン
「「「ガウウウウゥ! 」」」
その一撃は地面を割り魔熊達の足元が崩れた。魔熊は成す術がなく身動きが取れなくなる。
ボス熊は焦ったがこの不可解な現象に眷属たちにどのような指示を出せばいいか混乱している。野生の魔熊であれば、危機生存本能により逃げるだろう。だが、フューネラルにより作られた魔熊達は、危機こそ感じるもののフューネラルの命令を遂行することを優先するために逃げるという選択肢は存在しない。
彼らは常に狩る側の狩人であり、狩られる側の立場ではなかったのだ。
「《水月》に《火柱》、《土壁》それにこの地割れは……まさか、そんな……ありえない」
アルパインはスイにレツ、おやっさんを思い出した。
アルパインは後ろを振り返ろうとした刹那に……
キャハハハハハハハハ
子供の無邪気な笑い声が聞こえた。
2
キャハハハハハハハハ
その笑いごと共に連撃が聴こえる。
「四極、元つ月、木更月、弥生、卯の花月……」
「ワオオオオン」
アルパインの耳には確かに聞えた。
『絶剣』の笑い声と狼の遠吠えから『大剣夜朔』を振るう空気を切り裂く轟音が……
「なぜ、ここに『絶剣』と『夜朔』があれはアーモンドの坊やが持っているはずだ。ランの『夜森の杖』はリーセルスが、『皆中』に『拳骨』は後宮長エミリアが迷宮討伐に持って行ったはずだ……」
「「「ギャアアアアアアアアアア! 」」」
「「キャイン、キャイン」」
霧の向こうからは魔熊の怒声が聴こえる。
その怒声は徐々に恐怖帯びたを悲鳴に変わっていった。
「ガウウウウゥ! 」
ボス熊は見えない敵に対して恐慌状態になったのだろう。
姿こそ見えないが、味方を爪牙にかけながら暴れまわる。
「ただの馬鹿だな。アルおめえみたじゃねえか」
「無駄口たたくな行くぞ、クロ」
「あいよ! シロ! 」
アルパインの後ろで確かに声が聴こえた。
「なん! 誰が馬鹿だと! おい……」
いつもの調子で文句をいいながらアルパインは後ろを振り向くがそこには誰もいない。
「ガガ! ギャ! 」
ボス熊の悲鳴が聞こえた。
3
水蒸気爆発による霧が晴れた。
「こ……これは……」
皆が見た先には、地割れの穴の中で絶命している魔熊の群れだったモノがいた。
穴の中には、ギンの愛刀『絶剣』、木こりヒョウの『大剣夜朔』、鍛冶屋レツのハンマー『源』、スイの『銛』、おやっさんの『拳骨』にランベルトの『夜森の杖』が何かを証明するかのように佇んでいた。
「少将閣下これを」
「どうしたこれは……」
アズールがボス熊と思われる一回り大きな個体を見つける。
ボス熊の心臓には槍が一突きされ、首にはナイフが刺さっていた。
「この槍はクロ……ナイフはシロの……おおお」
アルパインは泣いた。
「少将閣下、この武器に心当たりが……」
「ああ、そうだような。お前らが、お嬢の危機に駆けつかないわけないよな。まったく、死んでも子離れができねぇ、ジジイどもが」
「……」
アズールは無言で泣きじゃくるアルパインを見ていたが、気を引き締めて聖戦騎団に辺りを警戒するように指示を出した。
神殿前での攻防
魔熊別動隊五百死亡
アルパイン直属騎士団、聖戦騎騎団 重軽傷者多数、死者なし。
アルパインはアズール達聖戦騎団にこの奇跡のような現象を『オヤジ達の二次会』といっていたが真偽のほどは不明である。
ただ、ラザアは生涯にわたって指輪である『海王神祭典』を肌身離さず大事にしていた。
原案者様と作者は、頑張るオッサンと心ある武器達が大好きです。




